かながわなでしこファーマーズ

坂本洋子さん

地元の食材を大切にする坂本洋子さんが語る「新しいものを生み出し続けることの楽しさ」
- 女性農業者活躍表彰受賞者インタビュー -

取材対象
川崎市麻生区在住
坂本農園・坂本洋子さん

自身や地域で栽培した農産物を加工し、ブランド「黒川そだち」として地元の大型直売所で販売している坂本洋子さん。令和2年度に農業振興について特に功績のあった女性農業者を称える「女性農業者活躍表彰」を受賞しました。受賞後、ご自宅のある川崎市麻生区でお話を伺いました。

長岡の伝統野菜「神楽南蛮」で作る柚子胡椒

柚子胡椒の主な材料はユズと唐辛子。坂本さんが作る柚子胡椒は、普通の唐辛子より大きく、ピーマンより小さいコロッとした見た目の「神楽南蛮」を使っています。
柚子胡椒づくりは昨年から始めました。地元の直売所の人から「柚子胡椒を作ってみませんか?」と提案されていたものの、唐辛子は身が少ない上に種を取り除く手間がかかるので、なかなか始めるきっかけがつかめずにいました。

ところが数年前、新潟に旅行したときに神楽南蛮と出会い、肉厚で爽やかな辛味が柚子胡椒づくりにピッタリだと、種を取り寄せて自分の畑で栽培を始めました。自家製の青々としたユズの皮と神楽南蛮をミキサーで混ぜると、爽やかな香りの柚子胡椒が出来上がりました。

神楽南蛮と出会って作り始めたものは柚子胡椒だけではありません。もともと味噌づくりもしていた坂本さんは、神楽南蛮を使った味噌の販売も始めました。
地方に遠出すると、必ずその地域の直売所に行くという坂本さん。「旅行をしたり、いろんな場所を歩いてみると、良い勉強になる」。インターネットで簡単にいろんなことを調べられる時代ですが、自分の足で新しいものを見つけに行き、「興味が湧いたものは自分で作ってみればいいのよ」と笑って話していました。

地場産品を活かした農産加工づくり

坂本さんは、100aを超える経営面積を持ち、野菜の生産と販売、加工品製造販売を行う坂本農園を経営しています。
結婚当時から農業に携わり、かつてはイチゴや養鶏などの経営もしていましたが、時代の変化とともに野菜苗の販売に切り替え、また、市場出荷から直売へと変更し、地域の直売会に参加するようになりました。

平成20年、地元に農協の大型直売所がオープンすることになり、それを機にそれまで家庭用に作っていた食品を商品として販売するためセミナーに参加。得られた知識を基に、自宅の物置小屋を加工場として改装しました。
味噌、漬物、赤飯・お餅など、様々な加工品製造に対応できるよう整備したことで、坂本さんは直売所オープン当時の加工品コーナーの中心的存在となりました。また、地域特産物づくりの先駆者として、地域の他の女性農業者が新たに加工施設整備を進めるきっかけとなりました。

坂本さんのブランド名は、地域の名にちなんだ「黒川そだち」。寒くなる時期にかけて、切り餅やあられ、柚子胡椒、ジャム、ドレッシングを作る予定とのこと。お客さんから「あれを売ってほしい、これを作ってほしい」など、リクエストを受けることも多いそうです。
「家にあるもので、何ができるかな」とまず考える。そして、身近にないものは自分で作ればいい。30年以上野菜作りをした経験から、「変わった野菜でも、種さえ手に入れば自分でできるからね」と話していました。

新しいものを探すおもしろさ

今まで自家生産の野菜を使ったいろいろなドレッシング(玉ねぎ、赤玉ねぎ、ビーツ)を作り、商品化してきましたが、今後はさらに、目先の変わった野菜や作物を使った、身体に良いドレッシングづくりに力を入れていきたいと言います。
その一つが、菊芋を使ったドレッシング。菊芋は血糖値の上昇を抑える効果があって注目されおり、ぜひ作ってみたいと話していました。

「新しいものを探すのはおもしろい」。アイデアを自ら積極的に考え、アクティブに情報収集をしている坂本さん。ヒントの種はいろんな場所にどっさりあると言います。
新型コロナの影響で世の中が変わり、人々が求めるものも変わってきたと感じているそうです。何を作れば生き残れるか、喜んでもらえるのか。これからも、地域を盛り上げるため、地域ぐるみで取り組める農業として何ができるのかを模索し、考えているその顔はエネルギーに満ちあふれていました。