就農を志したきっかけ
笹尾さんは、今年で就農3年目。以前は幼稚園教諭や事務職として働いていましたが、東日本大震災を機に、「“生まれ育った地元”で“四季を感じられる”仕事がしたい」、「食べられることの幸せとはなんだろう?」など、今後の人生を考えるようになりました。そんな思いの中、3年前、たまたま「農業 女性」で検索した際に目に付いたのが、かながわ農業アカデミーの女性農業体験研修でした。
実家が代々農家だったこともあり、農業は「儲からない。キツイ。大変」などのイメージがありましたが、研修で女性農業者の就農事例の講演を聞いて、「やりがいがある。女性も農業者もたくさん活躍している」と、気持ちが大きく揺れ動き、就農を志すきっかけとなりました。
「思い立ったらすぐ行動に移すタイプなんです」と笑って話す笹尾さんは、農業体験研修に参加して間もなく、かながわ農業アカデミーの試験を受け、翌年に入学。1年間の勉強の後、生まれ育った平塚市に就農しました。人との縁に恵まれながら規模を広げ、今では30種類以上の露地野菜を栽培しています。
「自分が就農するに当たって重要だと思ったことは、農業をすることへの覚悟です。作物に対する知識はもちろん、計画の重要性や簿記の知識、マーケティング、コミュニケーション力など、幅広い知識と能力が必要であると日々実感しています。失敗しても這い上がる力をいつも自然相手に試されています」と、凛とした表情を浮かべていました。

地域や歴史を大事に クリマサリの栽培へ
クリマサリは、形が細長く、深く根を張るため、傷つけないよう慎重に掘る必要があり、収穫に手間がかかります。また、普通のサツマイモと比べて収量が少ないため、クリマサリを栽培する農家はだんだん少なくなりました。
作りやすく、収量が多い品種を栽培するほうが効率的ですが、大学時代に郷土史を学んでいた笹尾さんは、「昔からある食べ物を作り続けたい、いろんな人に知ってもらいたい」と、地域や歴史を大事したいという思いから、クリマサリの栽培を始めました。

地産地消とフードロスへの思い
「転職して農業を始めたことで、お金やモノに対する価値観が大きく変わりました」。
クリマサリは、大きくても小さくても味が変わらないため、笹尾さんは通常は規格外とされてしまうような小さいサイズも出荷していると言います。
「形やサイズは流通のための基準であって、味が変わるわけではありません。丹精込めて育てたものを、大事に消費してもらいたい。それがフードロスにつながるし、そういう考え方が今後は浸透していくと思っています」。
形や大きさに左右されない、地産地消の推進を行っていきたいと考えている笹尾さん。生まれ育った平塚の歴史を継承しながら、生産者としての誇りを持って、日々奮闘しています。

クリマサリのおいしい食べ方
1:てんぷら、素揚げ
油との相性が良く、素材そのままのほんのり上品な甘さが感じられ、冷めてもおいしくいただけます。
2:お味噌汁
細めのクリマサリを皮ごとぶつ切りにして入れます。火の通りも早くてGOOD!
3:スイートポテト
蒸かしたクリマサリをマッシュして、砂糖とマーガリンを混ぜたら、簡単スイートポテトのできあがり!
