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令和5年度新規就農者育成研修(女性農業体験コース)~9月7日レポート

令和5年度新規就農者育成研修(女性農業体験コース)~9月7日レポート

参加者
農業に関心があり、将来神奈川県で就農を検討中の方

「農業に興味があるけれど、何から始めていいか分からない」ーー。
こうした悩みを持つ方に向けて実際に農業を体験することでその一端に触れてもらう講座が、神奈川県主催の「新規就農者育成研修(女性農業体験コース)」です。
例年多くの女性就農希望者が受講するこの講座が9月、かながわ農業アカデミー(海老名市)で開かれました。

農業への第一歩を踏み出す講座

新規就農者育成研修(女性農業体験コース)は、かながわ農業アカデミーが積み重ねてきた教育ノウハウの中から、新たに農業を始める方向けに必要な知識と実践を凝縮した研修内容を3日間かけて学ぶ講座です。
講座を開設する同アカデミーは、1943年に発足した神奈川県立修練農場を前身とし、海老名市にある広大な敷地を活用した実践教育と、初心者から専門的教育まで幅広い指導が可能な講師を擁する教育体制を特色としています。

農業への第一歩を踏み出す講座

「正しい使い方を」講師の手厚いサポート

取材班が入った講座2日目の研修内容は、農業機械実習と野菜実習です。
この日は、横浜市や小田原市から来た女性10名が参加しました。

「正しい使い方を」講師の手厚いサポート

午前中は、刈払機と歩行型トラクター(管理機)の農業機械実習に挑みます。
農業機械は、農作業の効率を高めてくれる便利な機械ですが、使用法を誤ると重大な危険を生むことも。
その危険性を熟知した講師が、受講生一人一人の隣に立って、刈払機の装着方法や、実際の動かし方など語りかけるように丁寧に指導していました。

「正しい使い方を」講師の手厚いサポート

実践にも力を入れるのがこの講座とアカデミーの講師の特徴で、基本を学んだら、すぐに刈払機によるほ場の雑草の除去に取り組みました。
雑草を残さず美しく刈り取るためには、刃先が雑草に当たる「8cm」ずつの歩幅で進まなければなりません。
レバーを引っ張りエンジンを起動させ、5kgほどの重さの刈払機を腰に据えた受講生たちは、「意外と重いね」「刃先の高さを合わせるのが難しい」と呟きつつ、果敢に挑戦。
慣れない動きについつい歩幅が大きくなって、上手くいかないこともしばしばでしたが、講師たちは「歩幅は8cmだよ!落ち着いて進んでね!」と何度も声をかける姿がほ場に響いていました。

「正しい使い方を」講師の手厚いサポート

「それでは、収穫してください」

午後はアカデミーの学生たちが育てたナス、オクラ、ピーマンの収穫体験です。
夏の日差しを受けて栄養をたっぷり蓄えた作物の収穫は農業の醍醐味。
その楽しさを体感する一方で、農業の現実を伝えるのもこの実習の目的の一つです。

「それでは、殺してください」

ピーマンの収穫体験では、「オオタバコガ」について説明がありました。
オオタバコガとは、トマトやナス、キュウリ、ピーマンなど多くの植物を餌とし、幼虫の時に作物の中に入って食い荒らす害虫です。
講師が「収穫する時は、用心深くピーマンを見てください。綺麗そうに見えても、1mmほどの穴が空いていたらオオタバコガが入っているかもしれない」との呼びかけを受け、受講生たちが収穫を進めていくと・・・・・・。
いました。
ピーマンの中に我が物顔で鎮座するオオタバコガの幼虫です。
興味半分、気持ち悪がる目線半分で覗き込む受講生たちに講師は、オオタバコガの害悪性を改めて説明をした上で、「それでは、オオタバコガを駆除してください」と言い放ちます。
一瞬戸惑った様子を見せた受講生でしたが、これを見逃せば作物に被害が出てしまいます。
受講生たちは地面に叩き落とし、しっかりと駆除。
農業の現実を肌で感じた瞬間でした。

「それでは、殺してください」

売るまでが、農業

この日の最後の講習は、カゴいっぱいに収穫した野菜を選別して袋詰めする作業でした。
「せっかく美味しい作物を育てても、消費者に買ってもらって初めてお金になります。おいしく見えるように袋詰めしてくださいね」と説明をする講師たちは慣れた手つきで防曇袋(ボードン袋)に詰め込んでいきます。
受講生たちもそれに習って作業に取り組むと、「うまく野菜が入っていかない」「重さを均一にするのが難しい」など、作業の難しさを痛感していました。
ある受講生は、「自分で収穫して食べるなら気にならなくても、売り物になると考えると、見た目にこだわる重要性が分かりました」と農業従事者としての視点を学んだ様子。
実家で農業を手伝うために参加を決めたという女性は「初めてのことだらけでしたが、一つ一つ丁寧に教えてくれるので、実際に自分が畑に立つ姿を想像できました」と自らの将来のビジョンを描いていました。

売るまでが、農業

最終日となる3日目は、県内で活躍する女性就農者の講演が待っています。
今日の研修を通し、農業の醍醐味と現実を体感した受講生たちの瞳に先輩の姿はどのように映るのでしょうか。

売るまでが、農業