かながわなでしこファーマーズ

未来の私に出会う旅。かながわ女性就農バスツアーレポート

未来の私に出会う旅。かながわ女性就農バスツアーレポート

参加者
神奈川県内で就農することを検討してる女性や、今後、経営参画を目指す女性農業者6名

秋晴れの心地よい10月23日、「令和7年度かながわ女性就農バスツアー」が開催されました。神奈川県内で農業に関心を持つ女性や、すでに農業に従事し、これから経営への参画を目指す女性たち6名が参加。今年は、都市近郊農業が盛んな県央エリア、海老名市にスポットを当てました。活気あふれる農産物直売所の見学から、実際にほ場で活躍する二人の女性農業者との交流まで、盛りだくさんの内容となった一日。農業のリアルな魅力と課題、そして女性ならではの視点に触れたバスツアーの様子を、詳しくレポートします。

新鮮野菜の宝庫!直売所の”ライブ感”を体感

ツアー一行がまず向かったのは、JAさがみ「海老名グリーンセンター」です。海老名名産のイチゴをはじめ、JAさがみ管内の広域(海老名市、藤沢市、寒川町など)から集まる四季折々の農産物や加工品がずらりと並ぶ直売所です。

参加者たちを出迎えてくださったのは、佐藤洋店長。「このお店の売上高は年間約8億円。平日でも750人、休日には1000人近くのお客様が訪れ、開店前には50人もの行列ができるんですよ」というお話に、参加者からは驚きの声が上がりました。

農場見学から加工、販売まで

佐藤店長は、スーパーマーケットと直売所の違いを「直売所には、提携農家さんが今朝採ったばかりの新鮮な野菜が並びます。時にはビーツや白ナスといった珍しい野菜、少し形がユニークな規格外の野菜が販売されることもあり、それこそが魅力です」と語ってくださいました。

「お客様目線で安心を届ける」朝ドレファ~ミ♪成田店

海老名市はイチゴが有名ですが、管内全体ではトマトやキュウリが主力商品とのこと。店長のお話を伺った後は、店内の見学タイムです。参加者の皆さんは、珍しい野菜を手に取ったり、加工品をじっくり選んだり、すっかりお買い物を楽しんでいる様子。

「将来、イチゴ農家を目指しているんです」と話す女性は、店頭に並んでいた「とちおとめ」のポット苗を購入。「まずはプランターで大切に育ててみます」と、嬉しそうに微笑んでいたのが印象的でした。

解説の後は、早速お店の中を見せてもらうことに。

ハウスに込めた情熱。キュウリとトマトと、家族と私

続いて、マルス農園の清水基美さんを訪ねました。清水さんは、土づくりにこだわる「土耕栽培」で、夏から春はトマト、秋から冬はキュウリをハウスで生産しています。

この日は少し肌寒い陽気でしたが、ハウスの中は25℃ほどあり、ぽかぽかとした暖かさ。約50年前から続く農家の家に生まれた清水さんですが、意外にも当初は就農を考えておらず、一般企業で働いていた経験をお持ちです。しかし、ご両親の健康面をきっかけに「やるしかない」と一念発起。農業の基礎から学べる「かながわ農業アカデミー」に通い、そこで現在の旦那様と出会ったという素敵なエピソードも披露してくれました。

結婚を機に就農 「やりたい」を形に加工品にも手を伸ばす

清水さんは、女性ならではの農業の難しさについて、「収穫物を箱に詰め、それを何個も運ぶ作業は、やはり体力的に大変ですね」と率直に語ります。また、朝5時に起床して家事をこなし、その後すぐに農作業が始まるため、「なかなか自分の時間が取れないのが悩み」という言葉には、多くの参加者が頷いていました。

ジュースの加工場

参加者からは、「ハウス内の暑さ対策はどうしていますか?」「不作の年への備えは?」といった具体的な質問が飛び出します。清水さんは一つ一つに丁寧に答えながら、「ピーク時は収穫が続き、土日も休めない時があります。特に夏の作業は熱中症のリスクも高い。いかにうまく調整していくかが課題ですね」と、経営者としての視点も示してくださいました。

また、清水さんは仲間たちと共に、2025年9月から海老名駅に農産物の自動販売機を設置するという新しい挑戦もしています。「補充の頻度が多くて大変」「キャッシュレス決済の手数料が負担」といったリアルな課題を共有する一方で、「このあたりは『いちご島ファーマーズ』とも呼ばれるエリアで、様々な農家がいます。このエリアに足を運んでもらうきっかけになれば」と期待を込めています。

あさつゆ広場で未来の自分重ねる

”好き”をカタチに。加工品で拓く農業の新たな可能性

最後に訪問したのは、Kamoshida Farm Ebinaの鴨志田知里さんの農場です。施設トマトやキュウリ、米、タケノコなど多品目を栽培し、スーパーや市場への出荷のほか、自家製トマトを使ったジュース、ピューレ、レトルトカレーなどの加工品販売にも力を入れています。

鴨志田さんは、代々続く農家へ嫁いだことを機に農業の世界へ。当初は荷造りの手伝いなどが中心でしたが、2008年頃から本格的に農業に携わるようになりました。「当時は長女が4歳、長男が0歳。最初は無我夢中でしたが、子どもたちが大きくなるにつれて農業に力を注ぐようになり、今ではすっかり農業が中心の生活です」と、当時を振り返ります。

ご自宅の周りに畑や田んぼ、ハウスがあるため、家事と仕事の動線が良く、働きやすさを感じているそうです。栽培した野菜は主にCo-op(生協)に出荷されています。

「プチヴェール」

転機となったのは2022年。以前からつながりのあった三浦市の「くろぜむ農園」からの紹介で、平塚市の福祉施設での小ロット生産が可能となり、加工品づくりが本格化しました。

同年、神奈川県のマッチング商談会に参加したところ、レトルトカレーを手掛ける会社と見事マッチング。2年の歳月をかけて、ご自身のトマトをふんだんに使ったご当地カレーを完成させました。「加工品開発は、主人には頼らず、企画から販売まで全て自分で完結するようにしています。商品のラベルデザインは、ママ友の力を借りました」と笑う鴨志田さん。

100%ニンジンジュース

「将来は、自分の農場で採れた野菜だけを使ったレトルトカレーを作るのが夢。そのためにはジャガイモやニンジン、タマネギの栽培も必要になりますが、自分のコントロールできる範囲で、挑戦を続けていきたいです」と、力強く語ってくださいました。

女性でも、女性だからこそ、農業

ツアーを終えて。参加者の声と明日への一歩

海老名市の農業の「今」を巡ったバスツアー。海老名駅に戻ってきた参加者の皆さんの表情は、出発時の緊張した面持ちとは違い、とても晴れやかでした。

参加者からは、「農家の方は忙しく、話をじっくり聞く機会がないので貴重な経験になった」「ハウスでの経営内容が参考になった」「就農したときのイメージや視野を広げることができた」といった、多くの前向きな感想が寄せられました。

農業と一口に言っても、その働き方や関わり方は様々です。生産に特化する道、直売所で消費者の声を直接聞く道、そして加工品開発で新たな価値を生み出す道。

今回のツアーは、すでに第一線で活躍されている女性農業者のリアルな声に触れ、それぞれの「未来の私」を具体的に描く、貴重な機会となったようです。先輩たちの情熱と工夫、そして何より農業を楽しむ姿を見て、農家の道を模索するきっかけになったはずです。

女性でも、女性だからこそ、農業