かながわなでしこファーマーズ

令和5年度 かながわ女性就農バスツアー 2月20日レポート

令和5年度 かながわ女性就農バスツアー 2月20日レポート

参加者
農業は未経験だが神奈川県内で就農することを検討している女性や、家族が主に農業経営を行っており、今後、経営参画を目指す女性11名。

就農事例やほ場の見学を行い農場の雰囲気や先輩の生の声を聞く「かながわ女性就農バスツアー」が、前回から4年ぶりとなる2月20日に開催され、将来農業に携わりたいと検討中の女性や農業の経営参画を目指す女性11名が、平塚で活躍する湘南Berry(髙橋美千子さん)、Farm330(笹尾美香さん)、JA湘南直売所「あさつゆ広場」、ジェラテリアベガ(浜田亮子さん)の4カ所を巡りました。

百聞は一見に如かず

農業に興味があり就農を検討している方や結婚等を機に就農して経営参画を目指す方といった女性農業ビギナーを対象としており、2017年に同ツアーが始まって以降、「見学先の方々の思いや取組に魅了された」「将来的に独立して農業を行う上で参考になった」など、好評を博しています。

今回は、相模川と金目川の下流域に発達した平野とそれを囲む丘陵地で、県下1位の生産量を誇る稲作をはじめ、酪農や養豚といった畜産業、近郊農業の利点を生かした野菜作りで知られる平塚市で活躍する女性農家を巡りました。

百聞は一見に如かず

鎌1本で開拓 目指すは観光農園

駅前ロータリーの雑多な人混みの中、午後1時に平塚駅北口に集合した参加者一同。北へ30分ほどバスを走らせると、ビルや工場が立ち並ぶ都会的風景から、徐々に田畑が広がる田園風景へと変わっていきます。髙橋美千子さんが営む「湘南Berry」は、一面田んぼで囲われた中にありました。

湘南Berryは、ブルーベリーやラズベリーの他、レモンや温州みかんといった柑橘類を栽培しています。パンジーなどの花苗も手掛けており、2023年11月には自身が品種改良したフリルパンジー「シュガーボンボン」を全国に出荷。さまざまなチャレンジを続ける髙橋さんは、自らの経験について、つまびらかに語ってくれました。

鎌1本で開拓 目指すは観光農園

「私は農業高校、農大を出て会社に勤めていましたが、徐々に違和感を覚え7年前に退職したことをきっかけに農業を始めました。土地を探していく中でこの場所に出合いましたが、この場所はもともと稲作をやっていた場所なので、一人で、鎌一本で開拓していきました。ブルーベリーは、栽培がしやすく、周辺農家での作付けが少ないことから、マーケティング的に競合が少なく有利だと考え選びました。かつて私が癒やされた様に、いつか誰かを癒やすことのできる観光農園化も目指していきたいです」

曇りのない眼で自らの夢をいきいきと語る様子に参加者たちからは、「土選びはどうしましたか」「安定して収穫できるまでどのくらいかかりましたか」など、質問が止まりませんでした。

鎌1本で開拓 目指すは観光農園

就農5年目で年間30品目を栽培

続いて一行が向かったのは、露地野菜を栽培する「Farm330」の笹尾美香さんのほ場です。笹尾さんは、平塚の名産品でかながわブランドにも認定されている「幻の平塚クリマサリ」を栽培し、積極的にPRを行っています。

就農5年目となる笹尾さん。9反ほどのほ場は、露地野菜を年間で30品目ほど栽培する少量多品目が特徴で、「自分がおいしいと思うものをつくる」をモットーに栽培しています。収穫時など人手が足りなくなる時はママ友の手を借りることもありますが、基本は袋詰めや配送など全て独力で行っていると言います。そんな笹尾さんは、実は「かながわ農業アカデミー」の卒業生。「慣行農業の基礎的な技術に加え、農業経営で欠かせない複式簿記や青色申告の方法を学びました」と胸を張ります。

就農5年目で年間30品目を栽培

ここでも参加者からは質問は止まりません。「今、畑を見るとタマネギの苗を植えているようですが、その穴あけって大変じゃありませんか」「土づくりには菌をつかっているのでしょうか」といった質問に対しても笹尾さんは笑顔で応えていました。「農業を始めるのにはお金がかかるのでしょうか」という質問に笹尾さんは、「確かに備品をそろえたり、土地を探したりするのにお金がかかるのは事実です。なので、農業を始めるには相当な覚悟が必要となります。でも、補助制度の情報や就農支援といった情報は、持っているだけで全然違うから、色々な人のところへ出向き、情報収集した方がいい」と助言を口にしていました。

就農5年目で年間30品目を栽培

あさつゆ広場で未来の自分重ねる

輝かしい夢を語る事例と、着実に農業に取り組む事例を目の当たりにした一行は、バスの中で会話に花を咲かせます。そうしている間に、平成22年にオープンしたJA湘南直売所「あさつゆ広場」に到着しました。「とれたての新鮮でみずみずしい農産物が集まる、生産者と消費者の交流の場」をテーマに、平塚周辺のエリアで採れた四季折々の旬な野菜などが並んでいます。店長から「あさつゆ広場」の説明を受けた後、一行は店内へ。テーマに違わぬ地元野菜の陳列ぶりと、いつか自分が栽培した野菜がここに並ぶ姿を重ね合わせているようでした。

あさつゆ広場で未来の自分重ねる

6次産業化を実現 人気ジェラート店へ

最後に巡ったのは、イタリアンジェラートで注目を集める「ジェラテリアベガ」の浜田亮子さんです。有限会社浜田牧場が令和3年6月にオープンしたこの店では、同牧場で育てられた牛の生乳と、米や湘南ゴールド、小松菜といった季節限定の旬素材を使用したジェラートを販売し、6次産業化に取り組んでいます。「大磯町と伊勢原市を結ぶ県道63号に面していて、交通量も多いことから以前から出店するならあそこにしようと決めていました」と語る浜田さんの狙い通り、取材中、ツーリングを楽しむバイクやサイクリストたちが足を止め、おいしそうにジェラートをほおばっていました。

6次産業化を実現 人気ジェラート店へ

生産から加工、流通・販売まで手掛ける6次産業化は、これから農業を始めたいと考える人々にとって、一度は挑戦してみたいもの。それを実際に目の当たりにできることに、参加者たちの熱量が上がったように見て取れます。浜田さんの解説を熱心に伺った後に、参加者は店舗で販売されているジェラートを購入し、味わっていました。午後1時から日が傾きかけ始める夕方まで、実際に訪れてみないと分からない農業の魅力を再確認しながら、参加者たちはにぎやかに会話を楽しんでいました。

6次産業化を実現 人気ジェラート店へ

女性でも、女性だからこそ、農業

ツアー全体を通じ、参加者からは「自然と共に生きる覚悟みたいなものが直接伝わってきました。私も自分なりに頑張りたいです。」「それぞれのお話、とても参考になりました。」といった声がありました。またツアー終了後、「とても貴重な体験ができました。何から始めたらいいのか、自分に何ができるのか考えるキッカケとなりました。」といった参加者の声も届けられ、大満足のツアーとなりました。

女性でも、女性だからこそ、農業