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更新日:2023年12月8日

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デジタルエコノミーの進展とビジネス・働き方の変革(第1回)

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  第4次産業革命が本格化し、人工知能(AI)、ロボット、クラウド、IoT、ビッグデータなどによるデジタル技術革新の進展がもたらす新たな経済・社会を「デジタルエコノミー」と呼ぶようになってきた。さらにモノの所有ではなく共有によって成り立つ「シェアリングエコノミー」が広く認知され、組織に所属せず、仕事を短期・単発で受注する「ギグエコノミー」という言葉も流布するようになってきた。こうしたなか、企業や働き方がどのように変わるかについての関心が高まっている。

 当機構の調査によると、こうした急速な技術革新に対しては若い人ほど不安感を抱えており、若手のロールモデルとなる先輩の不在を指摘する声も多い。組織や仕事の将来についての見通しが立ちにくいことがその背景にあるといえる。

経済システム・枠組みに「ゆらぎ」をもたらす

 こうした不安感を増幅させたのが、2013年にオックスフォード大学のフレイ&オズボーンが発表した、AIなどによって約半数の職業が機械に代替される可能性があるとした推計だった。しかし、この推計にはAIなどの普及で新たに生まれる雇用が考慮されていない。さらに、職業を形づくる具体的な課業(タスク)に着目すると、機械には代替できないものも多いとの反論もなされている。こうした推計は当たらないので無意味と結論づけるドイツのシンクタンクもある。

 そのため現在の論点は、(1)デジタル技術がどこまで実用化されるのか、(2)労働者はどのように適応すべきか、(3)喪失・創出される仕事は何か――に絞られつつあるようだ。過去の技術革新の歴史を振り返っても、産業革命以降、蒸気機関・電気の発明が、鉄道、電信・電話、新聞・メディアといった新たな産業を生み出してきた。そして、20世紀の資本主義をけん引してきた米国の大量生産・大量消費という経済システム・ライフスタイルが形成された。しかし、令和元年版『情報通信白書』が指摘するように、「デジタルエコノミー」はこうした従来の経済システムや枠組み・概念に「ゆらぎ」をもたらしつつあることは確実だ。

フロントランナーでなくなった日本

 ポスト工業化以降、20世紀における先進国の中間層を形成してきたホワイトカラーの仕事が変革の矢面に立たされている。80年代のマイクロエレクトロニクス(ME)革命では、その主役は産業用ロボットやNC工作機械の導入だったので、ものづくり大国・日本が最先端だった。しかし、第4次産業革命で日本はフロントランナーではない。米中が先端のデジタル技術でしのぎを削りつつ、デジタルエコノミーの覇権を競っている。

 さらにITの活用でルーティン業務を減らしてきた欧米諸国に比べて、日本は非正規雇用で代替してきたため、とくに非製造業で多くのルーティン業務が残存し、これが生産性の低さに影響しているとの見方もある。そのため、わが国の場合、国・産業の存亡をかけたデジタルエコノミーの覇権争いだけでなく、足元でもデジタル技術革新を着実に進めなければならない状況にある。

人手不足への対応だけでなく新たなビジネスの創造も

 わが国では他の先進国とは異なり、急速な少子高齢化で人手不足が深刻化していることもあり、新たなテクノロジー導入への抵抗感は比較的弱い。企業におけるIoT・AI等の導入・利用の目的で「効率化・業務改善」をあげる企業が7割を超えており、効果を実感する企業も多い。しかし、デジタル技術の活用を業務の効率化や人手不足の対応だけにとどめていては、デジタルエコノミーのトレンドからさらに取り残されかねない。

 デジタルエコノミーは、いつでも・どこでも・だれでもという「時間・場所・人」に拘束されない新たな働き方と混然一体で進んでいる。そのため、同時に従来のビジネススタイルを革新し、新たなビジネスを創造する方向も合わせて見定めなければならない。

(執筆:独立行政法人労働政策研究・研修機構 リサーチフェロー 荻野 登 氏)

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