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更新日:2018年7月24日

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働き方改革を持続させるために―経営幹部に求められているものは何か?

「働き方改革」は、人材不足を背景に、どの企業でも力の入れ方に差こそあれ、取り組みをされていると思います。しかし、その一方で表層的な取り組みや掛け声倒れに留まる例も多いという印象を受けます。筆者の私見ですが、「働き方改革」を定着させるための最大の壁は、経営幹部―会社の戦略を定め、社員の人事権を握る方々―の「本音」にあると感じています。

「本音」に表れるような個人の価値観を変えることは容易ではありません。経営幹部ほどの成功者であればなおさらでしょう。焦眉の課題である働き方改革では、難易度が高い「本音を変える」ことより、「本音をコントロールする」ことに取り組んでいただくことをお勧めしたいと思います。


建て前を押し通す
家庭を専業主婦の妻に任せ、滅私奉公して現在の地位に就いた方にとっては、その成功体験を否定されかねない「働き方改革」「生産性向上」「ワーク・ライフ・バランス」「女性活躍」などは、愉快なトレンドではないかもしれません。

しかし、どれほど熱心に「働き方改革」などを掲げていても、人事評価や昇格・昇進を判断する場面や、社員との酒席や懇親会などで本音が出てしまえば、取り組みは水の泡です。ある商社の人事担当役員は「残業している人は頑張っている人だから、高く評価したいという役員が多くて困っている」と嘆きます。また、メーカーの経営幹部からは「女性が子育てをしながら働く価値観が、心の底では理解できない」という本音をお聞きしました。そうなると、社員は「会社は働き方改革をする気はないようだ、今までのやり方をしていた方がよさそうだ」と受け止めます。

逆もまたしかりです。部下を効率的に働かせた管理職が昇進し、古いやり方に拘泥する管理職が降格したとなれば、まさに一罰百戒で幹部の本気が伝わります。言葉だけではなく、経営幹部によるひとつひとつの判断や運用が、力強いメッセージとなり、価値観の浸透、企業風土の醸成につながっていきます。

幹部の本音は、どのようなスローガンよりも強力です。判断の場面や部下との会話においては、本音を封じて、幹部としての役割を演じきり「建て前」を押し通していただきたいと思います。


自社を客観視する
幹部が建て前を押し通したとしても、個人や現場レベルの努力による「働き方改革」には限界があります。「働き方改革」の一つである生産性向上を例に取りましょう。飛躍的に生産性を向上させるには、企業側が「誰に・何を・どこで・どのようにさせるか」の全体のしくみを変えることが不可欠となります。ビジネスモデルの見直し、業務フローの全面刷新や人員の増強、昨今話題のAI導入やRPA(ロボットによる自動化)などがあげられます。

戦略にも影響し、多額の投資を要するため、経営幹部のみが断行できることとなります。本音の部分で「これまでどおりでいいじゃないか」「現場の頑張りでなんとかなる」と思っているのであれば、判断は難しいでしょう。策を講じないまま、「生産性向上=労働時間の短縮」で改革を進めると、板挟みになった管理職が、サービス残業の強要やジタハラ(時短ハラスメント、定時での帰宅を強要すること)に向かう可能性が危惧されます。

経営幹部の価値観や希望的観測を経営判断に持ち込まないようにするには、客観的な視点を取り入れることが有効です。前述の女性の育児と仕事の両立に賛同しかねる本音を吐露されたメーカー幹部は、「違う価値観や意見を取り入れたいから、顧問やコンサルタントには敢えて女性を選んでいる」と話しておられました。このほかにも、社外取締役に意見を求める、他社経営者との意見交換、講演会やセミナーへの出席による情報収集、自社の実態を定量的に分析することなども効果が期待できます。


最後に:働き方改革は、経営者改革でもある
改革のための投資やコスト増を吸収できない、顧客に価格転嫁ができないのであれば、より儲かる事業を生みださなくてはなりません。さもなければ、事業を売却したり、人員削減したりする決断をせざるをえないでしょう。このように働き方改革を持続させるには、事業構造と収益構造の検証と改革が避けて通れません。

働き方改革は、経営幹部に「会社の持続可能性と稼ぐ力を高められるか」を問いかけます。幹部自身が「本音」を封じ、どのように振る舞い、決断すべきかが試されているのです。

(執筆:株式会社大和総研 主任コンサルタント 廣川 明子氏)

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