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更新日:2023年12月8日

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今後の仕事と家庭の両立支援について―育児・介護休業法改正を通して―

両立支援

 2017年1月に育児・介護休業法が改正され、介護をしながら働く人や有期契約労働者が介護休業・育児休業等を取得しやすくなるよう、様々な改正が行われました。
 介護については、それまでも介護休業や介護休暇の制度が法律で定められていましたが、育児に比べていつまで続くかわからない、また介護の状況がいつどのように変化するかわらかないといった「予見性」の低さから、制度の取り控えの傾向が指摘されてきました。また、介護をしながら働く上で、通院の付添や、介護サービスの利用にあたっての調整・手続き、ケアマネジャーとの定期的な面談などに対応できるよう、必要なときに半日程度の休みを取ることや、勤務時間や勤務時間帯を柔軟に変えられることへのニーズが高いものの、法定の制度では十分に対応できていませんでした。
 改正では、そうした現状をふまえて、介護の状況に応じて介護休業を複数回に分けて取得したり、介護のために柔軟な働き方が選択できるようになりました。

(改正のポイント:介護関連)
1 介護休業の分割取得…対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して取得可能に。
2 介護休暇の取得単位の柔軟化…半日単位で取得可能に。
3 介護のための所定労働時間の短縮措置等…介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上、利用可能に。事業主は、所定労働時間の短縮措置、フレックスタイム制度、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、介護サービス費用の助成等の措置を選択。
4 介護のための所定外労働の制限(残業の免除)…対象家族1人につき、介護終了まで利用可能な所定外労働の制限を新設。

 この改正では、育児関連の両立支援制度についても、様々な見直しが行われました。背景には、パートや派遣などで働く女性の割合が拡大する一方、有期契約労働者の妊娠・出産期の継続就業率は正社員に比べて極めて低く、多様な就業形態や家族形態に必ずしも対応できていないということがありました。また、男性の育児休業についても、近年微増傾向にあるものの、2017年時点で5.4%と低い水準にとどまっています。弊社が実施した調査では、20~40代男性正社員の3割超が育児休業の取得を希望しており、実際の取得率と大きなかい離があります。特に男性は、職場が忙しく言い出しにくい、休業の取得が復職後の評価や、昇進・昇格などのキャリアに影響するのではないかといった懸念から、取得できていない傾向がうかがえます。
 こうした点をふまえて、改正では、有期契約労働者が育児休業を取得しやすくなるような要件の見直しや、上司・同僚からのいわゆるマタハラ・パタハラを防止する措置を講じることが企業に義務付けられました。

(改正のポイント:育児関連)
1 有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和…「子が1歳になった後も雇用継続の見込みがあること」の要件を廃止。
2 子の看護休暇の取得単位の柔軟化…半日単位で取得可能に。
3 育児休業等の対象となる子の範囲の見直し…特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子等も新たに対象に。
4 いわゆるマタハラ・パタハラ(妊娠・出産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌がらせ等)などの防止措置…事業主へ新たに義務付け。派遣労働者の派遣先にも適用。

 さらに、同年10月1日の法改正では、子が1歳6か月以後も保育園等に入れないなどの場合には、育児休業を最長2歳まで延長できることになりました。このように、法定の両立支援制度は様々に拡充が行われています。
 しかし、いくら制度が充実しても、労働者に周知されていなかったり、職場の事情により利用しにくいなどの状況があっては「絵に描いた餅」となってしまいます。企業には、柔軟な働き方を選択した人への仕事の配分や評価についてルールを定めたり、多様な時間帯や場所で働く人がIT等を活用して効率的に働けるようにするなど、制度の利用しやすさを高める工夫が求められます。育児や介護等の制約を抱えても就業継続や能力発揮ができる環境整備、すなわち多様な人材が活躍できる組織づくりは、労働力人口が減少する中、今後の企業経営にとってますます重要となっていくでしょう。

(執筆:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

共生社会部 副主任研究員 尾島 有美 氏)

 

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