更新日:2018年7月24日

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イクボスで、業績と笑顔が共にアップ!

 「イクボス」という言葉をご存じでしょうか?

 イクボスとは、次の3つを満たす上司・管理職・経営者のことです。

1部下が、子育てや介護など大切にしている私生活の時間を取れるように配慮する。
2自らも私生活を満喫し、ワーク・ライフ・バランスな人生を送っている。
3組織の成果達成に、強い責任感を持っている。

 私が理事をしているNPO法人ファザーリング・ジャパンが、2年前にイクボスを世に出したところ、瞬く間に全国に広がり、大手を中心に数百社が「イクボス企業同盟」に加入し、19人の県知事など100人を超える行政トップがイクボス宣言をしています。神奈川県でも、黒岩知事と全幹部がイクボス宣言をし、知事自ら出演のイクボス動画も作成と、全国的に注目されています。

 ところで、今なぜイクボス的な管理職が必要とされるのでしょうか?
 それは、若い世代は女性の勤務や男性の家事・育児に抵抗がありません。また地域活動、社会貢献、勉強、趣味、親の介護、子の看護、自身の傷病などにより、働く時間や場所に制約のある働き方をしている人、つまり「制約社員」が急増しています。しかし、経営者や上司の固定化した価値観・仕事のやり方・男女の役割意識が、ワーク・ライフ・バランス・脱“長時間労働”・女性の社会活躍・男性の家庭や地域活躍の妨げとなり、制約社員の意欲減退、出産や介護離職者の増加、ひいては組織の競争力低下につながっているのです。だから、イクボスの存在が全ての組織に求められているのです。

 大切な私生活と職場での仕事を両立させている人から度々耳にするのが、「上司の意識が変わらない限り、両立を続けるのは難しい」ということです。つまり、社内には休暇制度があるが取れる雰囲気ではない、長く働いている方が高く評価される、上司より先に帰りづらいなどで、多くの両立社員が苦労しているというのが実態です。

 実は私が、前述したイクボスの3つの定義と、次号で説明するイクボス10カ条(上司の心得)を作りました。これは、私が総合商社の管理職時代と、今年6月に退任した上場企業の社長をしていた中で、心がけてきたことをそのまま列挙したものです。イクボスをやってきたおかげでその会社では、社員の笑顔があふれ、私自身も私生活を満喫できました。そのうえ、3年間で利益は8割増、時価総額は2倍、残業は1月4日、社員満足度調査の結果は過去最高を更新という、まさに「三方よし」でした。

 私の会社以外にも、このような事例は多数見られます。
 ではなぜ、イクボスやワーク・ライフ・バランスと業績は、比例するのでしょうか?
 理由は3つあります。

 1つ目は、部下や上司の「個人力」が高まるからです。
 仕事以外の人々と接し様々な経験をすることで、視野や人脈が広がり、多様性や柔軟性が身に付き、コミュニケーション能力や経営能力などが高まります。また、仕事時間を濃縮し生産性を高めていく過程で、効率的で段取り上手になり、「1回で決めるぞ」という気迫も身に付きます。更に私生活の充実で、働く意欲が高まり精神が安定し仕事への集中力が向上します。

 2つ目は、組織力が高まるからです。
 優秀な社員が集まり易くなり、会社の知名度や信用力も高まります。引継ぎにより業務の見直しと属人化の回避になり、脱“モノカルチャー”でイノベーションな組織になります。お互い様の精神でチームワークが向上し、コミュニケーションも活性化します。更に多能工の社員が増え、不平不満を言う社員が減ります。

 3つ目は、組織のリスクが軽減するからです。
 部下のメンタル不全や労災リスク、ブラック企業と流布されるリスク、隠ぺいや不正などのリスク、事故の発生率、離職率、人件費の上昇リスクなどが軽減するのです。

 イクボスやワーク・ライフ・バランスは、まさに「経営戦略のど真ん中」、「組織の成果を高めるために必要なこと」だと言っても過言はないでしょう。
 では次号では、具体的な上司の心得などについてお話しします。

(執筆:NPO法人ファザーリング・ジャパン理事 川島 高之氏)

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