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更新日:2018年7月24日
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(「管理者のワーク・ライフ・バランス」の続きとなります)
これから働く会社が2社あるとします。担当する仕事の内容は全く同じですが、1社は残業が多く有給休暇をまったく取れない会社、もう1社は忙しいときは集中して業務をこなさなければならないものの帰りたいときは残業せずに帰ることができ、有給休暇をとりやすい会社です。
どちらかを選ばなければならないとしたら後者の会社を選ぶ方の方が多いのではないでしょうか?
「時間外労働が多くなかなか削減できない」、「有給休暇を取りたくてもなかなか取れない」という2つの状態は常に相互に関連するものです。ここで年次有給休暇の取得に関するデータを参照しながら、どうしたらこの2つの状況を変えていくことができるのか、それには何が必要か考えていきましょう。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「年次有給休暇の取得に関する調査」(平成23年6月20日)の中で、年次有給休暇を取り残す理由について正社員に調査したデータがあります。このデータを見ると病気などの急な用事に対する備えの他は、職場の雰囲気や仕事量、代替要員など、いずれも勤め先の要因によって取り残しが生じているといえます。
年次有給休暇を取り残す理由
「病気や急な用事のために残しておく必要があるから」64.6%
「休むと職場の他の人に迷惑になるから」60.2%
「仕事量が多すぎて休んでいる余裕がないから」52.7%
「休みの間仕事を引き継いでくれる人がいないから」 46.9%
「職場の周囲の人が取らないので年休が取りにくいから」42.2%
「上司がいい顔をしないから」33.3%
「勤務評価等への影響が心配だから」 23.9%
これに対し、年休が取りやすくなった理由では、3年前と比べて年次有給休暇が「取りやすくなった」者を対象に、その理由を尋ねたところ、次のような結果になりました。
年休が取りやすくなった理由
「年休が取りやすい職場の雰囲気になったから」42.8%
「自分で積極的に取得するよう心掛けた」41.5%
「上司などからの年休取得への積極的な働きかけ」30.6%
「仕事の内容、進め方の見直し」19.9%
これらのデータから職場の雰囲気や仕事量などの改善が取得率向上に結び付いていることがわかります。やはり、管理職や職場のグループリーダーの理解が不可欠であることがわかります。
どの企業でも労働時間対策や有給休暇の取得率を上げるのに苦心していることと思います。この2つの課題に対して即効性のある特効薬はなかなかありません。地道に少しずつ働く人の意識を変えていくことがなんといっても大切です。
仕事をしている以上、誰しもよりよいものを目指して良い成果物を出そうとしますし、会社でより高い成果を上げようとする中で、「会社の業績が上がらなくていいのか」と反発する人が出てきても無理はありません。
一足飛びに時間外労働削減などの効果が出なくても、帰れるときは今日の仕事を終わりにできる、いい意味でそんな割り切りができたら、少しずつこの状況を変えていくことも可能ではないでしょうか?
業務上、本当に必要なときは何がなんでも仕事をやりぬく、場合によっては徹夜してでも仕上げなければならないときもあるでしょう。でも、そうではないときは割り切って早めに帰ってリフレッシュする。こんなメリハリが大切です。つまり、働く意識や価値観にかかわる問題といえます。
有給休暇を取得するときに、どんなに前倒しで仕事を進めて上司や同僚に迷惑をかけまいとしても、休暇中に発生した業務を自分に代わって進めてもらわなければならないことがあります。まわりに迷惑をかけたくないから、休みをとりづらいと思うもの。でも実際に誰の力も借りずに休暇を取れることの方が少ないものです。そこはお互いにカバーし合う業務の体制とお互い様の精神が必要です。
ある一定の業務までは担当外でもできるように、マニュアルを作成・共有したり、休み前に引き継ぎをしておくことで、突発的な案件が発生しても対応できるようになります。また、上司が休みを取る場合、休む前に部下に引継ぎを行うことで、部下にとっては担当したことのない業務にチャレンジすることになり部下の能力の育成にもつながります。
組織としては、担当者が不在でも、何かがあっても、通常どおりに機能することが大切です。そういう体制を構築できる組織は、突発事項が発生しても対応でき、また災害時においても素早く復旧することができる強い組織を作ることができます。
上司が休みを取らないから、部下も休暇の申請を提出しづらいということも休みを取りづらい原因の一つです。部下はそう思っていてもなかなか上司に言えないものです。上司から有給休暇取得への積極的な働きかけを行うだけでなく、上司の方から率先して休みをとりましょう。
日本の労働基準法では年次有給休暇を労働者が時季を指定して取得するという規定になっています。これに対してドイツなど海外諸国では、有給休暇を取得させることが使用者側に義務づけられています。このような法律の違いや、何かあったときのために休暇を残しておきたいという考えから、日本では有給休暇の取得率がなかなか上がりません。
そこで、今すぐに実行できる方法として、年間及び月間の勤務日及び休暇取得のスケジュールを部や課単位で作成することをお勧めします。まず年間のスケジュールを先に立てますが、予定を立てるときに具体的な取得日がわからない場合でも、どの月のいつ頃に何日取得するかがわかれば、誰がいつ休むか一目でわかります。年間の予定が決まったら、毎月の勤務と有給休暇の取得予定を前月末までに立ててください。
学校の行事や、家族の誕生日、何かの記念日など事前にスケジュールがわかっているものは、年間スケジュールに記入しておくことで、上司や同僚にも取得予定がわかるようになり、有給休暇の取得届も出しやすくなります。
一足飛びに残業時間はゼロ、有給休暇100%取得といった高い目標を実現するのは難しいですが、業務の繁閑に応じて忙しいときはがんばって仕事をする。でも思い切って帰れるときは早く帰る、休みを取れるときは休みを取る。時間外労働の削減や有給休暇の取得率の向上には、管理職が見方や価値観を変えることが大きく影響していきます。
まずはできることから部下と話しあって一つひとつ進めていきましょう。
(執筆:株式会社マーシャル・コンサルティング 代表取締役 上岡 弓見子氏)
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