更新日:2018年7月24日

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経済活性化策としてのダイバーシティ

社員・会社をニューフロンティアに導くJFK

 人口減少の加速化に伴い、労働人口の激減が危惧されている。一般に「働き手」とされる生産年齢人口(15歳から64歳)は、2015年の時点で約7700万人。これが2060年には約4400万人にまで減少すると推計されており、大まかに言えば、現在の労働人口の4割が日本から消えることになる。最早、「フルタイムで働けない人間はいらない」などと悠長なことを言っている場合ではない。働く時間や場所に制約がある人たちを含めて、あらゆる人材を活用する必要に迫られている、いわば「総力戦」の時代に突入した。
 日本は海外と比べ、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和。以下、WLB)やダイバーシティ&インクルージョン(メンバーの多様性・多面性を競争優位の源泉として活かす経営戦略。以下、D&I)が遅れがちだ。そうした課題を解決するために、どのような意識を持ち、行動していくべきだろうか。私は、「自律」「俯瞰」「葛藤」という3つのキーワードがあると考えている。頭文字を拾うと「JFK」になることから、「現状維持に固執せず、新しい未来への先駆者となろう」と、ニューフロンティア精神を国民に呼びかけた故ジョン・F・ケネディ大統領を連想した。日本企業をニューフロンティアへ導くキーワードにぴったりだと、語呂合わせで使っている。

社員を「自律型人材」にする

 まず、JFKのJ=「自律」。WLBにしてもD&Iにしても究極の本質は、「社員一人ひとりがワークもライフも自分で切り開き、自ら課題を見つけ出し主体的に動く、自律型人材になること」に他ならない。人生の主人公は自分だ。他人がどうあれ、いかに環境が厳しかろうと、自分の人生のハンドルは自分が握るという姿勢が不可欠だ。
 この「自律」を促すマネジメントが、多くの日本企業には欠けている。これまで日本企業は、社員に均質化された良質な人材を求め、個人の活躍よりは組織として成果を上げることを優先する傾向があった。結果として、組織依存型の社員を増やした。
 よくWLBを実現できない理由に、「上司の理解がないから」「顧客にふりまわされる職種だから」などの要因を挙げる人がいる。
 しかし、上司に言われるがまま唯々諾々と長時間労働を続ける、周囲に流されて、職場風土に染まっていくのはおかしい。できない理由を外部要因に押し付けて、「○○がやってくれない」と言っている限り、絶対に成功しない。
 もちろん独りよがりになってはいけないし、周囲や職場を巻き込んで業務改善を実践していくノウハウを身につけることも必要だ。しかし、大前提にあるのは、「ワークもライフも自分で切り開いていく覚悟」だ。社員一人ひとりが自律型人材となり、主体的かつ積極的に自分の強みを磨き、ワークでもライフでもキャリアアップしていこうと、貪欲に取り組む必要がある。お互いに切磋琢磨しながら、各人が個性を発揮していくからこそ、イノベーションが生まれる。

社員のワークとライフを「俯瞰」する

 次に、JFKのF=「俯瞰」。高い所から見下ろす、全体を上から見る、大局観、全体観といってもいい。しばしば、欧米企業の経営は「短期収益追求」型であり、比べて日本企業は「人間尊重」「長期的視点に立脚」が経営の特徴だと言われる。しかし、これはワークだけに焦点をあてた話であり、社員のライフまで視野に入れると、まったく逆だ。例えば、日本企業が「社員尊重」とは言い難い例の一つに、「単身赴任」がある。日本企業独特の慣行であり、海外では人権侵害と訴えられかねない。海外企業では、社員一人ひとりのライフステージに応じて、家族まで視野に入れて異動を検討するのが一般的だ。
 次回、JFKの続きを述べたい。

(執筆:渥美 由喜氏)

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