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初期公開日:2025年3月27日更新日:2025年3月27日

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令和6年度政策研究フォーラム テキスト版(調査研究報告)

令和6年度政策研究フォーラムの調査研究報告の内容をテキスト版で表示します。

調査研究報告「単独世帯の増加と家族形態の変化に対応した施策の在り方」
神奈川県政策研究センター副主幹 大澤 幸憲

(1)導入

本日は、今年度実施した調査研究の成果を元に報告を行う。この調査研究は、近年単独世帯が増加する中で、様々な生活上のリスクに対して、従来の家族による支え合いでは対応ができなくなってきたことを受けて実施したもので、特に未婚で一人暮らしをしている人に着目している。

(2)単独世帯の増加と課題

家族類型別の世帯割合の変化について、2050年までの将来世帯推計では、神奈川県の世帯全体に対する単独世帯の割合は、過去25年間増加しており、今後も増加が見込まれている。

世帯数では、2035年から2040年に一般世帯(寮や病院等の「施設等の世帯」以外の世帯)数が、2040年から2045年には単独世帯数も減少に転じると推計されているが、65歳以上の高齢単独世帯数はその後も増加が見込まれている。地域別にみると、三浦半島地域や県西地域で比較的、高齢単独世帯の割合が高くなっている。

ここで、当センター内で議論した、単独世帯の増加に伴う課題を4つ挙げる。1つ目は孤独・孤立である。孤独感が「常にある」又は「時々ある」人は全体の19.6%だが、同居人の有無でみると、同居人がいない人の30.8%は孤独感が「常にある」又は「時々ある」としており、同居人がいない方が孤独感を覚えやすいといえる。2つ目は孤独死の増加と求められる終活サポートである。日常的に支え合い、見守る人が近くにいない場合、孤独死が起こる可能性が高まることが考えられる。孤独死者数の推移をみると、近年増加傾向にある。3つ目は介護サポートの不足である。単身者の場合は子供などの同居人の介護を受けることが難しいため、将来的に介護に係る民間サービスの需要が一層高まると予想される。しかし、経済的な格差により利用可能な民間サービスに差が生じると想定されるため、民間サービスを利用できない人への介護サポートの提供が課題となる。4つ目は空き家の増加である。全国では、1998年と比べて空き家がおよそ300万軒増加している。神奈川県では、2013年をピークに減少傾向に転じているものの、1998年と比べると、およそ12万軒増加している。単独世帯のニーズに合わない一戸建て住宅が利用されないなど、空き家が増加する可能性が考えられる。

(3)単身者インタビュー

神奈川県内の単身者の方9名を対象としたインタビュー調査を実施したので、その結果を紹介する。インタビューから読み取れたことだが、まず婚姻・家族に対する意識について、いずれの年代も結婚自体を否定してはおらず、むしろ機会があれば結婚したいと考えていることが分かった。また、20歳代女性からは、子供が欲しいという意見もあった。一方で、30歳代女性及び40歳代~50歳代男性からは、シェアハウス等、婚姻やこれまでの家族形態にこだわらない将来イメージが示された。さらに、いずれの場合も、孤独・孤立、「一人でいること」に対する不安があり、将来的には、法的な結婚ではなくても、友人などを含め、誰かと一緒に暮らしたいという希望を持っていることが分かった。このインタビューでは、将来に対する不安についても聞いた。すべての年代で、親の介護に関する具体的な不安の意見は少なかったが、今回の対象者の年齢層から、まだイメージできていない可能性はある。一方で、すべての世代で、災害や近所とのトラブルなどに対する不安、また、自分自身の健康や、健康を損ねることで働けなくなることへの不安の意見が示された。ほかに、30歳代女性からは、将来的な住宅確保に関する不安も挙げられた。

(4)包摂型コミュニティ

最後に、今回の調査研究において、当センターで考案した施策への提案を紹介する。当センターでは、実現を目指すべき姿として、「包摂型コミュニティ」に着目した。この「包摂型コミュニティ」とは、「性別、年齢、障がいの有無、少数派・多数派や、家族形態、経済状況、国籍・出身国の違いなど 、各々の置かれている状況や価値観にかかわらず、そこに住んでいるすべての人々の生きづらさを互いの結びつきや支え合いによって解決していくコミュニティ」、と定義している。家族内で支えを得ることが難しい単独世帯にとっても、この「包摂型コミュニティ」が支えになると考える。

さらに、今後の行政の役割であるが、単独世帯の増加に伴い、将来的に、現在の行政主体の仕組みだけでは多様なニーズのすべてには対応しきれなくなるという課題が想定される。そのため、行政は、民間サービス事業者も取りこみつつ、コミュニティ内のステークホルダーをつなげ、支える「中間支援機能」を担うことが期待されると考える。

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