金井島路傍（開成町金井島）

　※地理院タイルに遺構の位置を追記して掲載

　酒匂川の右岸側に位置する現在の開成町は、足柄上郡の旧酒田村、旧吉田島村から成りますが、全潰率は5％以下、死者数も10名以下と、震災の被害はそれほど多くはなく、酒匂川流域左岸の松田町や大井町の被害の大きさとは対照的な状況でした⁸⁹。
　JR御殿場線「東山北駅」から南へ酒匂川を渡る橋を回り込んで約3.5km、酒匂川右岸の高台病院の南に位置する金井島の集落内に石碑があります（図3.27-1）。

　この石碑は「横境上水道記念碑」と書かれ、明治に掘られた共同井戸が唯一の水源であったところ、震災の際に「地下水の沈下を来し井水枯渇せり依って部落民相計りこれが掘下げ工事を行い清水を豊富に湧出するに至る」とあるように、地下水の沈下による井戸水の枯渇を、集落の住民による井戸の掘下げ工事で克服した様子が記されています。
　旧酒田村では150本の井戸のうち97本が使えなくなった⁹⁰ということで、用水路の破壊や井戸の埋没・地下水低下などにより、水の確保に困難があった様子がうかがえます。

 

⁸⁹ 諸井孝文・武村雅之,「関東地震（1923年9月1日）による被害要因別死者数の推定」, 日本地震工学会論文集, 4(4), 2004年

⁹⁰ 開成町, 「開成町史通史編」, 1999年

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