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更新日:2026年2月26日
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令和7年度第2回インクルーシブ教育推進フォーラム『多様な学びが生まれる学校ってどんな学校だろう?』をテーマに開催しました
第2回インクルーシブ教育推進フォーラム『みんなでつくる だれにとっても学びやすい学校 ~子どもの思いから考える~』(令和7年11月29日)(PDF:1,098KB)(別ウィンドウで開きます)
PDFの内容は、このウェブページにある以下の内容と同じものです。
日時 令和7年11月29日 土曜日 13時30分から16時まで
会場 神奈川県総合教育センター 講堂
内容
本県では、「支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、すべての子どもが同じ場で共に学び共に育つことをめざす」ことをインクルーシブ教育推進の考え方として取組を進めております。インクルーシブ教育を推進していくためには、すべての人が当事者として議論していく必要があると考え、フォーラムを開催しています。
さて、神奈川県では「いのちの授業」という取組を行っていますが、今年応募された作品の中に、聴覚障害のある生徒さんの、二度と戦争は繰り返してほしくないという内容のものがあり、考えさせられました。高校生版教育委員会では、参加した高校生が「教育は、国家だとか宗教だとか大人たちの世界から切り離して、世界が一緒にみんなで子育てして、教育を行えればいいのに」と発言していたことがとても印象に残っています。私たち大人の責任は本当に重い、何としても子どもたちを守らなくてはいけないと思い知らされました。
本日のフォーラムでは、ご参加いただく皆様と共に「多様な学びが生まれる学校」について議論を深め、有意義なフォーラムにしたいと思います。
神奈川県では支援教育の理念のもと、インクルーシブ教育を推進しています。支援教育とは、支援が必要なのは特定の子どもだけではなく、すべての子どもであるという考え方です。取組の根幹は、すべての子どもが共に学び、共に育つことのできる全員参加型の教育制度の実現と、すべての子どもが適切な支援を受けることができる全員参加型の学校づくりです。特に学校づくりは、行政だけでなく様々な立場の方と議論していくことが大事であると考えています。神奈川県はすべての子どもが小学校、中学校、高等学校で学べる環境の実現をめざしています。地域にいるすべての子どもにとって、その地域の学校が選択肢となるだけの多様性、包摂性が学校に備わっているのか、すべての子どもが学べる環境をどうやって整えていけるかということを、すべての人と一緒に考えていきたいと思っています。一人ひとりが大切にされ、みんなが学びやすく、一緒に学んでいける、そんな学校にす
るための教育の仕組みや、学校のあり方を考え、それぞれができることをおこなっていくことが必要であると考えています。
インクルーシブな学校づくりは、通常の学級を見直し続けることから始めていく必要があります。すべての子が通常の学級に在籍して学べるように、目の前の子どもに合わせて学校をどれだけ柔軟に変えていけるのかが重要であると考えています。また、人に支援をつけるのではなく、場面に支援をつけるために工夫することや、すべての子どもの違いを歓迎する文化にしていくこと、これらのことについて、ともに考えていきたいと思っております。
川田製作所では、金属プレス加工と金型製作を事業としておこなっています。2018年3月に、ダイバーシティ経営企業として表彰を受けました。「ダイバーシティ経営」というのは、多様な人材をいかし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することでイノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営というものです。50年前から障がい者雇用をしていますが、その方の苦手が何かというのは、「障がい」という言葉だけでは、わからない部分があります。実際、会社に入ってみて、できること、できないことを感じながら一緒に取り組んできました。
1つめの事例として、苦手なことの一つが「数えること」である社員のことをお話します。本人と相談し、「数取り機(個数をカウントするもの)」を補助道具として使ってもらいました。「不良品の数を数える」作業でしたが、不良品が出たらポンと押すという仕事のやり方になり、結果として数えなくても何個不良品が出たかが表示されるようになりました。すると他の社員が、「私もこれを使いたい」と言ってくれました。その方にとって数えることは「できること」だったのですが、数える手間が省け、便利だと思ってくれました。今では会社のみんなが使えるように何台も用意し、このやり方で作業するようになりました。苦手のある社員さんが入社してくれたおかげで、会社としてみんながやりやすい作業の仕方に変わっていきました。
2つめの事例はASD(自閉スペクトラム症)という診断を受けている方で、臨機応変に対応することが苦手な事務員のことについてです。当社の事務の仕事は様々で、本人がタイミングを見つけて行うことになっていましたが、その社員にはそれが難しかったのです。そこで、「お仕事カレンダー」をつくり、いつ何をやるかを可視化しました。毎日何時にやること、毎週何曜日にやること、毎月何日にやることなどです。そうすることで、その事務員は想定以上の成果を残してくれました。
いろいろな人が働くための仕組みが会社として大切だと思っています。その仕組みづくりとしての取組を3つ紹介します。1つ目は「成果の見える化」です。その人が会社で活躍するということは、1時間に部品を何個作れるかが関わってきます。そこで、会社として製造数を測定し、物差しをつくっていくという取組をしました。仕事の種類は300以上あるのですが、それぞれ目標を会社の方で決めます。その目標に対して、いくつできたかを日報などの中で測定します。その測定した結果を、実際の作業をする社員さんと管理者が共有して振り返り、もし数字が悪くなったら、職場環境としてどこが問題だったかを話し合い、逆に良くなったら褒める機会にもなり、仕事の生産性が高まりました。
2つ目は、「自分マニュアル」の導入です。全員にiPadを配り、いろんな写真を撮ったり、動画を撮影したり、プレゼンテーション資料を作ったりする環境を整え、自分で自分のためのマニュアルを作ろうという取組をしました。本人としては自分が作ったマニュアルなので見やすいという良さがあります。以前は、上司としては伝えたことがマニュアルには書いていないということもあり、自分が伝えたことのエラーが起きていることを確認できました。
3つ目は「みんな塾」という取組です。全員が先生になって、ほかの社員に教えるという取組をしています。社員一人ひとりが自分でテーマを決め、そのテーマについてまとめ、みんなの前で発表する取組です。「教える」ことは、社員にとっての成長の機会になります。 会社としては、その人の属性ではなく、個性や特徴をしっかり見て、それぞれの強みを引き出す職場環境や仕組みをつくっていくことを大切にしています。この部分を根幹とすることをダイバーシティ経営と捉え、取り組んでいるところです。
世の中の製造業企業は「標準化」をめざして長い間取り組んできました。ただ、その先にあるものとして、これからは「公平な個別最適化」が必要であると感じています。一人ひとりの特徴、個性にスポットをあてると、標準化だけではできない解決策が必要となり、そういった取組を企業としても行っていきたいと思っています。
「DE&I」は「Diversity(ダイバーシティ) Equity(エクイティ) Inclusion(インクルージョン)」の頭文字をとったもので、「多様な人がいる」ということを前提に、誰もが過ごしやすく参加できる環境をめざして、今あるやりづらさや特定の人に不利な環境・構造を是正、調整する取組です。私はこれを学校現場で広げていきたいと思っています。学校では生きていく上での「当たり前」を吸収していく側面があると思っています。学校でどんなメッセージを子どもたちが吸収していくか。そのことが社会への影響として大きいと思っています。だからこそ、学校が変化していくことが社会の変化につながっていくはずだ、という希望を託して仕事をしています。通常の学級の中にも様々な特性や背景のある子がいます。多様性というと特定のマイノリティに配慮すること…という受け取られ方をすることがありますが、まず私たちは全員違っていて、多様性に含まれているということが前提になるべきだと思っています。同時にその多様性は、見ようとしないと見えない、というものが多いです。このことは多様性をとらえる際に重要ではないかと思っています。
「ふつう」は人それぞれ違います。自分の「ふつう」と世の中の「ふつう」が合わないと、困りやすくなります。特定の人たちにとって生きづらい環境が、学校にもあります。それは「数が多い方」や、「影響力、発言力が大きい方」に合わせて、世の中の「ふつう」がつくられるためです。誰にも悪気はなくても、環境がマジョリティ使用になっていくことでマイノリティが生きづらくなる構造があるということを知った上で、手立てを考えていく必要があります。
学校でDE&Iを進めるにあたって3つの提案をします。1つ目が、「個人モデルの発想から社会モデルの発想へ」です。困りごとの原因を、個人ではなく社会や環境の方に求め、そこにある「バリア」を無くしたり変えたりして困りごとを解決していこうという考え方です。
2つ目が、「形式的平等から公正へ」です。合理的配慮を学校で進める際に、「なぜあの子だけ」や「すべてに対応すると現場はもたない」という声がでてきます。バリアを取り除く方法としては、合理的配慮だけでなく、基礎的環境整備とあわせて整えていくことが、解決のヒントになります。基礎的環境整備は、予めみんなにとって大丈夫そうなルールや仕組みを考えておくもので、そこでカバーできる環境が広がるほど「個別に対応する」ことは少なくて済むようになります。マジョリティにも選択肢が増えてより快適になることも多いです。
3つ目が「子どもに聞く」です。学校におけるマイノリティを考えたときに、子どもが全員マイノリティだと捉えることができます。より影響力、支配力をもち、その場の「ふつう」を決めることができる立場がマジョリティであると考えると、学校においては、それは先生です。子どもたちは声を聞かれにくい立場、状態にあります。そのため、意図的に子どもの声を聞こうとすることが大切です。授業で参加しづらさを抱えて困っている子がいるときに、困りごとを言える関係性が先生との間にあれば、バリアの存在を子どもに教えてもらえます。まずは自分のニーズや声を大事にできて、それが他者とちがっていたら調整したり、話し合って解決したりしていくことを学ぶのも、学校教育の大きな意義であると思います。大人の思いや考えも含めて子どもと共有しながら一緒に考え、その経験を積むことで、子どものスキルも育まれていくと思います。
学校での過ごしづらさを解消していくことができると、子どもたちの心理的な安全性が高まります。心理的に安全な場では、より声を出しやすくなり、困り事についてもっと教えてくれるようになります。インクルージョンとデモクラシーを考えながら、誰もが過ごしやすい学校をつくっていけたらと思って活動しています。
等々力:本日は7月に当課のインターンに参加していただいた3名の県内高校生に登壇していただきます。まず、学校で最近がんばったことや今思っていることを教えてください。
A:今がんばっていることは、学校での探究活動です。学童でのボランティア活動を通じて、小学生のLGBTQ教育がまだ進んでいないのではないかと考え、研究をおこなっていました。自分の探究活動を横浜国立大学と県教育委員会が主催の発表会で報告しました。このことを通じて、改めてお互いの多様性を認め合うことができる教育や、その環境づくりが重要だと気づきました。
B:最近学校でがんばっていることは部活動です。服をつくってファッションショーをする洋裁部に所属していて、11月の初めに文化祭のファッションショーで舞台に出ました。
C:がんばっていることは、よりよい学校にするために、みんなが登校するときに、先生や生徒と一緒に挨拶運動をしています。先生を含めて、6人ぐらいでおこなっています。
等々力:3人が当課をインターン先として選んだ理由を聞かせてください。
B:私は学校の教育現場に携わりたいなと思い、学校に掲示されていたインクルーシブ教育についてのポスターを見たのと、親がインクルーシブ教育についての話をしていたことで興味を持ったからです。
C:私は保育士をめざしていて、保育について調べているときに、インクルーシブ教育という言葉を聞いて興味を持ちました。インクルーシブ教育の意味は知っていたのですが、具体的にどういうことなのだろうと思い、インターンに参加させていただきました。
A:私はもともと教育行政職に関心があったのと、また、探究活動で自分自身もインクルーシブ教育に関することを研究していたので、インターンに参加させていただきました。
等々力:次に、インターンで話してくれた内容について質問します。Cさんは保育所での経験を通して「大人では驚かないような小さなことが、子どもにとって大きく感じることを学んだ」ということですが、どういう場面でそのような感想をもったのでしょうか。
C:子どもと話す場面で、自分が子どもより大きくて子どもに恐怖心を与えてしまうと思ったので、自分が小さくなって、子どもと同じ目線で話すことを意識しました。
等々力:Bさんは「毎日、友だちと話すときが楽しい」と言っていましたが、どのような場面での会話が楽しいと感じていますか。
B:私は休み時間や朝の登校してからの時間、放課後など、1日中しゃべっている感じです。そういう時に、友だちとお互いの共通の趣味の話をしたり、学校での実際の授業関連のことを話したりします。でも、なんだかんだいって雑談やたわいない話をしている時が一番楽しいです。
等々力:Aさんにとって学校の先生はどういうイメージでしょうか。
A:生徒や児童のサポートをしてくれるというイメージがあるのですが、同時に、「多忙」というイメージもあります。姉が教員をしているのですが、土日も部活動などがあり、忙しくしているイメージがあります。
等々力:BさんとCさんは、学校の先生のイメージはどうでしょうか。
B:なんだかんだいって、ブラックそうだなと思います。
C:先生は教える立場っていうイメージが強いですね。
等々力:当課でのインターン後、何か考え方が変わったりしましたか。
C:インターンをきっかけに、自分から行動を起こして学校の環境を変えようとする姿勢に変わりました。学校内でもっと積極的に挨拶をすることで、みんなで学校をより良くしようと考え、実際に先生や生徒の有志と挨拶運動を始めました。
B:インターンを通して「学校でみんなが勉強しやすい環境って何だろうか」と考えました。学校に用意されているハサミが右利き用しかなくて、「ああ、こういうところにも弊害が出ているな」など、ふとしたときにそういったことを考えられるようになりました。
A:インターンを通じて、改めて学級を見直す重要性に気づきました。インターンの中で、県職員の方々から、学校の当たり前を見直すことの重要性を教えていただき、今までになかった視点で考えられるようになりました。
登壇者
司会進行
等々力:武田さんに参加者から「学校現場は変化に疎く、何か変化があったとしても教員人事でまた別なものに変化してしまう場合もあります。学校現場の変化について、具体的な方法やプロセスがあれば教えてほしいです。」との質問をいただきました。
武田:人の入れ替わりがある公立学校の中で、文化や仕組みを定着させていくのは、校長先生などがビジョンを明確に示すことが重要だと思います。同時に、教職員が納得して進めていかないと、形骸化してしまうと思います。具体的な取組を進めると同時に教職員が対話を通して、「こういうことなのか」と掴んでいくプロセスが、手間がかかるようで実は近道だと思います。
等々力:川田さんに参加者から「様々な人が一緒に働く上で大変なこと、また逆によかったことを教えてください。」との質問をいただきました。
川田:15年前に私が入社したときは社員の7~8割は60歳以上のベテラン社員ばかりで、会話をしなくても仕事が成り立つ状況でした。その頃は「多様な人材」というより、定年や高齢などを理由に退職された人に対して新しい人材を採用するという流れでした。その中で障がいのある方や外国につながりのある方が働くようになりました。仕事を進める上で困ることも様々起きましたが、それに対して会社として何ができるかを、みんなで悩みながらやってきました。このことを大変なこととして捉えるのではなく、企業成長のために必要なことと捉えています。おかげで企業も成長できました。
等々力:では、多様な学びが生まれる学校に向けて、今の学校を見つめ直すところから、会場の皆様も含めてお話を聞いていきます。まず武田さん、川田さんから、今の学校について高校生へ質問をお願いします。
川田:自分にとって一番楽しかったのは、小学校か中学校か高校か。また、なぜそう思ったのか教えてください。
C:高校です。特に学校行事で、他学年と一緒に活動したことです。夏にキャンプ実習、冬にスキー実習がありました。
A:どの年代も楽しくて選び難いですが、中高が楽しかった印象です。小学校の時、私は転校しました。その際、あまり大差はなかったのですが、文化の違いみたいなものがあり、悩んだ時期がありました。それで、中高が楽しかったなと思っています。
B:私はいつでも学校は楽しいなと思っていました。でも、ちょっと嫌だったなと思ったこともあります。小学校高学年から中学校1年生くらいに、「あなたは私たちのグループとしゃべっちゃダメ」みたいなことが学校の中にあり、衝撃を受けました。中学校後半になるとそれが当たり前になりました。このことにずっと疑問を感じていました。
武田:「自分にとってのふつう」と「学校という場でのふつう」について、合わなくて困ったことはありますか。
B:「それこういう事じゃないの?」とか、「ふつうこうだよね?」とか、休み時間の会話でよくあります。例えば中学校の時、クラスでメイクをしていない子は、私を含め片手で数えるくらいでした。他の女子はみんなやっていました。
A:学校と自分の「ふつう」でギャップがあると思った経験は、あまりありません。考えてみると、学校の当たり前が気づいたら自分の当たり前になっていました。そもそもの苦しさは忘れて、それが「ふつう」と思っている現状があると思います。
C:小学校の時ですが、自分はノートを書くことが苦手で、「大変だな」って思ったことがありました。
武田:Aさんが言ってくれたように、「ふつう」って「ふつう」になっちゃっていくから、「ふつうすぎてわからない」みたいなことはよくあるなと思っています。「わかりやすいラベリングのあるマイノリティ」でなくても、人は誰しも状況によってはミスマッチやマイノリティな体験をすることが多分にあります。それを語れる職場や教室にしていくことが、インクルージョンを進める上で大切であると思います。
川田:その人にとっても「ふつう」は、会話をしないと気づけないし、同じことを「ふつう」だと思っている人同士では気づきません。それは様々な人と働くことと同じで、ベテランばかりの職場では会話しなくても「ふつう」が通用しますが、新しい人が入ったり、ジェネレーションが違ったりするだけで「ふつう」は変わってきます。
武田:人それぞれ「ふつう」がちがうときに、どの「ふつう」も同じだけ尊重されるべき価値があるということは、大事なことだと思います。誰の「ふつう」も間違っていないし、おかしくないということです。私たちは、世の中の「ふつう」が正しく、それに合わない「ふつう」が間違っていて矯正されるべきだと思ってしまいがちです。学校でいうと、例えば授業中にそわそわして動きたくなる子の「ふつう」と、静かな環境が学びやすい子の「ふつう」では、後者が正しくて前者が間違っていると言われ、前者が後者に合わせましょうとなりがちです。でも、どちらの「ふつう」も同じだけ大事で、両者が学びやすい必要があります。どうすればいいのかと考えることが大事なことだと思います。
会場:どの人の「ふつう」も尊重されるということに対して、その通りだと思いました。そこで難しいと感じていることが、学校の中で対話をしたり、問いに対して考えたり自問したりする時間がどれだけあるのだろうか、ということです。学校目標があり、理想の生徒像がつくられた空間で、その理想像から離れているマイノリティの生徒が自分の「ふつう」も大事だと言ったとき、マジョリティの生徒が、「そういう意見もあるよね、でもやっぱりマジョリティ側がいいよね」となっていないかを考えていく必要があると思います。
等々力:これからの学校を考えていくために、「学校で学ぶ意義」についてどのように考えていますか。
A:自分自身が学校生活を送っていく中で、かけがえのない友達や、重要な知識などを学べたので、そういった人間形成において学校教育は必要不可欠であり、人材育成に必要な場なのではないかと考えています。
B:勉強だけなら家でこもってするほうが効率がいい、という人もいるかもしれませんが、自分の考えつかないことを教えてくれるのは、自分の周りに人がいる学校だと思います。
C:自分は、学校の授業は社会に出るために必要な知識を得るためにあるのだと思います。
川田:授業で学ぶ知識も人との関係性や社会性を培うことも両方大事だと思います。自分が小学校の頃は、人と様々な意見を交わしながら進める行事が多く、人間関係づくりをたくさん経験できました。今の学校を見ていると、社会が変わっていく中でも一世代前の教育をしているのが現状だと思います。構造的には難しくとも、そこをどう超えるかは今日のフォーラムにもつながるのではないでしょうか。
武田:自分と違う他者がいて、刺激されたり、その人達との関係の中で試行錯誤したりしながら、自分はどう生きたいかを大事にしつつ、人と一緒にどう生きていけるかを探る経験ができる場所かなと思います。学校という場所が苦しみではなく、喜びがいっぱいの場所になれば、知識伝達の価値は下がっても学校の存在意義はなくならないと思います。
等々力:「多様な学びが生まれる学校」にするために、これからどんな事が大切でしょうか。
武田:このフォーラムは、地域の学校の「通常の学級」においても多様な学びが保障されていく方向性を模索していると思っています。多様な学びの大前提は、「みんな違う」ということです。それぞれの「ふつう」を大事にするのが出発点だと思っていますし、世の中の「ふつう」や今のやり方・ルール・システムはマジョリティに合わせて作られやすいと認識した上で、ちゃんとマイノリティの声を出せる環境をつくることが大切です。常に様々な声を聞いて、揺らぎながら、探しながら調整していくプロセスそのものが一番大事かなと思います。
川田:企業経営の視点で捉えるなら、多様な人が活躍する場づくり、だと思います。企業では、そのために多様な働き方が必要です。1日8時間のフルタイムだけでなく、リモートワークや超短時間勤務、幼稚園の時間に合わせて働くなど、いろいろな働き方があります。でも、学校の「多様な学び方」には、様々な制約があると思います。それらの制約を乗り越えるには組織の中で合意形成をしていくことが必要です。また、様々な人が話し合うことで多様なアイディアが出てくると思います。今できることをやっていきながら調整し、小さなPDCAも大きなPDCAも回しながら、それをひたすら繰り返す、そのプロセスにスポットを当てていくべきです。それは、学校でも企業でも同じです。今できるPDCAを対話し合意形成を図ることが多様な学び方に繋がると思います。
会場:インクルーシブ教育の成果をはかることができれば、その指標を基に判断することができるようになるのではないでしょうか。今実際に行われている事例があれば教えてください。
等々力:インクルーシブ教育を進めるためには、様々な方のご意見が必要と考えています。今日のアンケートや、メタバース空間や対面での意見交換等、様々な方法で皆様からご意見をいただいています。話し合いの積み重ねが大切であると考えています。
川田:企業は事業目的に沿って売上目標を立てて、利益を確保しながら社会に貢献していきます。教育現場で指標を持っていたほうがいいのではないかというご意見だと思います。それはもっともだと思います。
武田:国内でも「インクルーシブはこれぐらい進んでいる」という共通の指標はまだないと思います。教育の世界でもエビデンスベースの経営をしようとする流れはあります。その目標数値を何に設定するかによっては、むしろ子どもが苦しくなって、現場が苦しくなっていくということが起こりやすいです。例えば、不登校の子どもの数を減らすという目標にした場合、がんばって登校させると子どものウェルビーイングは下がる可能性もあります。数値目標を立てることが学校や子どものためにマイナスになる可能性も含めて、慎重に考える必要があると思っています。
会場:インクルーシブ教育を進めるためには、学校現場の取組が一番であり、先生たち一人ひとりが変わってほしいと思っています。
等々力:一人ひとりの意識を変えていくためにも、皆さんのご意見を教職員の方々にも伝えないといけないと考えています。今後も、このような会や教員への研修等における対話を通して、共に考えていきたいと思います。最後に、登壇してくださった皆さんから本日のディスカッションの感想をお願いします。
C:今回参加させていただいたことで、いろいろと勉強になりました。
A:今回のフォーラムを通じて、自分の考え方や、当たり前と思っていたことが、カチカチに固定概念化されていることに気が付きました。自分が知らない意見や目に見えていないこと、悩んでいる方の声にもっと目を向けて、取り組んでいきたいと思いました。
川田:皆さんのお話を伺い、問題の解決に向けて話し合いが必要だと思いました。いろいろな関係者がしっかりコミュニケーションをとること、それを仕組みとして作り上げていくこと、そしてその仕組みを生かしていくことが、解決の道ではないかと思いました。
B:今日は自分と違った視点に触れて「それあるな」と思いながら聞いていました。子どもの意見が言いやすい環境が欲しいと思いました。
武田:学校に対して、様々な思いを抱いている人はたくさんいると思います。学校も保護者や地域の声を丁寧に聞き、対話ができると少し変わってくると思います。同時に、先生たちを取り巻く環境も社会モデルで考えないといけないと思っています。学校現場のサポートをするとともに、学校の「声」を社会や行政に届けていくこともやっていきたいと思っています。
教育改革とは人の意識改革であると考えています。すべての子が一人ひとり輝く仕組みにするためには、もっとシームレス(継ぎ目のない)な取組が必要になってくるのではないかと思っています。私は「学び」は関わりから生まれると思います。人とモノとコトが関わる中から大人も子どももいろんな学びを得られます。皆さんと共に考え、つくり上げていくことがこのフォーラムの大きな目的であり、ともに学びともに育つ地域社会をつくることにつながると思います。これまでのフォーラムでは、県としてインクルーシブ教育をどう進めるのか、社会的条件が整わない中で、理念だけが先走っているのでは、というご意見もありましたが、大切にしてきたのは、「理解」ではなく「共感」できる言葉を見つけていただきたいということです。理想を実現するために、一人ひとりに何ができるのか、それを問い続けることが県の推進における役割のひとつだと捉えています。
本日のフォーラムは、子どもの思いがテーマでしたが、私は子どもの思いを大人が代弁するのでなく、子どもと一緒にこれからの学校をつくっていかなければならない、と考えています。学校づくりに子ども自身が関わることを当たり前にすることや、一緒につくっているという実感を持つことが大切ではないでしょうか。
今回のフォーラムは、今後の神奈川のインクルーシブ教育の推進を考える上で、貴重な機会となりました。神奈川県教育委員会では、市町村とも連携しながら県内すべての学校において「インクルーシブな学校」づくりに向けた取組を進め、共生社会の実現につなげてまいります。
主催 神奈川県教育委員会
このページの所管所属は教育局 インクルーシブ教育推進課です。