神奈川県におけるスイートピー栽培の歴史は古く、大正時代にまで遡ります。現在では約50戸の農家が約4haを栽培し、年間500万本の切り花を出荷しています。このスイートピーに、12月以降、下葉から白化し、激しくなると上位葉にまで白化が進展し、品質が低下する症状が見られました。農業環境研究部でこの原因を究明したところ、土壌のリン酸過剰であることが判明しました。
症状の特徴と現地の土壌管理状況
(1)症状の特徴
開花が始まる12月頃から始まり、栽培が終了する4月まで続きます。下位葉から葉身の白化が始まり、徐々に上位葉に進展し、外見上はカリ欠乏にも類似しています(写真1左)。現地とほぼ同様の症状が、リン酸を大量施用したポット栽培や養液栽培でも再現されました(写真1中、右)。
写真1 スイートピーに発生した葉の白化症状(左:現地での発生、中:リン酸を過剰施肥したポット栽培での発生、右:リン酸を過剰施肥した養液栽培での発生)
(2)植物体の養分含有量
現地の発症株及び未発症株の葉身、葉柄、茎の養分含量を比較すると、発症株は全ての部位で、リン含量が未発症株の約2倍であることがわかりました(図1)。
図1 現地植物体のリン濃度(圃場内の未発症、発症、各10株平均値)
(3)土壌の化学性
白化症の発生が激しかったスイートピーハウスで、発症株周辺及び未発症株周辺土壌の化学性を分析したところ、可給態リン酸濃度が発症地点、未発症地点ともに高濃度でしたが、両土壌を比較すると、発症地点のリン酸濃度がより高濃度であり、最大で622mg/100gでした(図2)。
2006年に土壌診断を行った県内スイートピー117圃場の可給態リン酸濃度(mg/100g)は、平均値158,最大値520,最小値23で、300mg/100gを超える高濃度圃場が15圃場あり(図3)、白化症状は、これらの高濃度圃場の一部で見られています。
図2 現地土壌の可給態リン酸濃度(未発症株および発症株周辺各5地点の作土の最小値,平均値,最大値)
図3 県内施設栽培スイートピーの可給態リン酸濃度分布