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更新日:2023年7月11日

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施設スイートピーに発生したリン酸過剰による葉身白化症状

施設スイートピーに発生したリン酸過剰による葉身白化症状に関する研究

神奈川県におけるスイートピー栽培の歴史は古く、大正時代にまで遡ります。現在では約50戸の農家が約4haを栽培し、年間500万本の切り花を出荷しています。このスイートピーに、12月以降、下葉から白化し、激しくなると上位葉にまで白化が進展し、品質が低下する症状が見られました。農業環境研究部でこの原因を究明したところ、土壌のリン酸過剰であることが判明しました。

症状の特徴と現地の土壌管理状況

(1)症状の特徴

開花が始まる12月頃から始まり、栽培が終了する4月まで続きます。下位葉から葉身の白化が始まり、徐々に上位葉に進展し、外見上はカリ欠乏にも類似しています(写真1左)。現地とほぼ同様の症状が、リン酸を大量施用したポット栽培や養液栽培でも再現されました(写真1中、右)。

写真 現地での発生写真 リン酸を過剰施肥したポット栽培での発生リン酸を過剰施肥した養液栽培での発生

写真1 スイートピーに発生した葉の白化症状(左:現地での発生、中:リン酸を過剰施肥したポット栽培での発生、右:リン酸を過剰施肥した養液栽培での発生)

(2)植物体の養分含有量

現地の発症株及び未発症株の葉身、葉柄、茎の養分含量を比較すると、発症株は全ての部位で、リン含量が未発症株の約2倍であることがわかりました(図1)。

図1 現地植物体のリン濃度(圃場内の未発症、発症、各10株平均値)

図1 現地植物体のリン濃度(圃場内の未発症、発症、各10株平均値)

(3)土壌の化学性

白化症の発生が激しかったスイートピーハウスで、発症株周辺及び未発症株周辺土壌の化学性を分析したところ、可給態リン酸濃度が発症地点、未発症地点ともに高濃度でしたが、両土壌を比較すると、発症地点のリン酸濃度がより高濃度であり、最大で622mg/100gでした(図2)。

2006年に土壌診断を行った県内スイートピー117圃場の可給態リン酸濃度(mg/100g)は、平均値158,最大値520,最小値23で、300mg/100gを超える高濃度圃場が15圃場あり(図3)、白化症状は、これらの高濃度圃場の一部で見られています。

図2 現地土壌の可給態リン酸濃度(未発症株および発症株周辺各5地点の作土の最小値、平均値、最大値)

図2 現地土壌の可給態リン酸濃度(未発症株および発症株周辺各5地点の作土の最小値,平均値,最大値)

図3 県内施設栽培スイートピーの可給態リン酸濃度分布

図3 県内施設栽培スイートピーの可給態リン酸濃度分布

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