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更新日:2024年6月24日

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大正時代の堆肥のつくりかた -神奈川県「堆肥のすすめ」より-

1920年(大正9年)3月に神奈川県内務部から発行された「堆肥のすゝめ」という冊子を紹介します。

環境保全型農業の普及とともに堆肥の重要性が指摘されています。
神奈川県では、1920年(大正9年)3月、神奈川県内務部から「堆肥のすゝめ」という17ページほどの冊子が発行されています。その中には、堆肥の効果から製造方法、施用方法が記載されていますが、現在からみても適切な物です。当時の神奈川県は堆肥研究の先進県であったようです。

次に、その概要を紹介しますが、文体と単位は一部を除き、現代風になおしてあります。

堆肥の製造法 -神奈川県「堆肥のすすめ」より引用-



「堆肥のすすめ」表紙

1.堆肥の効能(ほぼ原文のまま)

1)堆肥の養分は徐々に作物に供給する効あり。 (窒素0.6~1.25%、リン酸0.29~0.51%、カリ0.83~1.65%)

2)堆肥は地力を維持するの効あり。

3)堆肥は土質を改良する効あり。

4)堆肥は土地の養分又は他の肥料をして作物に吸はせやすくする効あり。

5)堆肥は土壌に吸収力を興ふる効あり。

6)堆肥は有益な細菌を田畑に興ふる効あり。

2.堆肥の材料

牛・馬・豚等の厩舎から出きゅう肥をはじめとして、動物質ではふん尿、骨、血液、革、毛髪等、植物質では緑肥、落葉、もみ殻、藁桿、雑草、水草、海草等の他、都会から出る厨芥類が使えます。

『都会からたくさん出る所の厨芥類は堆肥の好材料であります。ところが、現今、多くの都会では、この厨芥の捨て場に困って、やむを得ず、埋め立て地に利用しているようなわけで、むざむざ貴重な肥料を地下に埋没しているのは、誠に遺憾至極であります。故に、都市付近の農家は、適宜、組合を組織して、都会の塵芥を回収し、それをもって堆肥を製造するようにしたいものであります。』(原文のまま)

3.堆肥の製造法(堆肥舎内堆積)

1)堆肥の積み方は、材料の性質において特別の注意が必要です。きゅう肥はすでに半ば腐熟してふん尿中の窒素は、一部分アンモニアに変わっているので、最初から良く踏みつけて空気の通わないようにします。このためには、水を注いで湿気で空気を遮断するか、もみ殻のような小さな材料を混ぜて隙間をふさぐとよいでしょう。

2)ワラ類、落ち葉、雑草などは発酵しにくいので、堆積の時に土を混合したり5~6倍に薄めた下肥を注げば、土や下肥に含まれる微生物が腐熟を促進してくれます。また、土はアンモニアを吸収するので堆肥を作るのに適した資材です。

3)堆肥舎の床面に直接堆積すると、堆積物の下部が過湿になるので、材木で簀の子を作り床の全面に敷き詰めます。簀の子の上には、乾燥したタマネギの茎や粟の茎葉など硬い物を並べます。

4)その上に材料を踏みつけながら積みます。その高さが30cm程度になったら、材料が乾いていれば灌水します。その上に土を6~9cmの厚さに積み込んで踏みつけます。さらに同程度の原料を積み込み、土を乗せ踏み込む操作を繰り返します。堆積はなるべく正方形に積み、高さは1.5m程度にします。その上に土を6~9cmの厚さに積みます。

5)1回積み上げたままでは良い堆肥はできません。時々、切り返しをします。第1回は、堆積後夏季なら20日後、冬季なら30~40日後に行います。切り返しで、下部は上部に、外側は中に内側は外に置き換えます。高さ30cm積む毎に適時灌水します。硬く踏みしめ、さらに積み上げます。

6)最低2回は切り返しをします。第2回の切り返しからは、良く切れる鍬で縦に切り取るようにします。こうすると堆肥が小さくなり、扱いやすくなります。

7)堆積中に浸み出してくる暗褐色の液は、汲み上げて堆肥にかけてもよいが、この液には作物に吸われやすい養分が入っているので蔬菜類の追肥に使う方がよいでしょう。

4.堆肥の製造法(屋外堆積)

1)堆積する場所を踏み固め、直径約2mの円を書き、周囲に深さ5~10cmの溝を掘り、その一部に、直径・深さ各30cm程度の液溜を掘ります。このとき、わずかに傾斜をつけて液が溜まりやすくしておくとよいでしょう。その上に直径5cm程度の竹を20~30本並べ、この上に材料を積みます。このとき、長さ2mほどの5~6本の竹を束ねた物を中央に建て、空気の流通をしやすくします。

2)材料は、ワラ類、落ち葉などを使いますが、30~50cmの厚さに積んだ後、良く踏み固めます。十分に上から水を注いだ後、15~20kgの土を振りまき、よく踏み固めます。さらに、ワラを編んで縁取りをします。

3)その上に材料を積んで水を撒き踏み固め、土を乗せさらに踏み固め、周囲を縁取りする作業を繰り返します。高さが2m近くなったら、屋根型に材料を積んで、上をワラで組み上げ屋根をつくり、雨を防ぐとともに日光の直射を防ぎます。

4)このまま堆積しておけば夏で2~3か月、冬で3~4か月で中熟の堆肥が出来ます。施用するときは、これに縦に鍬を入れ、削り取るようにして粉砕します。


堆肥の製造法

5.堆肥施用上の注意(原文のまま)

1)堆肥は肥料としての効果が長く続きますから、追肥にするよりは基肥として施用すべきであります。

2)堆肥は、一旦圃場に搬出したならば、なるべくその日のうちに施用してしまわなければなりません。もし翌日に繰り延べるときには、それを踏み固め、日光、風雨にさらさぬように薦か菰で覆いをするか、又は土を欠けておく必要があります。

3)堆肥施用の深さは、砂質の地では少し深めにし、粘土地では浅くし、また未熟なものは浅くし、良く腐熟したものは、深く施すが宜しい。

4)桑、果樹などのように生育期の長いものや多年生のものには未熟の堆肥を用い、蔬菜、タバコなどのような生育期の短いものには、良く熟したものを用いるが宜しい。

5)堆肥は、その上部と下部とで性質に多少の差異がありますから、切り出す時には、縦に削り落として、上下を混ぜて用いるが宜しい。

以上示したように、今から80年以上前に現在の堆肥化の考え方の基礎がほぼ出来ています。とくに厨芥類(生ごみ)活用の重要性を指摘してあるのには驚きます。

現代では堆肥の原料も多様化し、また製造方法も各種の装置化が行われており、使う作物も昔はなかった温室栽培も多くなってきました。原料、製法、用途は大きく異なってきましたが、この昔の考え方を参考にしながら、堆肥をもう一度考え直してみましょう。

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