当所では昭和36年に育成した赤たまねぎ品種「湘南レッド」(図1)や、平成5年に品種登録した「早生湘南レッド」等の原種維持を行っています。今回はたまねぎの種採りについてご紹介します。
たまねぎの種子(図2)は、採るまでに丸2年間(足かけ3年)かかります。
まず1年目の9月に種まきを行い、翌年6月に種子生産用の親たまねぎを収穫します(図3、図4及び図5)。この親たまねぎは風通しのよい貯蔵庫内に吊し、夏越しさせたあと(図6)、その年の11月頃にビニールハウス内に定植します。冬を越した翌年(3年目)の5~6月になると、ネギ坊主が上がってきて、無数の小さな花を咲かせますので、ハウス内にミツバチをいれて受粉させます(図9)。このときに、他の品種との交雑を避けるため、ビニールハウスの周囲にはミツバチを閉じ込める網(寒冷紗)を張り隔離状態にします(図7及び図8)。
7月も終わりになると、種子は十分熟しますので(図10及び図11)、種子の収穫作業に入ります(図12)。熟した種子は十分乾燥させた後、原種(種子の基)として、保存します。
種採り(種子の増殖)は地味な仕事ですが、多大な労力と時間が必要です。うまく種子が採れなかった時には、大きな問題になりますので、担当者はその間、気の抜けない日々を過ごします。
図1 湘南レッド
図2 たまねぎの種 物差しの目盛は1cm
図3 1月の畑(定植2か月後)
図4 5月の畑(親たまねぎの収穫間近)
図5 種生産用の親たまねぎの収穫
図6 種生産用親たまねぎの夏越し
図7 種採り用ビニールハウス
図8 ハウスの内側(網で隔離)
図9 開花したネギ坊主とミツバチ
図10 登熟中の種子の状況
図11 種子が熟した状況
図12 熟した種子の収穫風景