更新日:2024年10月19日

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農業(水稲)への影響と適応策

神奈川県における水稲に対する気候変動の影響と適応策

気候変動の影響

 気温の上昇は、コメの収量や品質に影響を及ぼします。
 神奈川県では現在、高温による白未熟粒(でんぷんの蓄積が不十分で白く濁った米粒)の発生、登熟期間の気温が上昇することによる一等米比率低下などの、品質低下が見られます。

 

横浜地方気象台における8月の平均気温の変化

横浜地方気象台における8月の平均気温の変化(1987~2022年)
(白未熟粒は、出穂後約20日間(8月ごろ)に日平均気温が26~27℃以上になると発生が増加すると言われています。)

出典:過去の気象データから県適応C作成

 

 また、将来も、同様の品質低下が予測されています。

 例えば、「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」(環境省環境研究総合推進費S-8(2010~2014年))によると、品質を重視して、作付けを行った場合、温暖化により多くの地域で現在よりも収量が減少する予測が示されています。

品質保持を重視して作期の移動した場合のコメ収量予測(厳しい温暖化対策を取った場合)品質保持を重視して作期の移動した場合のコメ収量予測(現状以上の温暖化対策を取らない場合)
品質保持を重視して作期を移動した場合のコメ収量予測(2081年~2100年)
(条件:気候モデルMIROC※、排出シナリオRCP2.6、RCP8.5、基準期間1981~2000年、予測期間2081~2100年)

※気候モデルMIROC
 大気や海洋などの中で起こる現象を物理法則に従って定式化し、コンピュータによって擬似的な地球を再現しようとする計算プログラムを「気候モデル」といい、MIROCは、東京大学、国立研究開発法人国立環境研究所、国立研究開発法人海洋研究開発機構の共同により開発された気候モデルの一つ。

出典:気候変動適応情報プラットフォーム(2019年12月6日利用)

 

 

影響に対処するための県による施策(適応策)

 高温障害を軽減するため、技術試験を実施し、対策技術の確立を行うとともに、農家への技術支援を行います。

現在県で取組んでいる具体的な事例

  • 夏の高温による肥料切れを抑えるために、適量な追肥を実施
  • 高温による障害を防ぐために、水の掛け流しを実施
  • 新たな品種の導入にあたっては、耐暑性も選定基準として試験を実施
  • 水稲の生育状況及び作業管理について、適宜HPで情報提供を行い、異常気象の際は対応について情報提供・指導を実施(水稲・麦の生育状況
 

【参考】日本全国における気候変動による影響(概要)

出典:気候変動影響評価報告書(別ウィンドウで開きます)(2020年12月、環境省)

現在の状況

  • 全国で気温の上昇による品質低下(白未熟粒の発生、一等米比率の低下等)が発生
  • 一部の地域や極端な高温年には収量が減少
  • 一部の地域では、気温上昇により生育期間が早期化し、登熟期間前後の気象条件が変化

将来予測される影響

  • コメの品質低下
    • 現状を上回る温暖化対策を取らない場合(RCP8.5)、品質に関して高温リスクを受けやすいコメの割合が増加
    • 2040年代には乳白米の発生割合が増加し、一等米面積の減少による経済損失が増加
  • コメ収量への影響
    • 2061~2080年頃までは増収傾向だが、21世紀末には減収に転じる
    • 二酸化炭素(CO2)濃度上昇によるコメ収量の増加効果は、気温上昇の影響で相殺
  • 降雨パターンの変化がコメの年間生産性に影響

 

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