ホーム > くらし・安全・環境 > 生活と自然環境の保全と改善 > 野生動物と自然環境の保全 > 河川のモニタリング調査 > 環境DNAのページ
初期公開日:2023年4月13日更新日:2024年5月28日
ここから本文です。
神奈川県では水源環境を保全するため県民調査員の皆さんと環境DNA調査を実施しています。併せて環境DNA調査に活用可能な水生昆虫用のDNAデータベースを整備し、公開も行っています。
様々な生物の糞や体表粘液等に由来する環境中の存在するDNA断片のことで、例えば河川等で水を汲み、その中に存在するDNAを分析することで、その河川に生息する生物を知ることができます。
令和3年度より水源環境保全事業の県民参加型調査に試行的に導入し、令和4年度より正式な調査として導入しました。
県民調査員の皆様に協力をいただき、水源河川である相模川、酒匂川を中心に調査を実施しています。なお、比較のためにその他の県内の河川についても調査を実施しています。
また、令和5年度は県内の河川全域を対象に「令和5年度河川環境DNA調査プロジェクト」を実施しています。
調査地点の一覧は下図のとおりです。
年度 | 調査地点数 | 調査結果 |
---|---|---|
令和3年度(試行調査) | 10地点 | 魚類確認種(エクセル:13KB) |
令和4年度 |
22地点 |
魚類確認種(エクセル:13KB) |
令和5年度 | 20地点 |
当センターの環境DNAに関する研究成果等を以下にまとめています。
当センターでは河川の水質との関連が深い水生昆虫類について、古くから調査を実施しており、現在実施している水源環境保全事業の県民参加型調査においても捕獲による調査を実施しています。
これらの捕獲調査を補完するため、令和5年度より水生昆虫類を対象とした環境DNA調査を実施しています。
一方で、水生昆虫類については日本DNAデータベース(以下「DDBJ」)へのDNA配列の登録数が不足しており、環境DNA調査の際の種判別に支障があることから、当センターでは県内の水生昆虫類を中心にDNAデータベースの整備・公開を実施しています。
DNAデータベース整備については以下の手順に基づき実施しています。
主に神奈川県内において捕獲した昆虫類を専門家の方に依頼し、河川水辺の国勢調査の同定基準等を参考に外部形態から種の同定を実施しています。
対象については主に河川に普通にみられる種(普通種)としています。
種の同定が済んだサンプルは、DNA抽出を行う前に形態的特徴等を写真に記録しています。これは非常に生体が小さく、DNA抽出の際に生体が破損あるいは溶解する恐れがある場合に、形態的な特徴を後日確認できるようにするためです。
撮影写真の有無については、本ページの下部にあるサンプル情報(エクセルファイル)に情報を記載してありますので、生体写真の確認を希望する場合には問い合わせ先ご連絡ください。
なお、データベース整備を開始した初期の頃(令和2年度~令和3年度)においては、生体サンプルの撮影は実施していなかったため、写真の記録はありません。あらかじめご了承ください。
生体サンプルからのDNA抽出については、現在では可能な限りサンプルを破損しない形で実施しています。
なお、データベース整備を開始した初期の頃(令和2年度~令和3年度)においては、ミトコンドリア全長配列をシーケンスするため、一定程度のDNA濃度を確保する目的でサンプルから破壊的手法を用いてDNA抽出を行っていたため、DNA抽出を行ったサンプルが残っていない場合がありますので、あらかじめご了承ください。
同地点で捕獲された同種と思われる生体サンプルが残っている場合には、本ページの下部にあるサンプル情報(エクセルファイル)に「同所捕獲個体あり」と記載してありますので、ご確認ください。
DNA抽出液を用いて、DNAのシーケンスを実施します。シーケンスの方法としては、(1)ショットガンシーケンスによるミトコンドリア全長配列シーケンスと(2)次世代シーケンサーによるアンプリコンシーケンスの二通りの方法を採用しています。
ミトコンドリア全長配列シーケンスについては、ミトコンドリアDNA領域の16SrRNA領域のAQ-db領域(領域の詳細については本ページの下部に掲載している論文をご参照ください)を抜き出します。
次世代シーケンサーから得られた配列については、プライマー領域を除去し、サンプルごとに最もリード数が多かった配列を当該サンプルの配列とします。
上記作業が終了した配列について、サンプルの取り違えやコンタミ等に由来する誤りがないか確認します。具体的にはDDBJから同属種の16SrRNA領域を収集し、系統樹を作成することで別種のDNA配列が混入していないか等を確認します。
ここでは上記手順により整備した昆虫綱のミトコンドリアDNA領域の16SrRNA領域のDNAデータベースを公開しています。対象としている領域は原則として以下の論文の「AQdb-16Sプライマー」の領域としています。
バージョン | DNA配列(FASTA形式) | サンプル情報 |
---|---|---|
ver1.0(令和5年4月公開) |
(データ数:551) |
(登録数420種・属) |
ver1.1(令和5年9月公開) |
(データ数:616) |
(登録数471種・属) |
ver1.2(令和5年11月公開) |
(データ数:752) |
(登録数543種・属) |
ver1.2.1(令和5年12月公開) |
(データ数:749) |
(登録数541種・属) |
Ver1.3(令和6年6月公開) |
(データ数:933) |
(登録数571種・属) |
Ver1.4(令和6年冬公開予定) | - | - |
〇データベース整備に関してご協力していただいた企業、大学、地方環境研究所の皆様のご紹介
<DNAデータベースの公開>
株式会社生物技研様
株式会社プラントビオ様
(協力内容)
両社と当センターの共同研究「ミトコンドリアDNA領域に着目した環境DNAによる底生生物相把握手法の開発(R2~R3)」の中で得られた成果物である昆虫類のミトコンドリア全長配列のうち、454データ、405種・属の16SrRNA領域のDNAデータベース公開についてご了承いただきました。
<生体サンプルのご提供>
信州大学東条研究室様
(協力内容)
研究室に保管されている132個、101種の昆虫類DNA抽出物をご提供いただきました。
静岡県環境衛生科学研究所様
高知県衛生環境研究所様
群馬県衛生環境研究所様
神戸市健康科学研究所様
栃木県保健環境センター様
和歌山県環境衛生研究センター様
(協力内容)
捕獲された昆虫類をご提供いただきました。
〇サンプル情報の見方(わかりにくい部分について説明を追記しています)
SequenceID:目略号-科略号-学名-サンプル名-分析方法略号というルールで命名しています。
生体サンプル:「×」は生体サンプルは残っていません、「〇」は生体サンプルが保管されています、「同所捕獲個体あり」はDNA抽出を行った生体サンプルは残っていないものの、同地点で捕獲され、同種と考えられる個体は保管されています。
各サンプルへのコメント:データベース整備の際に気づいた点についてまとめています。
また、現時点においても昆虫類のDNAデータベースは十分とは言えない状況であり、データベース整備に協力いただける方を募集しています。ご協力いただける方は問合せ先にご連絡ください。
本DNAデータベースの内容に疑義がある方は、問い合わせ先にご連絡ください。必要に応じて再シーケンス等の対応を検討いたします。
主任研究員 長谷部
このページの所管所属は 環境科学センターです。