更新日:2026年4月15日
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神奈川県労働委員会は、標記の事件について、申立人の不当労働行為救済申立ての全部を救済する命令を交付しました。
申立人 X(組合)
被申立人 Y(会社)
本件は、【1】会社が、組合の申し入れた乗務員給与支給規程(令和4年10月1日から施行のもの。)の定め及び運用を議題とする団体交渉において不誠実な対応を行ったことが労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号に、【2】組合が、雇用調整助成金申請のために必要な休業協定書があれば提示するよう要求したにもかかわらず、会社がこれを提示しなかったことが同条第3号に該当する不当労働行為であるとして、組合により令和5年8月17日に救済申立て(以下「本件申立て」という。)があった事件である。
⑴ 主文
ア 会社は、同社の乗務員給与支給規程の定め及び運用を議題とする組合との団体交渉において、同社が令和4年10月1日から施行していた乗務員給与支給規程について、その内容が労働基準法に照らして適法であるかどうかを具体的に説明し、かつ、その改定の必要性について誠実に交渉しなければならない。
イ 会社は、本命令受領後、7日以内に陳謝文を組合に手交するとともに、同文書の内容を日本産業規格A2縦長型の大きさの白色用紙全面に明瞭に認識できる大きさの楷書で記載した上で、会社従業員の見やすい場所に毀損することなく、14日間掲示しなければならない。
⑵ 争点及び判断の要旨
(争点1)
令和5年6月20日の団体交渉(以下「A団体交渉」という。)において、組合が、会社に対し、乗務員給与支給規程の定め及び運用に疑問があり、労働基準法(以下「労基法」という。)に違反している旨指摘し、改善を求めたことに対する会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか否か。
(判断の要旨)
会社は、乗務員給与支給規程に関し、令和4年6月14日の団体交渉(以下「B団体交渉」という。)の時点から令和5年3月に至るまで継続して組合の指摘を受けていたのであるから、A団体交渉に向けて、自らの見解を具体的に説明しその裏付けとなる資料を提示する等の準備をすることは十分に可能であった。
しかるに会社は、A団体交渉において、組合の要求する事項(乗務員給与支給規程の定め及び運用に係る指摘への回答等)に対し、必要に応じて会社の主張の論拠を説明したり、その裏付けとなる資料を提示するなどして自らの見解について説明しておらず、誠実に団体交渉に応じたとは認められない。
したがって、A団体交渉における会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
(争点2)
B団体交渉において、組合が、会社に対し、雇用調整助成金申請のための休業協定書の存否を問いただし、同協定書が存在するならば組合に対し提供するよう求めたことについて、会社が応じなかったことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか否か。
(判断の要旨)
ア 除斥期間の適用について
本件申立てはB団体交渉から1年以上が経過した令和5年8月17日に行われているところ、組合は令和5年3月14日を回答期限とした「2023年春闘統一要求書」を会社に提出してコロナ禍における会社の対応等について説明を求め、令和5年3月20日の団体交渉の場においても休業協定書の開示を求めている。これに対し、会社は、本件申立て後の当委員会の期日で書証として提出するまで、各休業協定書の開示をしていない。
以上によると、会社は、休業協定書を開示しないという不作為を本件申立てに至るまで継続していたものであり、このような会社の行為は労組法第27条第2項かっこ書きの「継続する行為」に該当する。
イ 支配介入の成否について
組合が開示を求めていた休業協定書は、労働時間及び賃金の算定基準という基本的な労働条件に関して締結された労使協定の内容を示す書面と言え、そもそも休業協定書の内容は全ての従業員に周知されるべきものであった。
B団体交渉において、組合は、休業協定書の開示要求をしたが、この要求を受けても、会社は休業協定書の開示をしなかった。
加えて、同団体交渉において社長は、隔日勤務乗務員について休業協定書に基づき休業を実施した形をとりながら、乗務員を休業日にも公休出勤として乗務させている旨の発言をしていることから、会社は、実際には休業させていない日について雇用調整助成金の支給を受けていたことになり、会社としては休業協定書の内容を組合に隠しておきたい意図があったというのが相当である。
よって会社は、休業協定書について、組合に対し開示することを意図的に拒絶し続けたといえる。
上記の事情に照らすと、会社は、組合及びその活動について会社経営を阻害するものと捉えていたというのが相当であり、組合活動をできるだけ抑制したいという認識のもと、休業協定書の開示に誠実に応じない不作為を継続したと認められる。これは、組合の存在意義を否定する行為であり、組合の活動や運営に重大な支障を来すとともに、組合活動の弱体化につながる行為であるから、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
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