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更新日:2023年12月27日

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神労委令和2年(不)第24号東京芸術大学事件命令交付について

神奈川県労働委員会(会長 浜村彰)は、標記の事件について、申立人の不当労働行為救済申立ての一部を救済する命令を交付しました。

1 当事者

申立人 首都圏大学非常勤講師組合(組合)

被申立人 国立大学法人東京芸術大学(法人)

2 事件の概要

本件は、組合が、非常勤講師である組合員A及びBの無期雇用契約への転換並びにCの雇用問題等を議題とする団体交渉を申し入れたことに対する、法人の対応が、労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第1号、第2号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。

3 命令の概要

(1) 主文

ア 法人は、本命令受領後、速やかに陳謝文を組合に手交しなければならない。

イ その余の申立てを却下又は棄却する。

(2) 争点及び判断の要旨

(争点1)

非常勤講師の無期雇用契約への転換を議題とする平成31年3月13日付け団体交渉申入れ及び令和元年11月7日付け団体交渉申入れに対し、法人が団体交渉ではなく話合いとして応じたことは、労組法第7条第2号の不当労働行為及び組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)

ア 平成31年3月13日付け団体交渉申入れに対する法人の対応は、本件申立てのあった日から1年以上前になされており、労組法第27条第2項の除斥期間を徒過しているから却下する。

イ 令和元年11月7日付け団体交渉申入れについて

法人は、話合いにおいて組合の要求に根拠を示しながら回答するなどしているものの、組合に送付した文書や話合いでの発言を通じて、話合いには応じられるが、団体交渉には応じられないとする態度を重ねて示しており、団体交渉の相手方としての組合の存在は、否定ないし軽視された状況にあると言わざるを得ず、労組法第7条第2号の不当労働行為及び組合の運営に対する支配介入に当たる。

(争点2)

Cの雇用終了を議題とする平成31年3月26日付け団体交渉申入れ及び令和元年11月7日付け団体交渉申入れに対する法人の対応が労組法第7条第2号に定める不当労働行為に当たるか否か。また、同時に、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)

ア 平成31年3月26日付け団体交渉申入れに対する法人の対応は、本件申立てのあった日から1年以上前になされており、労組法第27条第2項の除斥期間を徒過しているから却下する。

イ 法人は、業務委託契約である非常勤講師の団体交渉には応じられないが、非常勤講師ではないCの団体交渉を拒否しておらず、話合いにおいて組合の要求に根拠を示しながら回答し、組合の提案を再検討する約束をしている。
 しかしながら、団体交渉の要求事項にCの雇止めの撤回が挙げられているにもかかわらず、組合に送付した文書や話合いでの発言を通じて、話合いには応じられるが、団体交渉には応じられないとする態度を重ねて示しており、団体交渉の相手方としての組合の存在は、なお否定ないし軽視された状況にあると言わざるを得ず、労組法第7条第2号の不当労働行為及び組合の運営に対する支配介入に当たる。

(争点3)

非常勤講師の無期雇用契約への転換を議題とする令和2年12月14日団体交渉、令和3年3月9日団体交渉及び同年4月26日団体交渉における以下(1)及び(2)に関する法人の対応が、不誠実な交渉態度に当たるか否か。また、同時に、組合の運営に対する支配介入及び組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるか否か。

 (1) 非常勤講師の無期転換やコマ数に関する説明の内容・態様

 (2) 組合員に生じた不利益の是正に向けた法人からの提案の状況

(判断の要旨)

ア 法人は、非常勤講師の無期雇用契約への転換制度、コマ数の増加や解決金の支払いに応じられない理由を説明するなど、組合の要求に応じて自己の主張及びその根拠を具体的に説明している。また、団体交渉において、使用者は労働者に対する譲歩や提案を義務付けられるものではない。したがって、法人の対応が不誠実な交渉態度に当たるとはいえないし、組合の運営に対する支配介入に当たるとはいえない。

イ 前記アで判断したとおり、法人の対応は不誠実な交渉態度に当たるとはいえず、また、法人が是正に向けた提案をしなかったことがただちに不当労働行為に当たるとはいえない。よって、法人の対応は組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるとはいえない。

(争点4)

Cの雇用終了を議題とする令和2年12月14日団体交渉、令和3年3月9日団体交渉及び同年4月26日団体交渉における以下(1)及び(2)に関する法人の対応が、不誠実な交渉態度に当たるか否か。また、同時に、組合の運営に対する支配介入及び組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるか否か。

 (1) Cの雇用終了に関する説明の内容・態様

 (2) 組合員に生じた不利益の是正に向けた法人からの提案の状況

(判断の要旨)

ア 法人は、Cの雇用終了の理由を説明するなど、組合の要求に応じて自己の主張及びその根拠を具体的に説明している。また、使用者は、団体交渉において、労働者に対する譲歩や提案を義務付けられるものではない。したがって、法人の対応は不誠実交渉態度に当たるとはいえないし、組合の運営に対する支配介入に当たるとはいえない。

イ 前記アで判断したとおり、法人の対応は不誠実な交渉態度に当たるとはいえず、また、法人が是正に向けた提案をしなかったことがただちに不当労働行為に当たるとはいえない。よって、法人の対応が、組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるとはいえない。

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