更新日:2024年6月25日

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神労委令和3年(不)第7号事件命令交付について

神奈川県労働委員会(会長 浜村彰)は、標記の事件について、申立人の不当労働行為救済申立ての一部を救済する命令を交付しました。

 

1 当事者

申立人 X(組合)
被申立人 Y(法人)

2 事件の概要

本件は、法人が、(1)組合員A及び組合員Bに対し停職処分を行ったこと、(2)A及びBに対し、懲戒解雇処分を行ったことが、同人らに対する労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第1号の不利益取扱い及び同条第3号の組合の運営に対する支配介入に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。

3 命令の概要

(1) 主文

ア 法人は、A及びBに対する令和3年3月24日付け諭旨退職処分及び同月31日付け懲戒解雇処分をなかったものとして扱わなければならない。

イ 法人は、本命令受領後、速やかに陳謝文を組合に手交しなければならない。

ウ その余の申立てを棄却する。

(2) 争点及び判断の要旨

(争点1)

A及びBに対する停職処分は、同人らに対する労組法第7条第1号の不利益取扱い及び同条第3号の組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)

組合は、A及びBは、組合が記者会見をする旨のプレスリリースを見た記者からの連絡を受けて取材に応じたものであるから、そのことを理由とする停職処分は、組合員の行った正当な意見表明に対する報復であり、不利益取扱いに当たると主張する。

しかしながら、プレスリリースは証拠として提出されておらず、記者がプレスリリースを見た上でA及びBに連絡したか否かは、証拠上明らかではない。また、取材記事の内容は保護者と教員が共同で提起した損害賠償等訴訟についてであるところ、組合は同訴訟の原告ではなくA及びBが本件取材を受けたことは、組合の活動であるとは認められない。

以上より、労組法第7条第1号の不利益取扱いには当たらない。また、労組法第7条第3号の組合の運営に対する支配介入にも当たらない。

(争点2)

A及びBに対する令和3年3月24日付け諭旨退職処分及び同月31日付け懲戒解雇処分は、同人らに対する労組法第7条第1号の不利益取扱い及び同条第3号の組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)

法人は、諭旨退職処分及び懲戒解雇処分の理由について、A及びBが法人に対して不当な損害賠償等訴訟を提起し継続していること並びに法人を批判する内容のビラを配布したことを挙げているため、以下検討する。

ア 不利益取扱いについて

(ア) 損害賠償等訴訟を提起し継続していることについて

組合は、損害賠償等訴訟の原告になっておらず、組合が損害賠償等訴訟の提起に組織的に関与した事実は証拠上認められないから、そのかぎりにおいて、法人はA及びBを労組法第7条第1号の規定する労働組合の行為をしたことを理由として処分したとはいえない。したがって、そのかぎりにおいて、当該行為の正当性を問うまでもなく、諭旨退職及び懲戒解雇処分は同号の定める不利益取扱いに該当しない。

(イ) ビラを配布したことについて

ビラの内容は、いずれも法人の社会的評価を低下させる懸念がないとはいえないが、全体としては組合らの意見を一般に知らしめるためになされたものといえる。

また、法人は、職員会議で組合のツイッター画面を映し出し、入学希望者が減ることが懸念される旨の話をする、ビラ配布に抗議する文書を組合に送付する等の行為を行っており、組合を疎ましく思っていたことが推認される。

さらに、令和2年9月5日に行われたビラ配布において、A及びB以外の教員も参加していたにもかかわらず、A及びB以外の教員に対する事情聴取や懲戒処分などは行われていないことからすれば、A及びBを諭旨退職処分及び懲戒解雇処分としたのは、組合員であることを理由として行った処分であり、労組法第7条第1号の不利益取扱いに該当するといわざるを得ない。

イ 支配介入について

A及びBが法人の労働者たる地位を失い、組合員が法人内部にいなくなったことにより、組合が法人内部で組合活動をすることができなくなったことから、労組法第7条第3号の支配介入に該当する。

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