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更新日:2023年12月27日

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神労委平成29年(不)第34号S事件命令交付について

※本件は、中央労働委員会が和解認定したことにより失効したため、申立人及び被申立人を匿名化しています。

神奈川県労働委員会(会長 浜村彰)は、標記の事件について、申立人の不当労働行為救済申立ての一部を救済する命令を交付しました。

1 当事者

申立人 X1(本部組合)

同 X2(支部組合)

同 X3(分会)

被申立人 Y(会社)

2 事件の概要

本件は、会社が、(1)分会が申し入れた一時金の支給を交渉事項とする団体交渉において不誠実な対応に終始したこと、(2)その後、正当な理由なく団体交渉に応じなかったこと、(3)分会が要求した平成27年年末一時金及び平成29年夏季一時金の仮払に応じなかったこと(以下「本件一時金支払拒否」という。)、(4)合理的な理由なく組合事務所の明渡しを要求したこと(以下「本件組合事務所明渡の申入れ」という。)が、(1)及び(2)は労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号に、(3)は労組法第7条第1号及び第3号に、(4)は同条第3号に該当する不当労働行為であるとして、本部組合、支部組合及び分会により、救済申立て(以下「本件申立て」という。)のあった事件である。

3 命令の概要

⑴ 主文

ア 会社は、分会員に対し、平成27年年末一時金については、会社の就業規則に基づき基本給の1.08か月分を、平成29年夏季一時金については、会社の就業規則に基づき基本給の1.05か月分を速やかに支払わなければならない。

イ 会社は、本命令受領後、速やかに陳謝文を分会に手交するとともに、会社従業員の見やすい場所に掲示しなければならない。

ウ その余の申立てを却下又は棄却する。

⑵ 争点及び判断の要旨

(争点1)

平成25年12月3日以降、平成25年年末一時金、平成26年夏季一時金、平成26年年末一時金、平成27年夏季一時金、平成27年年末一時金、平成28年夏季一時金、平成28年年末一時金、平成29年夏季一時金及び平成29年年末一時金の支給を議題とする団体交渉における会社の対応は、不誠実な団体交渉に当たるか否か。

(判断の要旨)

ア 平成25年年末一時金から平成28年年末一時金までを議題とする団体交渉は、いずれも本件申立ての1年以上前に行われているから、このことに係る申立ては、労組法第27条第2項の除斥期間を徒過しており、却下する。

イ 平成29年夏季一時金を議題とする団体交渉において、会社は、回答の根拠となる経営状況を説明し、分会の質問にも可能な範囲で回答をしている。また、交渉が進展しなかったのは、分会の態度にも要因があったといえるから、会社の対応は、不誠実な団体交渉には当たらない。

ウ 平成29年年末一時金を議題とする団体交渉において、会社は、回答の根拠となる経営状況を説明し、分会の質問に可能な範囲で回答をしている。一方、分会は、会社の説明に対し特段の追及をすることなく、会社が提示した支給率を受け入れているから、会社の対応は、不誠実な団体交渉には当たらない。

(争点2)

分会の平成26年年末一時金を議題とする平成26年12月12日付け団体交渉の申入れ並びに平成27年年末一時金を議題とする平成28年1月20日、同年3月3日及び平成29年4月27日付けの各団体交渉の申入れに対する会社の対応が、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。

(判断の要旨)

ア 平成26年12月12日、平成28年1月20日及び同年3月3日付けの分会の団体交渉申入れに対する会社の回答は、いずれも本件申立ての1年以上前に行われているから、このことに係る申立ては、労組法第27条第2項の除斥期間を徒過しており、却下する。

イ 分会が平成29年4月27日付けで申し入れた、平成27年年末一時金を議題とする団体交渉に対し、会社は交渉の行き詰まりを理由に応じていないが、交渉の経過をみれば、会社は回答の根拠を説明し、分会は増額の要求を繰り返すのみであったから、同交渉は進展する見込みのないまま平行線をたどっていたといえる。したがって、上記会社の対応は、正当な理由のない団体交渉の拒否には当たらない。

(争点3)

本件一時金支払拒否は、組合員であることを理由とした不利益取扱い及び組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)

ア 会社が、分会を嫌悪ないし敵視していた事実は認められないから、本件一時金支払拒否は、組合員であることを理由とした不利益取扱いには当たらない。

イ 会社は、従前妥結さえすれば一時金を支払う姿勢を示していながら、仮に妥結をしても消滅時効を援用して支払を拒否する姿勢を突如として示した。

また、会社は、未妥結であった一時金について、会社の回答額を支払った上で、上乗せ部分については交渉を拒否する等、より穏当に分会員の生活を守る方法も採り得たにもかかわらず、その方法によらず分会員以外の従業員には支払済みであった一時金の支払を拒否した。こうした対応をとれば、結果として分会員に経済的に大きな打撃を与え、分会の交渉力、団結力及び求心力が失われることを、会社は十分に予測できたといえる。

したがって、本件一時金支払拒否は、組合の運営に対する支配介入に当たる。

(争点4)

本件組合事務所明渡の申入れは、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)

会社は、具体的に理由を示した上で組合事務所の明渡しについて分会に協議を求めており、その経過において殊更分会の組合活動に打撃を与えた事実は認められない。

一方、分会は、会社との協議を回避して本件申立てに至っており、こうした事実を併せ考えれば、会社が分会に対して組合事務所の明渡しを申し入れたことのみをもって、組合の運営に対する支配介入に当たるとはいえない。

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