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更新日:2023年7月20日

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神労委平成30年(不)第18号丈夫屋事件命令交付について

概要は次のとおりです。

神奈川県労働委員会(会長 盛誠吾)は、標記の事件について、本日、申立人の不当労働行為救済申立ての一部を救済する命令を発しましたので、お知らせします。

1 当事者

申立人 全国一般労働組合全国協議会神奈川(組合)

被申立人 有限会社丈夫屋(会社)

2 事件の概要

本件は、会社が【1】組合員Aの賃金減額(以下「本件賃金減額」という。)の撤回、賞与の支給及び昇給などを議題とする団体交渉において、資料の提示や説明を拒否したこと、【2】その後、組合からの申入れに対し、交渉決裂を理由に本件賃金減額を議題とする団体交渉に応じなかったこと、【3】平成30年7月期賞与を議題とする団体交渉の申入れに対し、訴訟に係属していることを理由に拒否したこと、【4】本件賃金減額を提案し、その後も撤回に応じなかったこと、【5】組合員Aの労働災害補償保険給付の申請(以下「本件労災申請」という。)に関し、事業主記入欄の記入を拒否したことが、【1】から【3】までは労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号及び第3に、【4】及び【5】は同条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。

3 命令の概要

⑴主文

ア 会社は、組合が申し入れた団体交渉事項のうち、本件賃金減額の撤回、賞与の支給及び昇給について、必要な資料を開示するなどして組合と十分に協議し、誠実に対応しなければならない。

イ 会社は、平成30年7月期の賞与の支給に関する団体交渉に、速やかに、かつ、誠意をもって応じなければならない。

ウ 会社は、本命令受領後、速やかに陳謝文を手交しなければならない。

エ その余の申立てを棄却する。

⑵ 主な争点及び判断の要旨

【争点1】

本件賃金減額等を議題とする組合の団体交渉申入れに対する会社の対応は、不誠実な交渉態度及び組合の運営に対する支配介入に当たるか。

(判断の要旨)

本件賃金減額、組合員Aの解雇期間中の賞与及び昇給を議題とする団体交渉において、会社は、組合の要求に対し、書面で回答はするものの、交渉の場で説明ないし協議しようとせず、また、組合からの資料開示の要求にも応じていない。こうした会社の対応は、自己の主張を組合が理解し、納得することを目指して誠意をもって行ったものとは認められず、不誠実な交渉態度に当たる。また、会社の対応は、団体交渉を形骸化し、労働組合の意義そのものを否定するものであり、組合の運営に対する支配介入にも当たる。

【争点2】

(前記争点1記載の交渉後)本件賃金減額を議題とする組合からの書面による団体交渉申入れに対し、会社がこれに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否及び組合の運営に対する支配介入に当たるか。

(判断の要旨)

争点1のとおり、本件賃金減額についての団体交渉が十分に協議されなかった要因は、会社の不誠実な交渉態度にある。組合からの書面による団体交渉申入れに対し、交渉決裂を理由にこれを拒否した会社の対応は、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たる。また、組合の運営に対する支配介入にも当たる。

【争点3】

平成30年7月期賞与を議題とする組合からの団体交渉申入れに対して、会社がこれに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否及び組合の運営に対する支配介入に当たるか。

(判断の要旨)

組合からの団体交渉の申入れに対し、会社は、訴訟が係属していることを理由にこれを拒否している。

しかし、訴訟が係属中であったとしても、団体交渉によって自主的に解決する余地がある以上、このことを理由に団体交渉を拒否することはできず、会社のこうした対応は、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たる。また、組合の運営に対する支配介入にも当たる。

【争点4】

会社が、本件賃金減額を通知し、その後も減額を撤回しなかったことは、組合員であることを理由とする不利益な取扱い及び組合の運営に対する支配介入に当たるか。

(判断の要旨)

会社は、組合員Aが組合に加入する前から同人の賃金を減額する方針を決定している。また、会社がAを組合員として嫌悪していた具体的事実は認められないから、本件賃金減額を通知し、その後も減額を撤回しなかったことは、組合員であることを理由とする不利益な取扱いに当たらない。また、会社の対応に労働組合の存在が影響したとは認められず、組合の運営に対する支配介入にも当たらない。

【争点5】

会社が組合員Aの労災申請書事業主記入欄への記入を拒否したことは、組合員であることを理由とする不利益な取扱い及び組合の運営に対する支配介入に当たるか。

(判断の要旨)

組合が会社に送付した本件労災申請書の「災害の原因及び発生状況」記載の欄には、組合員Aが会社から嫌がらせなどを受けたことが記載されているが、組合は事実を裏付ける根拠を示しておらず、会社の労災原因の調査に協力していないため、この事実の存否については明らかにされていない。このことからすれば、会社が労災申請書の事業主記入欄への記入を拒否したことはやむを得ないものといえるから、組合員であることを理由とする不利益な取扱いに当たらない。また、組合の運営に対する支配介入にも当たらない。

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