淡水魚類図鑑 ホトケドジョウ

掲載日:2021年3月27日

ホトケドジョウ Lefua echigonia

レッドリスト 県カテゴリ:絶滅危惧I(ローマ数字の1)B類(I(ローマ数字の1)A類ほどではないが、近い将来における絶滅の危険性が高い種)
国カテゴリ:絶滅危惧I(ローマ数字の1)B類

コイ目ドジョウ科 

ホトケドジョウ

分布 日本固有種で、秋田県・岩手県以南の岡山県までの本州と四国の一部とされていました。
しかし、最近になって本種は、ホトケドジョウとナガレホトケドジョウの2種に分けられました。
神奈川県に生息しているのはホトケドジョウです。
形態 体型は小型で細長く円筒形で、4対8本のヒゲがあります。
体色は地域差や個体差がありますが、茶褐色または赤褐色で体側には黒点が散在するものが多いです。全長8cmほどになります。
生態 本種は、湧水のある流れの緩やかな細流や用水路等の河川の源流域や支流域に多く、河川本流域に出現することは稀です。雑食性で、アカムシや水生昆虫等の小動物を主食としています。飼育下では熱帯魚用やキンギョ用の配合飼料をよく食べます。
1年で成熟し、春先に1尾の雌を数尾の雄が追いかけながら水草等に産卵します。卵は直径約1mmで、2から3日でふ化します。
ふ化仔魚は約3mmで、ふ化翌日には水中を泳ぎ出します。ふ化後15日で全長2cm程度になり、翌春には4から5cmにまで成長します。 
備考 本種が生息する谷戸の源流域は、都市化による環境変化を受けやすく、多くの生息地が消滅し、絶滅が心配されています。
内水面試験場では本種の増殖に成功し、水域別に種苗生産を行っています。

ホトケドジョウは今・・・・・

 ホトケドジョウの主要な生息地は低い山から平地にかけて形成される谷戸を流れる細い流れです。このような場所は人間にとって住みやすく、また開発しやすいので、ホトケドジョウは全国的に減少しています。

 神奈川県における生息河川は、多摩川、鶴見川、帷子川、大岡川、神戸川、滑川、相模川、金目川、酒匂川等が知られていますが、都市化に伴う環境悪化により急激に生息地が減少し、県の「レッドデ-タ生物調査報告書」では「絶滅危惧種」とされています。特に、川崎市や横浜市等の都市部周辺の生息地減少が目立っています。
 ホトケドジョウの住む湧き水のあるところは谷戸と呼ばれ、ホタルなどもいるところです。しかし、このような場所も近年開発が進み、次々に宅地が造成されてホトケドジョウの生息場所が失われています。
 また、湧き水の残っているところも、コンクリートによる護岸等によりホトケドジョウの隠れ場所が失われているのも減少する要因の一つです。

水産技術センターの取り組み

 水産技術センター内水面試験場では、県内で絶滅に瀕している希少種の生息地を復元し健全な生態系を取り戻すため、平成7年度から研究に取り組んでいます。その一環としてホトケドジョウの調査研究を実施しています。その結果、平成8年度に、本種の種苗生産技術の開発に成功し、平成9年度は、多摩川、神戸川、引地川、相模川等、8系統約600尾の種苗生産を行いました。そして、相模川や神戸川等の支流では、生息地復元のために当場で増やした魚を用いて放流試験を実施しています。

 平成10年度はFRP水槽とキンラン(人工水草)を使用した増殖試験を実施し、数千尾規模の大量生産に成功し、その後も毎年遺伝子保存のため各系統の種苗生産を行っています。

 

市民とともに生息地復元へから川崎市生田緑地での取り組み

 ホトケドジョウは絶滅に瀕した希少魚であり、飼育して保護することは、もちろん重要です。しかし、試験場や動物園でしかホトケドジョウを見ることができない。そんな最悪の事態は絶対に避けなければなりません。保護の最終目標は、自然水域における生息地の復元にあるのです。試験場では、川崎市や伊勢原市、秦野市等の各市町村や市民団体に対し、保護活動の指導を行ったり、生息地復元活動に協同で取り組んでいます。

川崎市の生田緑地では、行政・専門家・市民が連携してホトケドジョウの保全活動に取り組んでいます。この地域のホトケドジョウは岡本太郎美術館の建設により、絶滅に危機にありましたが、試験場で保護飼育を実施して、種苗生産に成功しました。
平行して、川崎市が主体となり、生田緑地ホトケドジョウ保護育成委員会が結成され、保全対策が検討された結果、4つの復元池が造成されました。試験場で増殖したホトケドジョウを放流し、毎年、繁殖が確認されています。
現在は「生田緑地の谷戸とホトケドジョウを守る会」と市公園事務所が主体となって維持管理を行っており、毎年、ホトケドジョウの調査やビオトープ内の泥の上げ、外来種駆除などを行っています。
ホトケドジョウの生息地は、生田緑地のように都市部の谷戸源流域に残っています。そのため、本種の生息地を保全することは、結果的に都市部の水源地を保全することになるので、流域河川の環境から見ても、意義の大きい取り組みです。

求愛?生息場所

湧き水が流れ、植物が水の周りにあり、浅く、泥のつもったこんな場所にホトケドジョウは生活しています。