更新日:2024年2月20日

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研究内容の紹介(環境科学センター)

環境科学センターで実施している研究内容について紹介するページです。

走査型電子顕微鏡を用いたPM2.5の実態把握

環境科学センター 調査研究部 地域環境担当
主任研究員 石割 隼人

石割主任研究員

研究を始めた経緯

 微小粒子状物質(PM2.5)とは大気中に浮遊している2.5μm以下の粒子のことで、非常に小さいため肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系などへの影響が心配されていることから、2009年に環境基準が設定されています。PM2.5については、現在のところ国のマニュアル等に従って質量濃度や一部の成分の分析結果によってのみ評価が行われています。そのため不明成分も多く残されており、限られた情報に基づいて発生源対策を実施せざるを得ず、有効な削減施策につながっていないのが実情です。PM2.5粒子は発生源によってその形状や粒径、組成といった性質が異なっていると考えられることから、粒子一つ一つがどのような特徴や物性を持つかを確認・集計すれば実際の粒子の発生源やその割合をより正確に推定することが可能となり、その結果を発生源対策に反映できると期待されます。そこで、PM2.5粒子を対象として走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた高倍率での観察と、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いた元素分析を行い、その詳細な実態を明らかにすることとしました。

SEM&EDX分析の様子

SEM&EDX分析の様子

SEM&EDX測定例

SEM&EDX測定例

研究の内容

 あらかじめ金を蒸着したポリカーボネート製のろ紙(Φ0.2μm)と、その下に石英ろ紙を敷いたホルダーをセットし、24時間試料採取を行いました。資料採取後は直ちにポリカーボネート製ろ紙を切断し、伝導性カーボンテープで試料台に貼り付けて金蒸着を行い、SEM(×10,000)とEDXで観察(100視野)を行いました。

PM2.5サンプリングの様子

PM2.5サンプリングの様子


 その結果、100視野中(ろ紙全体の約1/100,000)に粒子が約1,300個存在し(約1,800万個/m³)、そのうちの26%が燃焼由来と考えられているチェイン状粒子(形状のみで判断)、19%が微生物、15%が凝集粒子、7%がSi(ケイ素)を主要とする粒子、6%がFe(鉄)を主要とする粒子でした。また、25%が形状や元素情報からは正体の分からない粒子でした。

PM2.5中のチェイン状粒子(10,000倍)

PM2.5中のチェイン状粒子(10,000倍)

PM2.5中の微生物類(10,000倍)

PM2.5中の微生物類(10,000倍)

 

 これまで、PM2.5に微生物が含まれているという知見はあまりありませんでしたが、PM2.5中に相当数の微生物が存在していることが視覚的に明らかとなりました。また、チェイン状粒子も相当数存在していることが確認されました。チェイン状粒子は鎖状の粒子であるため、一つ一つの粒子は質量濃度には大きく寄与しないと考えられますが、総数から考えれば決して無視できない存在であり、その生成過程からススやばいじんと同質であるため人体に悪影響を及ぼす可能性が考えられます。また、粒子の種類ごとに平均粒径が異なっており、多くの粒子が定義上の上限の2.5μmよりも小さい傾向にあり、肺への吸い込みやすさからあらためて健康への悪影響の懸念が示唆されました。

今後の展開

 PM2.5の組成は季節や気象条件等により変化するため、引き続き分析を重ねてその詳細な実態を解明していく予定です。

研究職員のプロフィール(研究歴、受賞歴等)

  • 学位:博士(農学)
  • 受賞歴:全国環境研協議会関東甲信静支部表彰(令和3年)
  • 発表論文
    神奈川県におけるPM2.5に含まれる有機化合物の同定および定量、大気環境学会誌,54,202-213(2019).
    神奈川県におけるPM2.5に含まれるタンパク質の定量、大気環境学会誌(in press).

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