研究内容の紹介(水産技術センター相模湾試験場)

掲載日:2020年10月22日

空から行う定置網の防災研究~定置網の防災にドローンが活躍中!~

相模湾試験場 田村怜子

チーム写真

研究を始めた経緯

県の代表的な漁業の一つである定置網では、季節によってブリやアジ、イワシなどの回遊魚が漁獲され、その量は県内の沿岸漁業の約7割を占めるほどです。水産物の安定供給に大きく貢献している定置網は、そのほとんどが相模湾に集中しています。しかし、定置網は大きいもので幅400m、深さ数十m規模になること、また、常に海中に敷設されていることから、湾内への黒潮系水の流入や台風など低気圧の接近が原因で起こる「急潮(きゅうちょう)」という速い流れ(50cm/秒以上)の影響を受けやすく、過去には網が丸ごと流されてしまう大被害を受けたこともありました。しかし、これまでに相模湾試験場が行った定置網の防災に関する研究によって急潮対策が進み、過去に遭ったような大被害は起こらなくなりました。しかしながら、近年は強い勢力を維持したまま通過する台風などが増え、再び定置網の被害が目立ち始めています。
そこで、定置網の防災を研究する新たな手段としてドローンを導入し、空から定置網を俯瞰した映像を入手することで被害状況を把握し、定置網の被害からの迅速な復旧に役立てるための研究を始めました。ドローンをどのように飛ばすか、どのようなアングルで写真や動画を撮影したほうが良いのか、画像の取り方も含めて検討しています。それらのデータを基に、被災後の対策に有効な情報として利用できるようにすることも研究の目的の一つです。

定置網の構造

定置網の構造

 

江ノ島沖の定置網

江ノ島沖の定置網

 

研究の内容

まず基礎となるデータとして、平常時の定置網の画像を記録します。画像はリアルタイムでモニターに映し出されるので、網の各構造部分が映るよう注意しながら、写真と動画で撮影します。同じように、台風が通過した後にも撮影を行います。こうすることで、平常時とどこが違うのか、被害に遭っている部分はどこかを判断できるようになります。
被害の把握は早いほど、その後の対応も早く行えるため、台風が通過した後は当場の調査船「ほうじょう」が出船できる海況であれば、すぐ各定置網の漁場に向かう調査体制を整えています。漁業者は、港や船に被害があると出船できないことがあるため、一足先に私たちが定置網の状況を撮影してくることで、自分たちの網がどうなっているかの情報をお知らせすることができます。
また、被害を受けた部分を修復した後も、設計通りの形状に復旧できているかどうかの確認のため、ドローンを飛ばすこともしています。

所有のドローン

当場所有のドローン

 

船上でのドローン

船上でのドローン離陸・回収

 

今後の展開

迅速に現場へ赴き、台風の被害の有無、被害箇所の情報を漁業者と共有することは、その後の復旧活動を進めていくうえで大変重要です。漁業者からは、ドローンの映像で自分たちの網がどのように被害を受けているかがとてもよく分かるため、修復作業を進めるために必要不可欠な情報になるというご意見をいただいています。また、私たち研究員としても、海の中で何が起きてどのような被害が起こったかを知るための大変貴重なデータになっています。
一方で、ドローンの1回の飛行可能時間が短いことや、定置網の各部位の撮影に集中するあまり、定置網の全体像の写真が意外と少ないという問題が見えてきました。全体像の写真は、平常時と被災時の比較をする際に必要なので、順次揃えていく予定です。また、現在はドローンを目視で確認しながら操縦するため、調査に時間がかかります。今後は、正確な位置情報を基に自動運航ができる測量用ドローンの導入などを検討しつつ、必要な映像・画像情報は何か、どうしたらより情報収集を効率化できるかを考えながら研究を進めていきたいです。

定置網破損

網が破れている様子

 

研究職員のプロフィール(研究歴、受賞歴等)

担当者写真(田村)令和元年6月より相模湾試験場で研究員として従事。定置網の防災に係る研究に取り組むほか、漁業で使用する網や道具の改良も進めている。また、相模湾に関係する魚の資源についても担当。
大学院時代はウミガメを定置網の中から逃がす漁具開発を研究し、イギリスで開催された国際水産学会で発表した経歴がある。