研究内容の紹介(農業技術センター)

掲載日:2020年6月17日

超省力化と機械化を目指した二ホンナシ・ジョイント栽培の新樹形

生産技術部果樹花き研究課 関達哉

関さん(農業技術センター)

研究を始めた経緯

果樹生産は生産者にとって身体に負荷の大きい上向き姿勢や脚立上での長時間の作業をはじめ、細かな栽培管理が必要なことや、高齢化や後継者不足による生産者人口の減少等多くの問題を抱えています。また、他の作物と比べ樹の形が複雑で機械化が進まないなどの、労働時間が長くなる要因もあげられています。
このような中で、当所で開発し、特許も取得した「ジョイント栽培」は、早期成園化と栽培管理の省力化が可能であることから、ナシやカキ、ウメを中心に全国の産地への普及が進んでいます。
この樹形を利用することにより、上向き姿勢や両腕を肩の高さより上にあげる姿勢、脚立作業が少なくなることで軽労化が図られました。
今後は生産者の経営安定に向け規模拡大や機械化が重要になると考えられ、さらなる省力、軽労化と機械化、自動化を目指して、新たなV字型のジョイント樹形の開発を進めていきます。

ニホンナシの慣行栽培

ニホンナシの慣行栽培

 

 

ナシのジョイント仕立て法

ナシのジョイント仕立て法

 

 

ジョイントV字トレリス樹形

ジョイントV字トレリス樹形

 

研究の内容

ニホンナシ栽培における年間労働時間50%削減を目標として、ジョイントV字トレリス樹形による超省力と安定生産技術を確立し、同時に樹形に合わせた汎用性の高い自動化機械を大学工学部、民間企業と共同で開発を進めてきました。
樹形が変わることによる栽培管理の省力化では、経営面積を制限するせん定作業等について大幅な労働時間の削減が可能であり、従来の平棚栽培特有の上向き姿勢や両腕を肩の高さより上にあげる姿勢が少なくなることで軽労化も図られることがこれまでに明らかにされました。
機械による作業支援では、開発中の自動走行車を栽培管理に導入することによる作業時間の省力効果が明らかになりつつあります。併せて、草刈、防除、収穫作業などの自動化にも取り組んできましたが、当所で取り組む自動防除機は、園内を決められたルートで自動走行できる車両に防除機を連結し、自動防除技術としての実用化を目指しています。
収穫ロボット技術では、ジョイントV字トレリス樹形において収穫のロボット化に望ましいと考えられる栽培様式を、機械開発側との協調の中で必要な変更を繰り返し、併せて作業性や収量、果実品質への影響について明らかにする試験を進めています。
この樹形で最も懸念されるのは、側枝が従来の水平からV字状に斜立することによる果実品質への影響ですが、これまでの研究で、側枝基部からの着果高と果実糖度の関係は懸念された基部寄り果実の品質低下は認められず、着果高間のバラツキも少ないことが明らかになりました。

V字トレリス樹形での作業の様子

V字トレリス樹形での作業の様子

 

 

 

自動走行車(差し替え)

ゴルフカートを利用した自動走行車両の試作品

 

自動防除機

自動防除機

今後の展開

今後はジョイントV字トレリス樹形「幸水」成園時の生産性、果実品質として、収量3t/10a、平均果実重350~400g、平均果実糖度12.5%以上を目標とし、さらに、自動走行車両等による作業支援や自動化技術の活用により、ナシ栽培の年間労働時間を50%削減する技術開発を進めていきます。

自動収穫機

開発中の自動収穫機

 

 

ロボットが収穫したニホンナシ

世界で初めてロボットが収穫したニホンナシ

 

研究職員のプロフィール(研究歴、受賞歴等)

発表論文関さん
  • 「ブドウ‘シャインマスカット’の開花始期および7月上旬の新梢・副梢管理法が生育および果房特性に及ぼす影響」果実日本2018年11月号
  • 「ジョイント栽培の機械化、自動化研究への展開」果実日本2019年1月号
  • Translocation of nutrients in grafted Japanese pear ‘Kosui’ by ‘tree joint’ method”. Acta Horticulturae.800:273-280. 2008.
  • Productivity and fruit quality of Japanese pear in “joint V-shaped trellis”. Acta Horticulturae(in press).

※二ホンナシの樹体ジョイント仕立て法は、農林水産省「農業新技術2010」(「早期成園、省力化効果のある「ナシの樹体ジョイント技術」)「農業新技術2015」(「果樹の樹体ジョイント仕立てを核とした省力、低コスト栽培システム」)に選定されています。