研究内容の紹介(畜産技術センター)

掲載日:2021年2月4日

トウモロコシ二期作の栽培方法の開発~土地生産性向上による自給飼料の生産拡大~

企画研究部企画研究課 折原健太郎

職員写真(畜産技術C)

研究を始めた経緯

神奈川県の酪農経営では、飼料の購入費が牛乳の生産にかかる費用の50%程度を占めています。牛の飼料の大部分は輸入に頼っており、生産国の気象災害や他国との競合等により、価格が高騰して経営に影響を及ぼすことがあります。安定した酪農経営のためには、自給飼料(牧草等酪農家が自分で生産する飼料)の生産を拡大することが有効です。しかし、耕地面積の狭い神奈川県では、栽培面積を拡大することは難しく、土地生産性を高めた自給飼料の生産技術が求められていました。
従来の神奈川県等の温暖地における土地生産性が高い自給飼料の生産方法は、夏作物のトウモロコシと冬作物の牧草を組み合わせた二毛作(同じ畑で1年に2回違う作物を栽培すること)でした。
最近の温暖化により、今まで九州等の暖地で行われていた土地生産性の高いトウモロコシの二期作(同じ畑で1年に2回同じ作物を栽培すること)の栽培が可能な気象条件となってきたことから、先進的な酪農家での取り組みが始まりました。しかし、収量や品質が安定しない等の問題があり、この取り組みは広がりませんでした。
そこで、神奈川県の気象条件に適した飼料用トウモロコシ二期作の栽培方法について検討し、従来の自給飼料の栽培方法との収量性を比較することにより、神奈川県における土地生産性の高い自給飼料の生産方法の開発を目指しました。
※牛の飼料にするトウモロコシは、人の食べるトウモロコシとは異なり、草丈が3m程度になる大きなトウモロコシです。草食動物の牛は、子実だけではなく茎葉も一緒に食べます。

トウモロコシの収穫1

トウモロコシの収穫

 

トウモロコシの収穫2

トウモロコシの収穫

 

研究の内容

神奈川県では、トウモロコシの栽培は、通常4~8月に1回栽培し、4~5月に播種して8~9月に収穫します。一方、トウモロコシ二期作では、トウモロコシの栽培可能な気象条件が4月~11月であることから、この間にトウモロコシを2回栽培する必要があります。
そこで、1作目および2作目に適する品種について検討し、それぞれを組み合わせて1作目は極早生品種を4月上旬に播種して7月下旬の収穫し、2作目は中生~晩生品種を8月上旬に播種して11月下旬に収穫することにより安定して栽培することができました。開発した方法で栽培したトウモロコシ二期作は、従来土地生産性の高いとされていたトウモロコシと牧草の二毛作と比較して栄養収量が20%以上多収となり、神奈川県において最も土地生産性の高い自給飼料の生産方法でした。
一方、トウモロコシ二期作では、1作目の収穫から2作目の播種までの期間が1週間程度と極めて短いことから、2作目の播種が遅れて収量や品質の低下等が問題となりました。そこで、2作目に不耕起栽培(耕さずに播種する栽培方法)を導入して、2作目の播種を省力化して播種期を早めることにより、これらの問題を解決することができました。
トウモロコシ二期作は、土地生産性が高いだけではなく、トウモロコシと牧草用の2種類の機械が必要な二毛作と比べて、トウモロコシ用のみで良いことから機械費の節減も可能であり、多くのメリットを持つことから、神奈川県内の取り組みも拡大しています。

 

トウモロコシ不耕起栽培の現地検討会の様子

トウモロコシ不耕起栽培の現地検討会の様子

 

不耕起播種の様子

不耕起播種の様子

 

今後の展開

トウモロコシ二期作は、土地生産性の高い自給飼料の生産方法ですが、1作目の収穫から2作目の播種までの期間が極めて短いことから、なかなか栽培面積の拡大ができません。そこで、従来の方法から1作目の収穫と2作目の播種の作業分散する栽培方法について検討しています。
一方、温暖化による台風の大型化や病害虫の発生地域が拡大しています。最近は、トウモロコシ二期作では秋の台風による被害も大きく、倒伏や折損等により収量も大きく減少します。なかなか具体的な対策方法はありませんが、今後対応しなければならない大きな課題となっています。
また、飼料作物も他の農作物と同じように、野生動物による被害も多く発生しますが、畑の面積が大きいことから、柵の設置などの対策が、なかなか取れない現状もあります。畜産技術センターでは、ソルガムやダイズを利用した獣害を軽減する栽培方法を検討しています。

収穫期のトウモロコシ畑

収穫期のトウモロコシ畑

 

 

 

研究職員のプロフィール(研究歴、受賞歴等)

  • 博士(生物産業学)
  • 日本草地学会賞(令和2年3月)
  • 畜産研究功労者表彰(令和2年6月)

飼料作物の栽培方法だけではなく、飼料の利用方法、育種や放牧等広く担当。