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令和元年度小児慢性特定疾病自立支援フォーラム 開催報告

田中先生の講演とボッチャの写真

2020年2月11日、海老名市文化会館で、「小児慢性特定疾病自立支援フォーラム」を開催しました。

最初のプログラムは国立成育医療研究センターの医師、田中恭子先生の講演です。


講演: 医療における子どもの自律体験をばねに ~子ども自身のヘルスリテラシー~

国立成育医療研究センター 医師 田中 恭子 氏

 (こころの診療部 児童・思春期リエゾン診療科 診療部長)

今まで関わってきた子どもたちの様々な事例から「子どもの持つ力」の素晴らしさを紹介。

先生は子どもたちに、次の3つの約束を伝えます。

  • 自分を大事にして
  • 焦らないで
  • つらい気持ちは誰かに伝えて
それを前置きに、次のように語りました。

田中恭子先生 講演の様子

医療におけるトラウマとレジリエンス

トラウマには様々なものがあり、医療にもトラウマが伴います。
トラウマはつらいものですが、このくるしい『体験をばねにすること』が、将来を考える上で最も大事なこと、『レジリエンス(精神的な回復力)』につながります。

子どもがレジリエンスを持つために、「家族以外に相談できる窓口をたくさん持ち、子ども自身のリソースを増やす」ことが重要です。

また、トラウマは本人に限らず親やきょうだいにもあります。親が子どもの発達についての知識を持つことや、社会的支援の体制があること、育児への肯定的な捉え方ができることなどが養育レジリエンスとなり、育児に対する適応力につながります。

体験をばねにするためのケアと工夫

最近注目を浴びる「トラウマ・インフォームド・アプローチ」と呼ばれるケアがあります。トラウマとなる体験、つまり自分の病気を知ることは、時に痛みを伴うこともありますが、的確な情報を提示することで、その子なりに納得することができるようになります。治療や生き方を一緒に考え、最終的には子どもが意思決定することが大事だと言います。

子どもだけでなく、家族も様々な気持ちを抱えています。
親もあえてリラックスする時間を持つことは大切で、それが子どもの心的負担軽減にもなります。
また、きょうだい児も複雑な思いを抱えているので、その支援の大切さにも言及しました。

ライフステージに沿った支援

発達に応じた支援へのアドバイスもありました。
思春期はナイーブであるからこそ「変化が期待できる時期」です。思春期の子どもの自立・自律を支えるために、「子どもに正確な情報を伝え、一緒に考える」など、付き合い方のヒントを示しました。

保護者の方・支援者の方へのメッセージ

保護者の方に向けては、子どもが「知る」ことについての重要性を強く訴えました。知っていくというプロセスを共にすることが大事であり不可欠になります。
ポーランドの小児科医で、子どもの権利条約制定の中心となったヤヌシュ・コルチャック先生の言葉、『子どもにではなく、子どもと』というフレーズも紹介しました。

支援者の方に対しては、「人として対等であること」、「尊重の心を持つこと」、「専門家としての研鑽を積んでほしいこと」、「真剣に聴くこと」など、支援にあたっての心構えを伝え、「自分自身の心にも気を配り、よりよいケアにつなげて」と結んでいました。

    

次のプログラムは小児慢性特定疾病の当事者の方の体験談です。


体験談(1): 生まれてからこれまでのこと 

心疾患当事者の女性の体験談の様子

先天性心疾患当事者の女性

まず登壇したのは先天性心疾患のある22歳女性。現在は総合病院の事務職として勤務しています。

幼少期に何度も手術を受け、薬の副作用による脚の変形や難聴、Ⅰ型糖尿病を抱えるなど、病気との壮絶な闘いがありました。
精神的ないじめや治療による不登校を経験したこともありましたが、通信制高校で多様な仲間たちと出会い、「病気や自分の考えをはっきり伝えることの大事さ」を学んだと言います。

進学や就労支援に際しての理不尽な経験もしましたが、それは病気に対する理解の遅れであるということを、今回のような活動を通して伝えているそうです。


体験談(2): 小児がんを経験して 発症~40年経過

小児がんを発症してから40年経つ男性の体験談の様子

小児がんを経験した男性

続いて登壇したのは小児がん発症から40年になる男性。

左目網膜芽細胞腫で幼い頃に義眼となり、見た目のハンデに苦しみます。
母親を早くに亡くし、経済的な困難もありましたが、進学や就職をしていきました。しかし不運や就職氷河期が重なったこともあり、潰瘍性大腸炎やうつ病を経験。転々と職を変えることもありましたが、それでも一級建築士の資格を取得するなど、健常者と同じ土俵で戦う為に数多くの資格で武装してきたと言います。

病気と向き合い、就職や結婚に際しての偏見を乗り越えて、現在は地方自治体職員として勤務。2歳になる息子さんの成長をご夫婦で見守っています。

パネルディスカッション

登壇者3名にコーディネーターが加わり、パネルディスカッションを開催しました。

「何が心のバネとなったのか」という問いに、「病気でない自分を知らないので『これが私』という考え方」「自分自身にも負けたくない気持ち」と答える当事者のふたり。
田中先生は、周りが代弁することでもレジリエンスになり得ることを示唆し、「病気という多様性を理解してもらう為の社会的な活動や情報発信は、もっと医療側からも必要だと感じている」と話していました。

登壇者とコーディネーターが4名でステージ上にいる様子

パネルディスカッションの様子

ボッチャ体験会

ボッチャ体験会の様子

盛り上がったボッチャ体験会

1階のサロンでは自由にボッチャを体験するコーナーが設けられました。会場からは和やかな笑い声が聞こえてきます。

長時間ずっと体験会の会場にいてすっかりコツを掴んだ少年が、初挑戦のおとなや、車いす親子と対戦しています。
なかなかの頭脳戦。思わずおとなも熱くなって、本気度全開になりました。

パラリンピックの正式種目のボッチャ。東京オリンピック・パラリンピックを前に、老若男女問わず誰もが一緒に競い合えるこの競技の面白さが伝わってきました。

小児慢性特定疾病自立支援フォーラム 開催概要

 
日時 令和2年2月11日(火・祝)
場所 海老名市文化会館
内容 講演会/体験談/ボッチャ体験会/支援団体紹介
主催 神奈川県 福祉子どもみらい局 子どもみらい部 子ども家庭課
チラシ 小児慢性特定疾病自立支援フォーラム チラシ
公開:2020年3月
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