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医療を受ける患児・家族を支援
~チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)のご紹介~


石塚愛さんプロフィール写真
 

石塚 愛 (いしづか あい) さん


高校生の時にテレビ番組でチャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)の存在を知り、興味を持ちCLSを志す。

現在日本には、チャイルド・ライフ専門課程を有する教育機関がなく、CLS認定試験の受験資格を得るためには、北米の大学・大学院で学ぶ必要があることを知り、高校生の時に1年間米国に留学した。

日本の大学を卒業後、米国の大学院でCLSの資格認定に必要な指定科目を学び、600時間(2017年時点)のインターンシップを経験。現地の医療現場において、CLSに求められる知識、スキル、コミュニケーション力を即戦力となるレベルで着実に身に着け、CLSの資格を取得する。

帰国後、2018年から公立大学法人横浜市立大学附属病院において、CLSの業務に従事する。

CLSはどのようなお仕事なのでしょうか。

患児は病院という非日常的な環境の中で、医療体験によるストレスや不安など、様々な感情を抱くことがあります。
CLSは子どもの発達やストレスへの対処に関する専門知識を持ち、患児と家族が困難な出来事に直面した時に、ストレスや不安を軽減し、患児が本来持つ「乗り越える力」を発揮できるように支援する専門職です。患児にとって生活の中心である「遊び」を取り入れ、成長・発達を促すだけではなく、療養環境においてもその子らしく過ごせるように介入する役割を担っています。

患児に病気の説明をする石塚さんの写真

CLSは患児・ご家族に対してどのような支援を行っているのでしょうか。

【入院する患児への支援】

毎朝病棟に入ると、小児病棟に入院されている患児に挨拶して回ります。挨拶を交わす中で、個々の患児の様子をさりげなく把握します。何気ない雑談から患児の様々な情報やニーズを拾えることがあります。
ご家族の面会時にはCLSの関わりの中での患児の様子を伝えたり、気になることや心配事等ないか伺ったりしています。CLSとして患児・ご家族が気軽に話しかけることのできる存在でいたいと思っています。

一日の業務の流れとしては、まず出勤時に関わっている患児のカルテを確認し、検査・処置等の予定がある患児を中心に支援の予定を立てます。
その日の状況に応じて、これから検査・処置を行う予定の患児への事前説明や、苦手な検査・処置を頑張った患児のフォローを行ったりします。
また、気分転換に患児と一緒に院内を散歩したり、ベッドサイドやデイルームで遊んだりもします。
患児への関わり方はその時々で異なり、患児自身の持つ乗り越える力を引き出せるようサポートしています。

患児向けのイベントを実施する石塚さんの写真

【きょうだい児への支援】

患児のごきょうだいも患児のご病気や入院・治療に伴い、不安や心配・罪悪感など、様々な感情を抱くことがあります。
ごきょうだいに直接会える機会は少ないのですが、ご家族からお話を伺い、必要に応じて直接的・間接的な支援を提供しています。患児の病気についての説明資料を作り、ご両親または私から説明させていただいたり、クリスマスにはカードをお渡しして、病院にもお家にいるごきょうだいを応援している人がいることを伝えたりしています。

また、CLSを含めた多職種でごきょうだいの応援がしたいという思いから、看護師・病棟保育士と連携して「きょうだい通信」を制作しています。
病院の様子や、病院食ランキング、患児の医療に関わる職種の紹介など、様々な病院内の情報をお伝えしています。ごきょうだいが病院の様子を知る機会は少ないため、「きょうだい通信」を通して、ご家族の共通の話題を作れたらいいなと思っています。
この「きょうだい通信」は患児の病気や治療のことについて、ごきょうだいが思っていることを家族内で「お話して良いんだよ」というメッセージを込めて定期的に発行しています。
この「きょうだい通信」の制作には、病院だけでなく、本学の看護学生にも協力してもらっています。昨年は看護学生がコロナ禍で小児科病棟でのボランティア活動ができなくなってしまったため、ごきょうだい向けの「工作キット」の制作を依頼し、きょうだい通信チームより工作キットをお渡ししました。
ご両親からは、「きょうだいだけもらえるという特別感がとても良かったみたいです」「お兄ちゃんとゆっくり楽しい時間を過ごすことができました」、といったフィードバックをいただきました。
病院だけでなく、大学とも連携して、きょうだい児支援の輪を広げられたらいいなと思っています。

私がCLSとして患児を支援する中で一番大切にしていることは「患児を知ること」です。
その患児が好きなことはもちろん、ご本人の価値観を知ることが重要だと思っています。今受けている治療に対しての認識や気持ち、疑問に思っていること、今・これからどんなことをしたいかなど、その患児の様々な側面を知ることで、より良い支援に繋がると考えています。

また、受け身の経験が多い医療の中で、検査・処置においては、患児が自ら選択し、前向きに取り組むことが大事だと思っています。その経験を通じて、「できた」という成功体験を積み重ねて、自信をつけてほしいと思います。成功体験を通じて、生きていく上での自己肯定感を高めることがとても大切だと感じています。

支援を受けられた患児・ご家族との印象的なエピソードがありましたら教えてください。

Aくんと一緒に、MRI検査前の不安を解消するため、CLSが作成したシールラリーを使って「検査室探検ツアー」を行いました。Aくんはこの検査を乗り越える力があると思っていたのですが、「探検ツアー」を行うことで、Aくんが検査に前向きに取り組む気持ちになり、「探検ツアー楽しかった!鎮静なしでMRIがんばるよ」とAくん自身で決め、MRI検査を鎮静なしで受けることができました。Aくんの検査を乗り超える力を引き出すことができた、とても印象的な出来事でした。

私が入院中に支援を行ったBちゃんに「石塚さんみたいになりたい、CLSになりたい」と言われたことはとてもうれしかったのを覚えています。
この患児は入院期間が比較的短かかったため、支援する機会はそれほど多くはありませんでしたが、ご本人にとっては私と一緒に乗り越えた医療体験が印象に残っていたようです。
CLSの認定試験前のインターンシップにおいて、限られた時間の中で支援過程を展開する訓練を重ねたことが、実務に活かせているのだと思います。
インターンシップで学んだことがとても役立っているので、インターンシップ先でお世話になった方には本当に感謝しています。

現在病気と向き合っている当事者の方へ石塚さんからの応援メッセージ

入院中、経過観察中、通院中など、様々な状況の方がいらっしゃると思います。
病気と向き合う中で、喜怒哀楽含め様々な感情を抱くことがあると思います。どの感情もご自身のとても大事な気持ちであることに変わりはありません。時には“こんな気持ちをもつなんて”と思う時もあるかもしれませんが、心と身体が発信している大事なサインに耳を傾け、必要な時は周りの力を借りながら上手にケアしてあげてください。
周りには味方になってくれる人・応援してくれる人・一緒に考えてくれる人が必ずいるので、遠慮なく声を掛けてほしいです。
私自身もCLSとして、今そしてこれから関わる子どもたちがその子らしく輝き、ひとつひとつのチャレンジを乗り越えていけるよう縁の下の力持ちとして一緒に伴走していきたいと思っています。

工作キット(プラネタリウム)と工作キットを届ける看護学生の写真
公立大学法人 横浜市立大学附属病院(別ウィンドウが開きます)

公立大学法人 横浜市立大学附属病院

病院のホームページ:https://www.yokohama-cu.ac.jp/fukuhp/

チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)のご案内:
https://www.yokohama-cu.ac.jp/fukuhp/patient/consult/20220111CLSintro.html

公開:2022年11月
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