かながわなでしこファーマーズ

女性農業者のための経営参画支援セミナー 令和元年度 かながわなでしこfarmers’ caféレポート

女性農業者のための経営参画支援セミナー
令和元年度 かながわなでしこfarmers’ caféレポート

参加者
県内に在住・就農する女性農業者が参加しました。

農業で活躍する場を広げたい、自分の力を農業経営にもっと役立てたいといった女性農業者を対象にした全3回のセミナー。実際に活躍している女性農業者の事例紹介をはじめ、マーケティングや財務管理の心得、5年後までの経営参画プランの作成演習などを通して、経営的な視点から農業を学びました。

先輩女性農業者から経営マインド学ぶ(10月29日)

セミナーは全3回の日程で行われ、参加者は経営参画を目指すうえで役立つ実務的なノウハウを学習。初回は、実際に活躍する先輩女性農業経営者の事例紹介を通して、参加者自身がそれぞれの経営マインドを持って農業に取り組むための心構えなどを学びました。

先輩女性農業者から経営マインド学ぶ(10月29日)

マーケティングの肝は「価値の物差し」を理解すること(11月13日)

2日目は、株式会社津々浦々の小林真由子さんを講師に招き、マーケティングの手法などを知ることで農産物の販売・規模拡大を目指すヒントについて理解を深めました。

小林さんは、マーケットがどのような形で動いているのかを広告業界で働いてきた自身の経験を踏まえながら解説。誰もが知るヘアケア製品や野菜飲料、ファッション通販サイトなどの例を挙げながら、ブランドイメージの訴求やシェア争い、時代とともに変化するトレンドをとらえた経営判断など、マーケティングに求められる要素について説明しました。また、フリマアプリでどんぐりやアイスクリームの棒にまで買い手がつくことに触れ、「現代では物の価値だけでなく、その背景にあるストーリーや買い物の楽しみ方など、『価値の物差し』が多様化している」と分析。「マーケティングに対して難しいと思ったりアレルギーがあったりする人も、自分の身近なものについて目線を変えて考えることで、マーケティング力を鍛えてみてください」と話していました。

マーケティングの肝は「価値の物差し」を理解すること(11月13日)

自分たちの強みを考える

座学の後は、農作物の具体的な販売計画についてグループワークで学びました。「都内のフレンチシェフ」や「近所の直売所の常連さん」などの想定顧客を設定し、自分たちの強みは何かを考えながら、売り上げアップにつながるような方策を話し合いました。

直売所の常連に対する販売計画について話し合ったグループからは、「直売所の強みは新鮮なものが揃い、作った人の顔が見えること」「栽培方法が見える安心感がある」「スーパーの方が安い商品のもあるが、価格は高くても鮮度が良くて野菜自体の価値があるとお客さんが評価してくれる」といった意見が。さらに、「にんじんやじゃがいも、たまねぎを並べてカレーセットにして売ったらどうか」「サラダに向いた葉物を揃え、ドレッシングなども一緒に売ってみては」「直売所に入りづらいと感じている人に向け、看板などで今日採れた野菜や売り切れの野菜などを書いてあげれば親しみが湧くのでは」といった意見も飛び交いました。

自分たちの強みを考える

小林さんは、「漠然とした要望や思いをひとつひとつ掘り下げ、考えていくことがマーケティングには必要不可欠です。最終的には物を売ることが目標ですが、そのために必要なことを分解して考えることが大切。商品を知ってもらうにはどうしたらよいか。そのための効率的な告知やPRの手法を考えるようにしてください」と総括していました。

自分たちの強みを考える

財務管理の基本をレクチャー

後半は、経営に欠かせない財務管理についてセミナーが行われ、食と農研究所の加藤寛昭代表が「女性農業者が心掛けること」をテーマに講演しました。

加藤さんは、収入がどれだけあるのかを計算し、それに見合う支出計画を立てるという財務管理の基本をもとに、「原価管理を徹底し、売上志向から利益志向へと意識を転換することが重要です」と話します。家族労働が主体となることが多い農業の世界では、農業に関わるお金と普段の生活で使うお金を同じ通帳で管理しているケースもあるといい、「通帳は別々にして管理しなければ、いくら儲けたかが分からなくなってしまう」と述べ、財務管理に対する意識改革を参加者に呼びかけました。

「青果物を消費者・マーケットにPRしよう」

人件費の概念や領収書の整理といった基本的な事柄についても理解を深めることが重要という加藤さんは、「財務管理は経営者にとって欠かせない仕事のひとつです。皆さんは趣味ではなく、事業として農業をしている。つまり、そこから利益を生み出さなくてはなりません。その視点を頭に入れておけば、費用のかけ方などに気づきがあると思いますよ」と話しました。

最後は、メジャーリーガーの大谷翔平選手も学生時代に実践したという、目標達成シートを作成するワークショップを実施。それぞれが農業経営上の戦略目標を立て、目標達成のための戦術(手段)を連想していきました。

第2部 「たかがPOP されどPOP」手描きポップセミナー 鐵倉れい子アドバイザー

5年後見据え、経営参画プラン作成(11月27日)

セミナー最終日には、経営参画プランを作成する演習を行いました。有限会社河野経営研究所の河野律子さんを講師に迎え、これまでの研修を踏まえながら5年後までの経営参画を目指した計画を作成。一人一人が具体的な目標を立て、具体的な展望をイメージしながら取り組んでいました。

経営参画プランが完成すると、参加者の前でプレゼンテーションを実施。現状から5年後までを順序立てて考えたプランはどれも力作ぞろいで、河野さんの講評には参加者全員が真剣な表情で耳を傾けていました。

すべてのセミナーが終了して参加者に修了書が手渡されると、皆さん充実感をにじませながら笑顔で集合写真に収まりました。

5年後見据え、経営参画プラン作成(11月27日)