かながわなでしこファーマーズ

女性の視点を入れれば農業は伸びる かながわ農業委員会女性協議会研修会

女性の視点を入れれば農業は伸びる
かながわ農業委員会女性協議会研修会

参加者
かながわ農業委員会女性協議会メンバー13人、かながわなでしこfarmers3人

かながわ農業委員会女性協議会研修会が2月18日にシルクセンター(横浜市)で行われ、午前は「かながわなでしこfarmers研修」から3人が参加し各事例を紹介、午後は研修会として「現在の農業の課題」について女性目線で議論しました。

農業委員会になでしこ3人登場

かながわ農業委員会女性協議会は、農地利用の最適化に取り組む委員会に関連する制度や課題について研修・研究しています。

この日は、研修会として、女性が農業で活躍をするために必要な支援について話し合いました。

その際、実際に当事者の話を伺うために、神奈川県が3年前から実施している「かながわなでしこfarmers研修」の受講生から3人が参加。松本こずえさんは、実家の農業を継いだ後継者就農、和泉奈美恵さんは農外からの新規就農、石渡礼奈さんは結婚を機に就農と、それぞれ異なる境遇を話しました。

農業委員会になでしこ3人登場

「農業楽しんでいますか?」

後継者就農だった松本さんは、会社員として働いていましたが、子どもの頃から遊んでいた畑で仕事をすることを目指し、就農しました。就農に当たって偏見はなかったと言い、「親から『農業は大変だから』と聞かされていましたが、今でもこんなに楽しい仕事をできてよかったと思っています」と振り返ります。また、生産野菜を彩りが多いものを選ぶことで、直売所に並んだ際に地元飲食店のシェフやオーナーに選んでもらえるようにしているといいます。松本さんは、「直売所にはどんな人が来るか分かりません。なるべく多くの人に声を掛けるようにすることで、お客さまのニーズや他店と差別化できるような工夫をしています」と戦略を話していました。

「農業楽しんでいますか?」

農業通して子どもの成長見守る

専業主婦から一転、夫と新規就農をした和泉奈美恵さんは、「夫がやってみたいと言ったことと、子どもと一緒の時間を過ごしたいと思ったとき、農業は最適だと思った」とにっこり。畑を借りるところからの、まさにゼロからのスタートでしたが、今では露地野菜などを手掛け、7ヘクタールの広さに。市内スーパーや地域の祭りなどにも出店しています。和泉さんのお子さんは今年、高校を卒業。それに合わせて家族の野菜や加工品を販売する会社を起業する予定だとか。「くじけそうなこともあるが、毎日がんばっていきたい」と笑顔をみせていました。

農業通して子どもの成長見守る

安定経営めざし視野広く

農業を営む夫との結婚を機に、24歳で就農した石渡さんは、経理の視点で農業と関わってきました。手掛ける大根やキャベツなどの価格が、日によって相場が変わる中で、現在は、安定した経営を目指して、三越銀座日本橋本店などにブランド野菜の販路拡大に向けて試行錯誤しています。「いろんな人と出会う場所づくりに積極的に関わるようになることで、自作の農作物の魅力発信法や、インターネット事業に強い人との出会いがありました」と石渡さん。これからは、三浦の景色と野菜を楽しめる農業レストランをしたい、と展望を語っていました。

女性協議会のメンバーからは、「ブランド野菜は高いが、販路拡大に向け、何に取り組んできたか」など質問が飛ぶと、石渡さんは「自分は台湾などにも視察に行ったことがありますが、日本の野菜はおいしいことを実感しました。海外での需要も見込んだ上での展開もありえます」と持論を述べていました。

安定経営めざし視野広く

第2部 女性の視点でディスカッション

午後の部は、女性協議会のメンバーが、ディスカッションに臨みました。「MFA方式」と呼ばれる手法で、参加者同士がフラットな関係の中、自由に意見を出し合い、課題認識を共有していくものです。

女性の視点でディスカッション

まずはA班とB班の各5人に分かれて、テーマは定めず、メンバーが自由に農業についての考えを出し合いました。ある参加者は、耕作放棄地が増えたことに伴う鳥獣害の増加について語り、また、ある参加者は、自身が手掛ける野菜の魅力などについて話していました。

この中で出た意見は、ファシリテーターがポストイットに書き起こし、随時、模造紙に貼り出されました。こうすることで議論が進み、誰もが意見を言いやすい環境が生まれていくといいます。また、この中から意見を集約し、最後は各班の意見を発表し合いました。

女性の視点でディスカッション

いざ発表 農作物PRと経営の課題を共有

和気あいあいと議論を交わしていたA班の発表では、農作物のPRについてと、後継者問題についてが、班の意見として掲出されました。特に農作物のPRに関しては、形が悪かったり、虫が少し食べていたりした農作物であっても、安心安全な農作物を農家は提供しており、そのことを学校教育のみならず、自分たちが家庭の中で教えていかなければならないと話しました。発表者は、「私たちがキラキラ輝く素敵な農業者になっていこう」と締めくくっていました。

女性の視点でディスカッション

また広範な議論を交わしていたB班では、「経営」をテーマに、女性の後継者を増やすために必要な支援策や、経営者として直売所や農地の運営に関する研修会の提案などを発表しました。特に女性後継者については、女性協議会メンバーが持つ地域のネットワークを生かして勧誘を行ったり、高校生に対して出前授業で女性農業者の成功例をPRするなどの手法を提案していました。また、農作物のPRのためには、商品の魅力をより生活者目線で伝えることのできる女性の方がよいのではないかと発表しました。

女性協議会の榎田会長は、「実際に農業に携わることの多い女性だからこその声がよく出ていてよかった。なでしこfarmers研修の受講生もそうだし、それより後の世代にも、神奈川の農業について知ってもらえたら」と話していました。

女性の視点でディスカッション