きっかけは病院からの声かけ!マルシェ開催という新たな挑戦
「えびなでしこ」の原点は、メンバーの三部孝子さんが2人の先輩農家と共に立ち上げたグループ「VEGETABLE PIECE(ベジタブルピース)」でした。ベジタブルピースがあるイベントに出店していた際、同じく出展者だった海老名総合病院の広報担当者がブースを訪れました。そこで「病院でもマルシェをやってみたいんです。協力してくれませんか」という、思いがけない提案を受けたのです。
「病院には健康になりたいと願う人たちが多く集まるし、健康づくりには野菜は欠かせない。私たちと強い親和性があると感じました」と三部さんは振り返ります。しかし、3人だけでは人手が足りず、定期的な開催は難しい。この新たな挑戦には、より多くの仲間が必要でした。
集まれ!海老名の女性農業者「えびなでしこ」誕生
人手が足りないという課題に直面した三部さんらが仲間として着目したのが、「かながわ なでしこfarmers」の受講生たちでした。三部さんは、「『かながわなでしこfarmers』の研修に参加する人は、学びへの意欲が高く、成長したいという強い想いを持っています。そんな仲間と一緒なら、きっと楽しく、うまくいくはず、という確信がありました」と話します。
研修の受講年度はメンバーそれぞれで異なり、直接の面識がない人も少なくありませんでした。三部さんらは、知り合いを通じて海老名近郊を拠点とする受講生に声をかけていったところ、その想いに共感した仲間が次々と集結。こうして、現在の8人からなる「えびなでしこ」が誕生しました。
結成後、2024年12月に行ったプレイベントは大盛況。以降、「農産物WAKUWAKUマルシェ」として定着し、毎月第2水曜日に海老名総合病院で開催しています。「代表を置かず、全員が主役」というフラットな関係性を大切にしており、メンバーのアイデアが詰まったオリジナルののぼり旗は、まさにグループの象徴。海老名市のイメージキャラクター「えび~にゃ」のイラストには大きなカゴ皿にメンバーの育てる野菜が並んでいます。三部さんは「想いに共感して集まった『えびなでしこ』は、まるでアベンジャーズみたい。一人一人が持つ得意なことを持ち寄り、補い合っているんです」と白い歯をのぞかせます。
会話が生まれるマルシェ、健康への意識がつなぐ輪
病院でのマルシェは、他の直売所やイベントよりも来場者の反応が良いと言います。事実、取材した当日は午前10時30分から午後1時までの開店時間中、ひっきりなしにお客さんが訪れていました。
その理由は、来場者の健康への意識の高さにあります。「これはどうやって食べるの?」「この野菜は体にどう良いの?」といった質問が自然と飛び交い、作り手と買い手の間で会話が弾みます。単なる野菜の売買を超えた、食と健康に関するコミュニケーションの場となっています。
また、来場者の約半数は病院職員で、中には休憩中に訪れたという医師の姿もありました。新鮮なだけでなく、作り手の顔が見える野菜は、日々の健康を支える上で大きな安心感につながっています。「薬ではなく、食べ物で元気になってほしい」。その想いが、マルシェを訪れる人々と「えびなでしこ」の間で確かに共有されているのです。
個性豊かなメンバーが支えるチーム力
「えびなでしこ」には、特定のリーダーが存在しません。「誰かに頼るのではなく、一人一人が主役であってほしい」という想いが、グループの運営方針に反映されています。広報担当として場を盛り上げる三部さん、味噌や漬物などの加工品作りを得意とする飯島さん、病院との連携窓口を務める鴨志田さん、そして「みんなが頑張っているから私も頑張れる」と仲間との繋がりを力に変える山口さん。メンバーは皆、対等な立場で意見を出し合い、互いを尊重しながら活動を進めています。
普段は個々の畑で作業することが多い農業者にとって、月に一度のマルシェは、仲間と励まし合い、刺激を与え合う貴重な時間となっています。
海老名の魅力を、もっと広く、もっと多くの人へ
「えびなでしこ」の今後の目標は、活動の場をさらに広げ、海老名の農業の魅力をより多くの人に伝えていくことです。
「海老名市内には魅力的な企業がたくさんあります。こうした企業と連携して、新しいイベントを企画してみたい」と、三部さんは未来への展望を語ります。
小さなグループから始まり、「かながわなでしこfarmers」という共通経験から広がった輪は、彼女たちの新鮮な野菜と明るい笑顔とともに、着実に健康と元気の輪として地域に広がっています。



