更新日:2023年5月29日

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子ども食堂をはじめるには

子ども食堂 はじめ方 手引き

子ども食堂をはじめるには

<筆者プロフィール>

プロフィール写真(米田さん)

米田 佐知子 (よねだ さちこ)氏

子どもの未来サポートオフィス 代表

神奈川こども食堂・地域食堂ネットワーク世話人

関東学院大学 非常勤講師

東京家政大学 非常勤講師

居場所をつくる意味

資料1(米田さん)

 

現代の子どもは家と学校が中心の生活で、自分を評価しない大人と過ごす時間や多様な生き様に触れる機会が減っている。神奈川県教育委員会の調査によると、放課後に親や先生以外の大人と過ごす小学生は1割程度だった。子どもの貧困は、経済的なものだけでなく、関係性や体験も貧しくなっている。困った事が起こった時も、子どもが信頼して話せる相手は少なく、カウンセラー等の専門家に出会うことになる。居場所活動は、こうした不足の補完を「結果的に」果たし、予防的な機能を持つことがある。活動の対象は、困っている子どもだけでなく全ての子どもとなる。
居場所とは、必ずしも空間や時間でなく、子どもが安心して居られる状態を指す。まちで挨拶するだけの顔見知りとの関係も、時に居場所となる。子どもの生活圏に、形態も規模も雰囲気も異なる居場所が選べるほどある状況が理想だ。現代は大人も、人のつながりが薄い。居場所活動は、子どもを気にかける大人が出会い、チームをつくる機会ともなっている。

居場所活動づくりのプロセス

資料2(米田さん)

 

活動のきっかけは、1人の子どもの存在だったというケースは多い。地域の子どもが、どこでどのように過ごしているかなど、様子にまず関心を向けたい。活動の場所や時間、内容を大人の都合だけで始めると、子どもにとっては参加しにくい場合がある。子ども関連の活動にボランティア参加などすると、子どもの状況が少しつかめてくる。
つながりを生む居場所活動には、できるだけ多くの関与や協力が欲しい。地域のキーパーソンに相談するなど、立ち上げ過程をオープンにし「身近に」感じてくれる応援団をつくろう。他の活動団体情報や、仲間探し、キーパーソンと知り合うためには、市民活動の支援センターや社会福祉協議会などの機関に相談したり、子どもに関する学習会に参加するといいだろう。
個人で進めればスタートは早いようだが、継続性や後述する助成金申請などを考えると、早目に組織化したい。団体(グループ)で、子どもの居場所に関する学習会を主催したり、先行活動の見学など、情報や学びを共有し仲間を増やす。活動の根幹の考え方が一定共有できたら、活動に必要な協力を募り、試行を繰り返して子どもの意見を聞こう。最初は内容や運営に余白を残しておきたい。一緒につくっていく過程こそが関係性を育み、活動を居場所とする。

活動に必要な資源(ひと・もの・資金)

資料3(米田さん)

 

居場所活動の肝は、どんな雰囲気の人がどう運営するかが核だが、活動には、ひと(運営者)、もの(場所・備品)、資金などの資源が必要となる。できるだけ資金を使わず持ち寄って、協力者・関係者を増やすきっかけにしたい。
どうしても資金でないと解決しないものは、何にいくら必要で、その金額があればどうなるかを整理することから、資金調達は始まる。依頼や申請を準備する中で、活動の目的や計画を整理する機会にもなる。内容に応じて、寄付金依頼や補助金・助成金申請を検討する。助成金申請する場合も、募集要項に活動を合わせるのでなく、つくりたい活動にマッチする助成金を探したい。
寄付金は、団体や関係者の身近なところから呼びかける方が、説明し理解を得る事項が少ない。初めて寄付依頼するのは少し勇気が必要だが、活動へ参加するためのひとつの方法と考えよう。寄付金の場合は、御礼と同時に公表の可否を確認しておきたい。支援者(団体)名の公表は、立ち上げたばかりの団体の信頼性を向上させる。

活動する上で気を付けたいこと

食事提供する活動は、食中毒に十分留意したい。現在、居場所活動での食事提供に届け出制度はないが、福祉的な食事提供に登録の仕組みを持っている自治体もある。地元の保健所へは相談し衛生面の注意事項を確認することが望ましい。食物アレルギー対応は、団体によって対応が様々だが、対応できない場合は、広報チラシに明記しておく必要がある。
ボランティアや活動参加者のケガや食中毒、主催団体が賠償責任を負った場合に備えて、保険に加入しておくとよい。社会福祉協議会で受付しているボランティア行事保険や民間の保険会社に加入している団体もある。無償の活動であれば、自治体が市民活動支援として、ボランティア活動保険を用意している場合もある。事前に確認しておこう。また、コロナ禍の中で行う活動は、感染リスクがある。検温や消毒などの対策は十分に行いたい。
最後に、活動を居場所と考えるかどうかは子どもが決める、ということを忘れずにいたい。活動は、大人も含め参加者同士が出会う機会づくりだと捉え、子どもに対して「やってあげている」と考えないことだ。

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