第24回「黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川」開催結果

掲載日:2019年3月4日

概要

第24回開催画像

テーマ

子どもみらいをスマイル100歳に!

第2弾:子どもたちに伝えたい!生涯を通じたスポーツ習慣

日時 平成30年9月5日(水曜) 18時30分から20時
会場 神奈川県庁本庁舎3階大会議場
参加者数 110名

※参加者配布資料はこちらからダウンロードできます。
1 次第
2 事例発表資料 萩 裕美子氏

実施結果(動画版)

実施結果(テキスト版)

  1. 知事のあいさつ/ゲスト・プレゼンテーション
  2. 意見交換

 

1 知事のあいさつ/ゲスト・プレゼンテーション

司会

 皆様こんばんは。本日はお忙しい中、当会場にお越しいただきまして誠にありがとうございます。ただ今から、第24回黒岩知事との対話の広場Live神奈川を開催いたします。
 本日は知事の挨拶、ゲストのプレゼンテーションに続き、会場の皆様との意見交換を進めてまいります。まず、本日のゲストをご紹介いたします。

 東海大学大学院体育学研究科長の萩裕美子様です。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、日本体育大学学長・神奈川県参与の具志堅幸司様です。どうぞよろしくお願いいたします。

 なお、本日はライブ中継とともにツイッターによる会場以外からのご意見も受け付けております。意見交換の中でご紹介させていただくこともございます。
 インターネット中継をご覧の皆様にご案内申し上げます。この中継をご覧いただきながらツイッターでご意見を投稿できますので、是非お寄せください。

 ここで、皆様にお伝えしたいことがございます。
 神奈川県では津久井やまゆり園事件の後に策定した、「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念を広めるため、様々な工夫を凝らし、幅広い世代の多くの方々に、ともに生きることの共感を広げるようなイベントとして「みんなあつまれ」を平塚市総合公園など、県内4か所で開催いたします。
 それではここで、「ともに生きる社会かながわ憲章」を読み上げます。ともに生きる社会かながわ憲章

ともに生きる社会かながわ憲章

 一 私たちは、あたたかい心をもって、すべての人のいのちを大切にします

 一 私たちは、誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を実現します

 一 私たちは、障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除します
一 私たちは、この憲章の実現に向けて、県民総ぐるみで取り組みます
平成28年10月14日神奈川県

 以上でございます。
 それではお待たせいたしました。黒岩知事からご挨拶を申し上げます。

知事

 こんばんは。ようこそ神奈川県庁に来ていただきました。ありがとうございます。県民との対話の広場は、私が知事になってから継続してやっています。その時々のテーマを掲げながら、皆さんと率直に対話を続けているということであります。その中で、ここで良いお話や良い提案があったら、早速やってみようということで、すぐに実現もいたしますので、どんどん前向きな提案をしていただきたいと思います。まずは、今日、皆さんとともに語り合いたいテーマについて、私の方からご説明をしたいと思います。スマイル100歳に

 今年の年間テーマは、「子どもみらいをスマイル100歳に!」です。もう人生100歳時代ですね。2年前のお正月に、これからは人生100歳時代だ、100歳時代の設計図を皆さん描いていきましょうと申し上げました。その時は、人生100歳時代をテーマに、1年間通していろいろ話をしてまいりました。そのような中で、100歳時代にどんな100歳を目指していくのかを考えていったとき、子どもの問題が非常に重大になってきています。
 私が知事になり7年半たちましたが、子どもが話題になることが、多くなっている感じがします。子どもの貧困問題は、私が知事になった当時は、あまり耳にしなかった言葉です。それがもう切実な問題となっていて、子どもに焦点を当てて、いろいろなことを考えなければいけないということになり、今年度「福祉子どもみらい局」という新しい局まで作りました。100歳時代、子どものみらいがずっとスマイルでいられるような、そんな100歳時代を目指していきたいと考えて、今年のお正月は、「子どもみらいをスマイル100歳に!」というテーマを掲げました。今年は1年間、この対話の広場ではこれを共通のテーマに、いろいろな形で行っていきます。
いのち輝くマグネット神奈川 私は、知事になった時からずっと、「いのち輝く神奈川」と言ってきました。「いのち輝く」、これが何よりも一番大事なことだと、私は思っています。いのち輝くためには何が大事ですか、と言った時に、医療が大事、でも医療が充実しているだけで、いのちが輝きますか、ということです。例えば、食が豊富でなければ、食べるものがないような状態であれば、いのちは輝かないです。また、食の安全や安心が確保されていないと、やはり、いのちは輝かないです。食を支えるのは農業です。農業もしっかりしないと、いのちは輝かないし、エネルギーや環境、労働、産業、まちづくり、教育、共生、全部がリンクしていないと、いのちは輝かないのです。だから、一つひとつのことをやっていくだけではなく、全部がつながっているというイメージの中で、行政を進めていかなければいけないと繰返し言っています。SDGs
 すると、国際連合がこのようなことを言い始めました。SDGs(エスディージーズ)。この言葉を覚えて帰ってください。ちょっと難しいですが、「Sustainable Development Goals」、持続可能な開発目標として、17の目標が並んでいます。
 持続可能な開発目標とはどういうことか。地球は今のままでは持続可能ではなくなるということです。大変ですね。今のままでは、地球、人類は崩壊するということです。では、そうならないために何をするべきか、ということで17の目標を掲げました。例えば、貧困をなくそう、飢餓をゼロに、すべての人に健康と福祉を、質の高い教育をみんなに、エネルギー、経済成長、技術革新、海の豊かさ、陸の豊かさ。「いのち輝く」で言ったこととSDGsは、実は同じです。
 このSDGsは、今、こういったものをしっかりやっていこうということで、我々はSDGsの担当理事を設けて、SDGs最先端の県を目指していこうと努力しているところです。
 そうしたら、最近ちょっと嬉しいニュースがありました。全国の自治体の中で、SDGs未来都市、そして自治体SDGsモデル事業に先進的に取り組んでいる10の自治体が選ばれたのですが、その中で神奈川県は、都道府県として唯一選ばれたのです。
 神奈川県だけではなく、神奈川県の横浜市と鎌倉市も選ばれました。現在、ぐんぐん進めていこうとしているところです。
 例えば、具体的に言いますと、クジラの赤ちゃんが鎌倉の海岸に打ち上げられました。クジラのお腹を開けてみたらびっくりしたことにビニールが出てきました。つまり、皆さんが使って、何気なくポイ捨てしたビニールが、実はクジラの赤ちゃんのお腹の中に入っていた。正に、全部つながっているということです。それで、クジラの赤ちゃんがあんなところで死んでしまったわけです。
 昨日、記者会見で、神奈川県は宣言をいたしました。プラスチックのごみをゼロにしよう、と「かながわプラごみゼロ宣言」をしました。こういったことが、SDGsということです。そういう言葉がなければ、また、いのちが輝かないということでもあります。笑い

 何を我々は目指しているのかと言ったときに、「笑い」、笑いがあふれる社会を目指しているのだ、と思います。100歳になってもみんなが笑っている。1人で笑っている人はあまりいないです。1人が笑っていると、笑いは広がっていきます。これが大事。笑いはゴールであるとともに手段でもある。笑うとみんなでどんどん笑う社会が広がっていくだろう、ということです。スマイル100歳

 子どもたちが100歳までスマイル、笑顔で過ごせる持続可能な社会を目指していく、という中で、いろいろな政策を3つの柱にまとめてみました。今健康でスマイル100歳日は、「健康」でスマイル100歳。

 

 

 

 その中で、今日のテーマは、「生涯スポーツ社会の実現」ということです。
 生涯スポーツ社会の実現、誰もがいつでもどこでもいつまでもスポーツに親しむ、これが大事だということです。

ライフステージに応じたスポーツ活動

生涯スポーツ社会の実現のための基本目標 ライフステージに応じたスポーツ活動としては、乳幼児期のスポーツ、児童・青年期、成人期、円熟期と、あらゆる世代においてそれぞれ少しずつ変わってきますが、スポーツに親しむやり方はいくらでもあります。これを考えていきましょうということです。
子どもの遊び・運動推進事業

 

 「子どもの遊び・運動推進事業」というものがあります。最近の子どもたちには、基礎的運動能力がない子が結構たくさんいるそうです。どういうことかと言うと、しゃがむことができないのです。最初は信じられなかったのですが、しゃがむと後ろに転んでしまう、背伸びができない、そのような子がたくさんいるというのです。

 

 


子どもを対象にしたスポーツ体験教室 これは子どもの時から、いろいろな運動を進めていかなければならないということで、神奈川県は、子どもを対象にしたスポーツ体験教室なども、いろいろな形で行っています。やってはいるのですが、本当に恥ずかしい限りですが、中学生、小学生の基礎的運動能力は、全国のランキングを見ると、神奈川県は目も当てられないほど下の方なのです。
 何とかしていかないと、将来この子たちが大きくなって、100歳まで生きた時に、ずっといのち輝く、笑顔でいられる社会は作れない。だから、全世代でのスポーツに目を向けて、皆さんとともに、どうすればみんながスポーツに親しんでいけるのか、そのことによって健康になり、笑顔があふれる自分の人生を作っていけるのか、そういうことを皆さんとともにお話をしましょう、というのが今日のテーマです。お二人のゲストからお話をいただいて、その後、皆さんとのトークを広げていきたいと思います。今日は、ネット中継もやっていますから、ツイッターで、どんどんご意見をお寄せいただき、議論していきたいと思います。それでは最後までお付き合い、よろしくお願いします。ありがとうございました。

司会

 黒岩知事、ありがとうございました。続きまして、ゲストのお二人にプレゼンテーションをしていただきます。初めに、東海大学大学院体育学研究科長の萩裕美子様、お願いいたします。
 萩様は、2009年から東海大学教授として、生活習慣病予防のための健康づくりプログラムの評価や、生涯スポーツイベント参加者の運動継続に関する研究を行っていらっしゃいます。それでは萩様、よろしくお願いいたします。

萩 裕美子氏(東海大学大学院体育学研究科長)

 皆さんこんばんは。東海大学の萩と申します。今日は、子どもとスポーツ習慣をテーマにこれからディスカッションをするということですので、そのディスカッションに少しお役に立てるかな、と思う内容を発表させていただきます。お手元に資料がありますが、たくさんなので、時間短縮のために、少しスキップする部分もあるかもしれません。前のスクリーンをご覧いただきながら、話を聞いていただければと思います。
 まず、子どものスポーツ環境というものが、今どういう状況になっているのかという話をします。

1週間の総労働時間(小学校5年生) これが小学校5年生、中学校2年生、これは毎年、スポーツ庁が調査をしている結果です。ちょっと心配なのは、身体活動、体を動かしている時間が、1週間の合計で60分未満という小学生がこんなにたくさんいるということです。小学生はまだ動いているのですけれども、中学生になりますと、なんと、全く動いていないという子の割合が、女子だと19.4%、男子でも6.5%ということです。(中学校2年生の)山を見ていただくと、2つの山があります。これを二極化と言います。
 先ほど知事とも話をしましたが、神奈川県はトップアスリートも非常にたくさんいて、野球なども大変強い。そういう子たちは、きっとこちら(1週間の総運動時間が多い山)なのです。一方で、全体を押し並べてみると、どうしてもこちら(1週間の総運動時間が少ない山)の子たちの体力が非常に低いものですから、1週間の総運動時間(中学校2年生)全体を平均でみると、神奈川県は下の方になる。特に私の専門分野は、運動時間の多い子どもをどうするかということではなく、少ない子どもたちをどうするか、ということを中心に考えていかなければならないということで、日々研究しています。

三間の喪失 では、子どもたちがどうして体を動かさなくなったのかということでよく言われるのが、三間の喪失です。時間がない、場所・空間がない、それと一緒にやる仲間がいない。この三間が、どうも今の子どもたちには失われているのではないかと言われています。

子どもたちはどこで体を動かすのだろう ちょっと昔と今とを比べてみますと、多分、昔、子どもたちは、私が小さい頃もそうでしたが、学校だったり、家庭だったり、地域だったり、割とまんべんなくどこででも体を動かしていたと思います。ところが、今の子どもたちはどうか、とみると、多分、家庭でも家の中にこもってしまったり、地域で何かしたくても、広場がなかったりお友達がいなかったり、非常にここ(家庭と地域)が小さくなっています。結局、子どもたちが体を動かす場はどこだろうというと、子どもたちにとっては、学校という場が一番大きくなっています。すると、学校の体育の授業や、休み時間に遊ぶ、あるいはクラブ活動に入ることが、子どもたちの身体活動に大きな影響を及ぼしているということが分かります。できれば、運動部活動を積極的にやったり、あるいはスポーツ少年団に入ったり、総合型スポーツクラブや地域のクラブに入っていると、(運動することが)少しは増えるわけですが、こういうところに参画してこない子どもたちは、運動しなくなる、あるいはスポーツをする機会が減っているというのが現状です。
子どものスポーツ習慣形成のために こういう現状を踏まえ、私たちがどうしていかなければならないか、ということを一緒に考えていけたら良いと思います。例えば時間で言うと、放課後あるいは下校後、土曜日・日曜日。体を動かす場としては、公園、学校、空き地などいろいろありますが、どんなに時間がなくても、どんなに場所がなくても、おそらく、すごく楽しかったり、仲間と一緒に何かやることがとても楽しかったり、何かやったらご褒美がもらえたりすると、きっと、やると思うのです。こういうところもきちんと作っていかないと、子どもたちは、なかなかスポーツをしようとしないのではないかと思います。それともう1つは、昔は、みんな部活に入らなければいけない、あるいはクラブ活動に入らなければいけない、という社会的な雰囲気がありましたが、今は、組織の中に入りたくない、クラブの中でまとまってやりたくないと、自分は好きにやりたいのだ、もっと自由にやりたいんだという子たちも多いわけです。こういう子たちにどうやって対応していくか、ということも一緒に考えていかなければなりません。私には息子が1人いますが、正にこの典型で、スポーツは決して嫌いではない、体を動かすことも嫌いではないけれども、組織の中に縛られるのが嫌なタイプです。ですから、決して運動能力が低いわけではないのですが、中学校、高校で、体育系のクラブに入ることは、結局しませんでした。そういう子どもたちもいるということを、もう少し知らないといけないと思っています。結局、楽しくなければ誰もやりませんので。では、楽しさとは何か、ということを考えていきたいと思います。楽しさとは何か(フロー理論)

 これは楽しさを考える上でよく出てくる、チクセントミハイさんという人が、「楽しむということ」という著書の中で書いているフロー理論と呼ばれるものです。これは何を意味しているかと言うと、横軸がその人が持っている能力です。縦軸が、与えられる課題です。つまり、与えられた課題が自分の持っている能力と合致した時に、「フロー」、とても楽しくてワクワクするような感情になる、ここの「フローの帯」が楽しさだと言っています。つまり、本人の能力がないにもかかわらず高い課題が課せられたり、逆に本人の能力はすごく高いのに与えられた課題が低かったりすると、つまらなかったり退屈だったり、あるいは非常に不安だったりします。この辺りにいる(「フローの帯」以外の部分にいる)子どもたちは楽しいとは感じられないのです。ですから、我々が、このフローを感じられる、楽しさを感じられるようなスポーツ活動を提供しなければいけないということです。学校の体育の授業は、どうしてもこうはなりにくいのです。やはり限られた時間の中で、与えられた課題も決まってきますので、そうするとフローと「授業」の帯が重なる部分にいる子たちだけが楽しいと感じていて、フローの帯以外の部分にいる子たちは体育の授業は嫌だ、ということになります。この辺りに大きな問題があるわけですが、恐らくここを解決するのが、部活動とか、地域のスポーツクラブが、楽しさを演出してくれるのではないかなと思います。運動嫌いを負のスパイラルから正のスパイラルへ
 皆さんのお手元にある資料を見てください。実はこのくらい細かく分割してアプローチしないと、スポーツが嫌いになってしまう、体育が嫌いになってしまうということを書いている図です。
 それと、先ほどの知事の話にもありました、「これからは生涯スポーツ」だということであれば、例えば学校で行っている活動は、どうしてもいろいろと制限があります。しかし、地域でいろいろなクラブが立ち上がっており、そちらはいろいろな種目があったり、多世代だったり、自分のペースでできたり、失敗をしても全然OKというところが、もっと連携していけると良いのではないかと思います。
 

生涯スポーツ 学校でしなければならないこともあります。しかし、地域でできることもあります。ここがもっとコラボレーションすれば、子どもたちが自分のやりたいスポーツを見つけられたり、もっと楽しい体験ができるような気がしますので、この辺の連携をどうしていくのか、ここを作っていくのが大人の責任かなと思います。そういう意味では、先ほど正に、17のテーマがあるということで、持続可能な課題があるとの話が出ました。もちろん非常に広い視野で、ということですが、これを「スポーツで街を元気に」、という1つのミッションを掲げることで、いろいろな社会的な資源や、いろいろな団体が連携していけるのではないか、こういう仕組みをつくることが、非常に重要なのではないか、と思います。

地域の連携を可能にする要因2地域の連携を可能にする要因1

 お手元の資料に、どう連携するかということを少し書いておきました。
 地域と連携している非常に良い事例を載せています。少年団と交流をしたり、外部指導者をうまく活用したりしています。
地域と連携している良い事例 それともう1つは、地域と結びついて和太鼓のクラブサークルを作って、一所懸命に練習した成果をお祭りで発表したり、あるいは、学校の部活動というと、バスケットボールやバレーボールなどをイメージしますが、実はこの学校にはフラダンスのクラブがあったり、非常に楽しいクラブ活動があって、今まで運動が苦手だと思っていた子たちが、「これならやってみたいわ」ということで参画しています。学校のクラブも、もう少し広いとらえ方ができると良いと思います。せっかく練習したものを、発表する場があって楽しめる。こんなところを是非、活用していければ、と思います。

 

スポーツの力(価値)はすごい 最後に、スポーツは、いろいろな力を持っていて、スポーツの価値を我々大人がよく理解して、それを上手に子どもたちに伝えていけると、子どもたちがスポーツを継続していけるのではないかと思います。

 

 

 

 

スポーツの価値(個人的)

 ちょっとスライドが多くて、十分にご説明できませんでしたが、この後のディスカッションで、是非ご質問をいただいたり、上手く活用していただければ、と思います。私の話は、以上で終わります。ありがとうございました。

司会

 萩様、どうもありがとうございました。続きまして、日本体育大学学長・神奈川県参与の具志堅幸司様をご紹介いたします。具志堅様は、1984年ロサンゼルスオリンピックの体操男子個人総合金メダリストで、2005年には紫綬褒章を受章されていらっしゃいます。現在は、第12代日本体育大学学長、日本体操協会副会長を務めていらっしゃいます。それでは具志堅様、よろしくお願いいたします。

具志堅 幸司氏(日本体育大学学長/神奈川県参与)

 皆さんこんばんは。ご紹介をいただきました具志堅幸司です。具志堅幸司と言っても、知らないですよね。でも、体操の内村航平は知っていますか。知っていますね。体操の内村航平選手を4年間教えた指導者ですと言ったら、皆さん「おおっ」て言うんですね。でも、嬉しいです。教え子が有名になればなるほど、私は良い思いをさせていただく。こういうのを教師冥利というのかもしれません。
 実は、私は幼い頃から外で遊ぶのが大好きでした。当時、私は大阪の大正区という田舎町、下町で育ちました。広い空き地があり、野球場が4つ、5つくらい入るような、大きな大きな広場がありました。横には直径50メートルくらいの池があり、本当に自然豊かな場所でした。思いっきり体を使って遊んだことを、今でもはっきりと思い出すことができます。浅い池でしたから、トンボなどの虫を捕ったりしながら遊んでいました。小学校に入ると、体を動かしたいということで、学校が始まる前に学校でサッカーをやるのです。約30分から40分。ルールはないのですけれども、力関係がみんな分かってきますから、じゃあ俺が入ったときには誰かを入れ替えようとか、今まで味方同士だったのを敵にしたりなど、その場その場のルールを作りながら、面白い接戦になるように、選手を入れ替えながら遊んだ記憶があります。
 放課後は、ランドセルを置いたらすぐに広場に行って、ソフトボール、野球に熱中する、そういう子ども時代を過ごしました。子どもの頃の日常的に体を動かす習慣は、この幼児期あるいは小学校時代に作られたのではないかと思っています。
 その後、私は小学校6年生の時に、テレビでメキシコオリンピックの体操競技を見て、やってみたいなあと思いました。加藤沢男選手が、オリンピックで金メダルを取るのですね。格好良かったです。私もやってみたいなあと母親に尋ねましたら、「好きなようにやって良いんだよ。」と言いました。私はすぐに母親に聞きました。「お母さん、俺も加藤沢男選手のように金メダルを取れるかね?」と言ったら、「努力すれば取れる。人の2倍、3倍、練習し、努力し、考えれば、きっと取れるよ。」と、言ってくれました。その母親も、もう天国に行って、いませんけれども、その動機付けとして、私の耳からその言葉が離れないのです。頑張ればオリンピックに行けるのだ。人の何倍も努力すればメダルを取れるのだ、とそんな思いで体操を始めました。
 中学校から体操を始めたわけですが、教えていただいたのが西田先生という先生でした。褒めてくれるのです。うまく綺麗にやると、特に美しくやると、「今のは具志堅、美しかった!」と、本当に心の底から褒めてくれるのです。私は体操を始めたばかりで、褒められるということは、あまり今まで経験がなかったものですから、怒られる経験の方が多かったので、嬉しくなり、もっと丁寧に、もっと美しくやろうという3年間、美を求めた体操でした。そして、卒業する時に、「具志堅君、僕は、体操は素人なんだ。」担当は美術でしたから。だから、美ということについては、口酸っぱく教えていただいたという指導者との出会いがありました。
 体操競技を通して嬉しかったことは、やはり技ができたこと。できなかったものができるようになった、ゼロのものが100近くになっていく、その過程も嬉しいですけれども、できなかったことができた時に嬉しさを感じました。時間と正比例して喜びがありました。つまり、時間がかかった分だけできたときの喜びというものを私は嬉しく思いました。「なかなかできない当たり前、それができれば一人前」、私たちはなかなかできない、分かっているけどできない、というものが一杯あると思います。例えば、小学校に入ると小学生になったのだからと言われ、大学が終わって社会人になると社会人なのだからと、成長の節目、節目で、その年齢に相応する能力が求められます。
 スポーツ選手においても、それぞれの能力段階でやるべきこと、学ぶべきこと、守るべきこと、考えるべきことなどの課題が出てきます。初心者には初心者としてのやるべきことが、中級者になると中級者としての自主性や我慢強さなどが求められます。チャンピオンレベルの選手には、そのレベルの選手としてやるべきことが出てきます。それらをきちんと実行できるようになると、その世界で一人前として認められます。これがチャンピオンへの道につながっていくのです。これは当たり前のことですが、これがなかなかできない。「それができれば一人前」ということになろうかと思います。
 私は不器用でした。オリンピックチャンピオンが不器用だと言ったら、信じないかもしれません。けれども、本当に不器用でした。1つの技を覚えるのに、人の2倍、3倍もかかりました。私には、オリンピックに出たいという夢がありましたので、母親に言われたことを守らなければいけないという思いがあり、それが教えとなって、人の倍練習したことが、結果的に私の財産として残っているのです。今は、十字懸垂もムーンサルトもできないけれども、十字懸垂に費やした時間、あるいはムーンサルトをやるために考えた時間という過程が、私の考え方の中で生かされている。競技が終わったからすべてがなくなるのではなくて、努力してきたこと、考えたこと、これを今の人生に当てはめて、何をやれば良いのかを考える力というのは、つまり、体操で学んできたことと、今、いろいろなことを、壁を越えていかなければいけないことを考える基というのは、一緒のような気がしてなりません。
 だからスポーツは素晴らしい。スポーツが終わっても、現役が終わっても、スポーツで学んだことからいろいろなことをお伝えし、また、自分自身も向上していくのではないかと思っています。「やり始めてからの辛抱が自分をつくる」、腕立て伏せが15回しかできなかった人は、16回目がなかなかできないのです。でもある時、14、15、16と、スッと上がって行くときがあります。伸びる前というのは、苦しいのです。ですから、私は、学生あるいは選手たちに、「今、苦しんでいる時というのは、伸びるちょっと前だから、今ここを我慢しようや。この我慢が、次、飛躍につながるから。」と指導させていただいています。
 そして、中学校時代に、私に教えてくれた西田先生のように、叱ることはしっかり注意し叱るけれども、褒めるということを大事にしながら、指導にこれからも携わっていきたいと思います。後半は、皆さんと一緒に物事を考え、作り上げていきたいな、と思っています。黒岩知事が言われました。皆さんの提案が良ければ、すぐに採用する。これは、スポーツの世界でも同じです。良いと思ったことを実行し、それを続けていくことが大事だろうと思いますので、黒岩知事の「良いことはすぐに採用しますよ。」というお考えに大賛成です。第二部の方も、どうぞよろしくお願いいたします。

司会

 具志堅様、どうもありがとうございました。それでは皆様との意見交換に移ります。ここからは、黒岩知事にマイクをお渡しいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

知事

 それでは、ここからは皆さんと正に対話の広場であります。ここから先のシナリオはありません。皆さんとの対話で織りなしていきますから、今日はどこに議論が展開していくのか、楽しみにしているところであります。質問でも結構ですし、私はこんなことを主張したいのだ、こんな提案があるのだとか、なんでも結構です。どんどんぶつけていただきたいと思います。
 今、2人の先生のお話をお伺いして、まず私の方から、ちょっと口火を切りたいと思います。萩先生、私も自分の体験をずっと振り返りながら話を聞いていましたが、確かに私たちが育った時代と今は、ずいぶん違うんだなあと感じます。僕らは、とにかく家に帰ったら走り回って、遊びまくっているということが当たり前であったし、中学、高校時代は、運動部に入るのが当たり前。それが今は、どうも違ってきているという感じです。
 私は、中学、高校時代は水泳部でしたが、強い選手ではなかった。でも、水泳部で一生懸命練習はする。でも、あの時は「楽しい」とはあまり思わなかったです。私が当時やっていた頑張るスポーツというのは、「楽しい」というより、むしろ辛い苦しい、けれども頑張らなければいけないのだといった感じでしたけれども、「楽しい」という発想は昔からあったものでしょうか。

萩 裕美子氏(東海大学大学院体育学研究科長)

 鋭い視点だと思います。おそらく当時は、そういうものを乗り越えていくことに意味を感じたり、仲間と一緒に頑張ってやっていくことに、とても意味を感じて、周りもそれなりに励ましながら、周りで支えてもらっていたところがあります。「お前、頑張れ、頑張ればきっと良いことがあるぞ。」と言われながら頑張って、それに耐える子どもたちが多かったのだと思います。今はそうではなくて、そういうものが、ちょっと苦手なタイプの子たちが増えてきていて、何かを乗り越えよう、乗り切ろうという雰囲気が、あまりなくなってしまっているのではないかと思うのです。そういう子たちに、何かスポーツの楽しさを伝えようとすると、この「楽しさ」という辺りが新しい基軸としてないと、スポーツの良さを伝えられないのではないかということで、「楽しさ」のお話をさせていただきました。

知事

 具志堅さんは、トップアスリート中のトップアスリートです。ロサンゼルスオリンピックの金メダリストですからね。自分自身を振り返ってみて、自分が一生懸命にやろう、頑張ってやったという話の中で「楽しい」という感覚はありましたか。

具志堅 幸司氏(日本体育大学学長/神奈川県参与)

 本当の「喜び」というのは、苦しさを乗り越えたときに感じる「喜び」という「楽しさ」があると思うのです。ですから高橋尚子さん、キューちゃんが、シドニーオリンピックで、「楽しく走れた42キロでした。」と言って金メダルを取れたのです。その「楽しさ」というのは、本当に楽しいのでしょうね。苦しいことを乗り越えたときの「楽しさ」に加えて、やっていて仲間ができた、協力して何かが完成したなどといった楽しさもあるのではないかと思うのです。
 初めての子どもたちに大事なことは、明日も行きたいな、次の日もやりたいなであって、それが習慣になれば、何かやらないと一日が終わらない、あるいは始まらないになるので、そのようなスポーツ環境があれば良いと思います。

知事

 はい、ありがとうございました。今、口火を切ったわけでありますが、この流れの続きでも良いですし、何でも結構です。このテーマの中であれば、何でも結構です。それではいきましょうか。はい、どうぞ。

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本文ここまで
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