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更新日:2024年2月20日

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農産物の上手な利用法(梅干し/作り方のアドバイス)

「農産物の上手な利用法」のページでは、オープンラボで実験された農産加工実験や神奈川県農業技術センターの過去の研究成果を紹介しています。

材料 作り方 農産物の上手な利用法の表紙
作り方のアドバイス

★漬け込み

原料のウメは水洗いし、水切りしますが、絶対にウメの表面を乾かしてはいけません。ウメの表面が乾くと漬け込みの時、ウメの表面に塩が付かないため、水(梅酢)のあがりが遅くなります。
漬けるウメが少量(数キロ)の場合はウメの表面に塩を摺り込みながら、容器に入れていき、残った塩を上にのます。
漬けるウメが大量(20~30キロ以上)の場合は塩を7分、3分に分けます。少量のウメを容器に入れ、7分に分けた塩から少量の塩とり、まぶすようにウメに振り込みます。この作業を繰り返して容器に漬け込み、最後に残しておいた3分の塩を上にのせます。
写真ウメ容器
ウメと塩を容器に入れ終わったら、押し蓋をして重石をのせます。重石はウメの重量の半分くらいで十分ですが、少量の場合は重めにし、大量の場合は軽めの重石にしてください。
水(梅酢)は1日でウメの上まであげるようにしてください。水(梅酢)が上がったらウメが水の上に浮き上がらないよう注意して管理してください。

★重石

ウメ漬けに重石は絶対に必要です。しかし、漬物用として販売されている重石や河原石は比重が重いため、漬け始めは目方がかかって水の上がりもよいのですが、水が上がってしまってからは梅を押しつぶしかねません。そこで、手軽に便利に使えるのが水重石です。ポリエチレンの大袋に水を入れて、口をキュッと縛ってください。これを梅の上の置くとよい重石になります。水重石は比重が梅酢より軽いので漬け梅の水が上がってくると梅酢の上に浮いてしまうため、漬け梅がピシャンコにならず、ふっくらと漬け上がります。
写真重石
水(梅酢)があがってくると、はじめはウメが浮くこともありますが、押しぶたを使ったり、水重石の袋をうまく使って、漬物容器の全面を押さえるようにして、ウメが浮き上がり空気に触れないようにしてください。 写真みず重石

★漬け込みの隠し技

もしも、前年までの梅酢があるならば、ウメの10~20%の梅酢を用意してください。水洗いし、水切りしたウメを梅酢にとおし、ウメの表面を梅酢で濡らしてください。
写真1:ウメ酢 写真2:ウメ酢
ウメの表面に梅酢を付けてから、塩を擦り込んだり、まぶすとウメの表面にたくさんの塩がまつわり付いて、水(梅酢)の上がりが早くなります。 写真ウメ酢
ウメと塩を容器に漬け込んで残った梅酢は、ウメに付いた塩を流さないように、漬け込み容器のフチに沿わせながら、静かに注ぎ入れ、押し蓋をして重石をのせます。

★漬け込み後の管理

容器の底には塩が沈みます。沈んだ塩を溶かすため、漬け込み後2~3日で天地返しをしてください。少量の場合はウメを別の容器に取り出し、容器の底に沈んでいる塩を攪拌して、梅酢に溶かし込んでからウメを戻してください。塩が溶けきらない場合は2~3日後に天地返しを繰り返してください。
大量の場合は同じ容量の容器にウメを入れ替え、容器の底に沈んでいる塩を攪拌し、梅酢に溶かし込んで、ウメに注ぎ込んでください。塩が溶けきらずに残っている場合は塩が再び沈まないように、布で包んでウメの上にのせてください。天地返しを終えたら押し蓋をして重石をのせてください。3週間くらいでウメ漬けを終了します。

★手抜き管理

でも、漬け込み量が多くなると、天地返しはやりにくくなります。天地返しをしなくても上下の梅の食塩濃度を均一にする方法があります。漬け液(梅酢)を循環させればよいのです。本当に大規模になれば電動ポンプを使って容器下部の梅酢を上に持ってくることをするのですが、家庭ではそんな大げさなことはできません。小型のポンプを使えば容器下部の梅酢を上に持ってくることができます。漬けこみ容器に水流ポンプをセットして、梅を入れていけばOKです。
写真ポンプ 写真容器とポンプ
水流ポンプをセットした容器に梅を入れ、梅と塩を交互に入れて、漬けこんでください。ここで漬ける梅は塩が付き易いよう、表面が少し濡れていたり、あらかじめ、梅酢を使って、表面をぬらしておかねばなりません。また、梅酢で処理したときは残っている梅酢を容器の縁から注ぎ込んでください。 写真ウメ酢
漬け込んだら重石をのせて水(梅酢)のあがるのを待つのみ。1~2日で容器の口部から盛り上がっていた水重石も容器の中に収まってきます。水重石は石や専用の重石と違って、梅酢より比重が軽いので、梅酢がでてくると、梅酢の表面に浮いてしまいます。石や専用の重石は梅酢よりも比重が重いので、のせている間は梅に加重がかかります。そのため、石や専用の重石を使うと漬け梅が押され続け、ウメがどんどん平たくつぶされていきます。水重石は梅酢の上に浮いてしまうので、漬け梅には加重がかからなくなってしまい、ふっくらとした漬け梅になります。 写真1:みず重石 写真2:みず重石
毎日の方がよいですが、毎日はちょっと面倒なので2~3日ごとに、ポンプをシュコシュコやって、梅酢を下から上に循環させてください。容器下部に沈んだ塩が溶け、全体が均一な塩濃度になるばかりでなく、柔らかい梅を漬けても漬け上がり、土用干しに入るまで手荒い作業がないので皮が破れることがないため、きれいな梅漬けに仕上がります。 写真1:ポンプ 写真2:ポンプ

★梅干の仕上げ

ウメ漬けしたものを土用干します。
7月中下旬の晴天の続く日を見計らって、漬け込み容器から取り出し、竹製やプラスチック製のザルの上にならべて、3日間くらい、日干し、夜干しをします。小田原の梅干し生産農家では干し場を作って、大量の漬け梅を干すので、梅酢の香りが辺り一面に香ります。
写真土用干し
土用干しはウメの色を良くし、水分を飛ばして保存性を良くするために行います。梅漬けは黄色をしていますが、日光に当てることで残っている葉緑素の変化した物質を完全に分解し、淡い赤味を持った梅干の色に仕上げねばなりません。日光を一面にだけ当てておくと日光にあたった部分しか淡赤色にならないので、まんべんなく日光に当てる必要があります。日光の当たる面を変えるためには、ウメを時々裏返えす手入れをします。「十郎」の梅漬けは皮がやわらかく、皮が破れやすいので、丁寧に作業しなければなりません。干しザルを重ね、干しザルごと、エイヤ!と返せるのは皮の硬い品種ならばOKでしょうが、皮のやわらかい「十郎」ではちょっと無理といえます。
最初の手入れの時はウメがザルに張り付いていることがありますが、このときは無理にはがしてウメの皮を傷つけてはいけません。最初の手入れはウメの表面が乾ききらないうちに行いましよう。張り付いてしまったときはそのままにしておきます。手入れは1日数回行い、ウメの表面の色を均一にします。
写真土用干し
日光が強いとウメの表面が良く乾いて塩が白い粉をまぶした様になりますが、夜になると内部の水分が表面に出てきて、塩は溶けてしまいます。乾いてザルや干し網に貼り付いたウメも塩が溶けると剥がれてきます。短気を起こさず、のんびりと作業してください。ザルや干し網にウメが貼り付くのは最初だけです。一度目の手入れが終われば、貼り付くことは無いので、随時手入れが可能になります。 写真干し作業

★干し加減

ちょうど良い干し加減は干し始めから重量が2~3割減った程度です。日の強さ、風の強さによって、乾燥の度合いは違ってきます。三日三晩の土用干しと言われますが、天候によって干す時間を加減して下さい。大きな乾燥用容器の間に小さなザルに入れた梅漬けを置き、同じ条件で乾燥し、時々秤でチェックすると干し加減の目安がよくわかります。
写真土用干し 写真干し加減
表皮にキズがあったり、破れている漬け梅を干すと、キズ口や破れ目から水分がどんどん蒸発し、水分減少が激しいので、すぐに重量が減ってきます。キズや破れのない漬け梅と同じ条件で干すと水分が少なくなりすぎます。キズや破れの漬け梅はそれだけを集めて干す方が適切な水分管理ができます。天日干しの時間を調節して、ちょうどよい干し加減にしてください。 写真干し加減

★保存

干し仕上がった梅干は、ガラス製やプラスチック製の容器、あるいは磁器に詰める時は、乾燥しないようにぴっちりとしたふたをして保存してください。ポリエチレン袋を内装し、梅干しをいれたら輪ゴムでポリエチレン袋の口をきっちりと閉じるが手軽です。ただし、輪ゴムは1年くらいたつとゴムが老化してくるので、輪ゴムを取り替えねばなりません。輪ゴムの上から紐で縛っておく方がよいでしょう。
写真1:保存容器 写真2:保存容器
仕上がりの良い梅干は保存中にとろりとした梅酢が多く出て、容器の8分目以上まで浸ってきます。梅酢が上がってこないと梅干しは空気中の酸素によって酸化され、梅干しの色が黒味を帯びた赤色になってきます。梅酢の中に浸って、赤色を帯びてきた梅干しの色とは明らかに異なり、品格のない赤色となってしまいます。 写真保存容器

★塩の結晶

容器のフタがピッチリしていなかったり、陶器製の壷などに入れておくと、上面の梅干は乾燥し、水分が少なくなってきます。その結果は梅干はだんだんと痩せてきて、塩の結晶が吹き出してきます。塩の結晶が吹き出したから食べられないわけではありませんが、梅肉のトロリとした感触もなく、硬い塩の結晶が口にさわり、おいしいものではありません。
梅干しとしてはおいしく食べることはできないのですが、料理の調味料として酸味と塩味を備えたものとして、利用できます。捨てることはありません。梅干しをチョッとした料理の隠し味として使ってみてください。そうめんやうどんの汁などに少量使ってみると酸味が味を引き締めます。
写真1:しおの結晶 写真2:しおの結晶

★熟成

梅干はすぐに食べることもできますが、2、3年保存し、熟成させたほうが色がよくなり、味もまろやかになります。しかし、10年以上経ってくると、梅干が固くなってきます。梅肉や梅酢に含まれるペクチン質が硬化してくるためで、20年以上経ったものは梅肉がネットリした感触からコツコツとした感触になります。梅干のまわりの梅酢が寒天状に固まってきます。

★梅干の料理

梅干はそのまま、白いご飯の菜としたり、握り飯に入れたりして、美味しいく食べることができますが、小田原の農家では梅干を調理素材として利用しています。
写真:梅干ご飯
梅干ご飯
  写真:梅干ドレッシング
梅干ドレッシング
穂坂直子さん(ふるさとの生活技術指導士)調理

★梅酢

梅酢は別の容器に入れて保存、利用してください。刻んだ野菜に梅酢をちょっと入れて揉み、水気が出てきたら、キュッと絞ってください。梅酢の香味がほんのりとする箸休めができます。
写真1:ウメ酢料理 写真2:ウメ酢料理

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