1 患者発生動向 |
本年は関東地方を中心に麻しん(はしか)が流行しています。麻しん(成人麻しんを除く)の流行状況は小児科定点(小児科診療を行っている指定届出医療機関)の報告から、成人麻しん(15歳以上)の流行状況は基幹定点(内科と小児科を持つ300床以上の病院)の報告から把握しています。このように麻しんと成人麻しんは異なった定点から報告されます。また、全数報告の疾患ではありませんので、発生動向調査で患者数をすべて把握することはできません。
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麻しん、成人麻しんの定点あたり報告数の推移
神奈川県では、特に成人麻しんの定点あたり報告数が12週(3/19~)から増加しはじめ、15週(4/9~)で0.38人、16週(4/16~)で0.43人でした。また、20週(5/14~)は0.88人、21週(5/21~)は1.11人、22週(5/28~)では1.33人とさらに増加しています(図1)。
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麻しん、成人麻しんの年齢別患者報告数(1~22週累計 小児科定点、基幹定点報告より) |
神奈川県の1週から22週までの麻しん及び成人麻しんを合算した年齢別患者報告数は、6か月~11か月にピークがあり、2歳で下がるものの年齢が上がるに従い増加し、10歳以上の報告数が114人(65.9%)と特に多くなっています。(図2)。
神奈川県の基幹定点報告では、成人麻しん(15歳以上)は51人で15歳から35歳未満では49人(96%)となっています。 |
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全国及び近隣都県の週別患者報告数(小児科定点、基幹定点報告より)
全国及び近隣都県(神奈川県、東京都、埼玉県、千葉県)の患者報告数は、全般的に 13週(3/26~)から増加し始め全国の麻しんは19週をピークとしてほぼ横ばいで推移しています。近隣都県とも麻しんの報告数が多く、千葉県の19週は56名が報告されています(図3)。成人麻しんは18週から増加の傾向を示しているが20週では全国報告68例中、近隣都県の報告が36例あり、全国の52.9%を占めました。報告数がピークとなっている21週では全国報告82例、近隣都県43例と報告数は増加したものの近隣都県の全国割合は52.5%とわずかに減少しました(図4)。 |
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2 麻しん抗体保有状況および予防接種率 |
当所で実施している麻しんの抗体保有調査の一部を示しました(表1)。0-1歳では陽性率が約43%から76%であるの比して、2歳になると一部低い陽性率がみられるものの、ほぼ100%の陽性率となっています。しかし、2-5歳の間に100%の陽性率を示した抗体保有状況も10-14歳では約86~96%前後の値を示し、約15%~5%程度減少しています。 |
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3 麻しんウイルス分離状況(IDSC資料より;国立感染研感染症情報センター) |
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2007年2~6月に山形県、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、大阪府、兵庫県、島根県、佐賀県、沖縄県から麻疹ウイルスの分離・検出が52件報告されており、このうち、遺伝子型別まで実施された29件ではすべてD5型が検出されています。
2006年においてはD5型を中心にA型、H1型も報告されていました。
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(企画情報部 折原直美) |