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神奈川県微生物検査情報


神奈川県衛生研究所

第169号

2006年 11月
( 平成 19年 4月 16日発行 )


話題

ノロウイルス感染集団発生

 

― 2006 /2007シーズン ―

  神奈川県衛生研究所において収集したノロウイルス感染集団発生状況には、食品媒介による感染が疑われる「食中毒」や「有症苦情」、人-人感染、感染経路不明の胃腸炎集団発生などの事例がある。また、横須賀市健康安全科学センター、相模原市衛生試験所、藤沢市保健所衛生検査課の協力も得ており、この地域を含んだ2月末現在における「ノロウイルス感染集団発生( 2006/2007シーズン)」の情報を紹介する。

1 ノロウイルス感染集団発生の動向

  2006/2007年シーズン(2006年10月~2007年2月末現在)は、ノロウイルスによる集団発生の報告が例年に比べて早くから増加し、集団事例も多発した。

  神奈川県域、横須賀市、相模原市及び藤沢市では、今シーズンは 54事例の集団発生があり、人-人感染が疑われるものが 17事例、食品媒介が疑われるものが13事例、感染経路不明が24事例であった(表1)。
   また、診断名別では、「感染性胃腸炎」が 36事例(66.6%)、「食中毒」が11事例(20.4%)、「有症苦情」が7 事例(13.0%)であった。なお、横須賀市及び相模原市は、ともに「感染性胃腸炎(横須賀市;17事例、相模原市;1事例)」の集団発生のみであったが、藤沢市では「感染性胃腸炎」が5 事例、神奈川県域では13事例あり、「食中毒及び有症苦情」が藤沢市では1事例、神奈川県域では17事例であった。

  月別発生状況をみると、2006年10月から感染性胃腸炎患者報告数の上昇とともにノロウイルス感染集団事例が多発し、12月には54例中約半数の28事例が発生した。
  診断名別に12月の発生状況をみると、「感染性胃腸炎」が28事例中20事例(71.4%)、「食中毒」が5 事例(17.9%)、「有症苦情」が3事例(10.7%)であった(図1、表2)。

2 ノロウイルス感染集団発生におけるノロウイルス genogroup別の動向

  ノロウイルスのgenogroupは大きくⅠ及びⅡに分けられており、2006/2007年シーズン(2006年10月~2007年2月末現在)では、集団発生54事例中53事例がノロウイルス genogroupⅡ(GⅡ)によるものであった。ノロウイルス genogroupⅠとⅡ(GⅠ+GⅡ)による集団発生は食中毒によるものであった(図2、表3)。

3 ノロウイルス genogroup別の検出

   2006/2007年シーズンの54事例の集団発生事例から、表4に示すように575件検出され、ノロウイルスGⅠは1件のみであった。

( 企画情報部  折原直美 )

  病原体検出  
<検出状況>
  • 11月の病原体検出数は合計282件、細菌23件、ウイルス257件、リケッチア2件であった。
  • 感染症および食中毒発生に伴う行政検査等では細菌が 18件、ウイルスが235件、リケッチアが2件検出された。
  • 病原体定点等の医療機関からの検査では、細菌が 5件、ウイルスが22件検出された。
  • 保健所管内別の検出状況は表 1のとおりである。



<検出状況>
  • 腸管出血性大腸菌が 16件検出された。その内訳は藤沢市保健所管内の O26 : H11(VT1保有)による集団事例から14件、患者届け出に伴う検査から O157 : H NT(VT1&2保有)1件、また、横須賀市保健所管内で O165 (VT1&2保有)が患者から1件検出された。



<検出状況>
  • マイコプラズマ・ニューモニエは、 10月に引き続き11月も2件検出された。
  • 腸管出血性大腸菌は、昨年同月では検出されなかったが 11月は集団感染事例が発生し、16件検出された。
  • カンピロバクター・ジェジュニが毎月継続的に検出されている。 11月は定点医療機関からの検出であった。





<検出状況>
  • 11月はノロウイルス感染による集団発生が多発し、感染性胃腸炎及び食中毒等の集団発生が、それぞれ6事例あった。ノロウイルスは、感染性胃腸炎から121件、食中毒等から127件検出された。
  • 手足口病の取扱い検査件数は 5件でいずれからもウイルスが検出され、うち、2件はコクサッキーウイルスA16型であった。




<検出状況>
  • コクサッキーウイルス A16型が10月に引き続き11月も検出された。
  • ノロウイルスは、 11月だけで前年の年間検出数とほぼ同じであった。




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