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神奈川県微生物検査情報

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第166号

2006年8月
(平成18年11月29日発行)

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話題

同一感染源が示唆された腸管出血性大腸菌 O157 感染事例

2006年8月神奈川県内の茅ヶ崎市及び平塚市において同一感染源が示唆される腸管出血性大腸菌(EHEC)
O 157:H7(VT1,2)の患者が発生したので概要を報告する。

8月28日茅ヶ崎保健所に医療機関からEHEC O157:H7(VT1,2)患者Aの発生届が提出された。Aは茅ケ崎市在住の小児で、8月24日より腹痛、嘔吐、発熱がみられた。家族検便の結果B、C及びDからもEHEC O157:H7(VT1,2)が検出された。

9月1日平塚保健所へ患者EのEHEC O157:H7(VT1,2)の発生届が提出された。患者Eは、8月24日より腹痛により入院していたことが判明した。Eの家族検便を実施したところ、FからEHEC O157:H7(VT1,2)が検出された。

保健所の調査によりA、B及びCの家族は、8月19日及び20日に平塚市内の患者E宅に行き、食事を共にしていたことが判明した。このことから感染源として両家族の共通食である8月19日及び20日の食事が疑われた。DはE宅に行かずに発症しているが、Bのオムツの交換を行っていたことから、家族内感染の可能性があると思われた。

図 EHEC O157:H7のPFGEパターン

さらに8月28日から9月7日にかけて、散発的に平塚保健所へG、H、I及びJの4名のEHEC O157:H7(VT1,2)患者の発生届が提出された。喫食調査等から4名の患者宅では、同一系列店をよく利用していることが判明したが、購入した品物や購入月日は異なっていた。
患者の状況を表に示した。

茅ケ崎保健所及び平塚保健所管内の患者10名より分離した菌株についてPFGEによる遺伝子解析を実施した。その一部のパターンを図に示したが、患者Cにおいてバンド1本の相違があるものの同一パターンと認められた。
患者10名より分離した菌株のPFGEパターンが一致したことから、今回のEHEC O157:H7患者の感染源は、同一であることが推察される。しかし、E宅での調査協力が得られなかったので、19日及び20日の食事の内容や食材の購入先は不明である。
疫学的には十分な情報は得られなかったものの今回の患者の発生は血清型及びPFGEパターンが一致していることから、同一感染源の可能性が示唆された。

(地域調査部 茅ヶ崎分室   小野 彰)



<検出状況>

  • 8月の病原体検出数は合計55件、細菌39件、ウイルス16件であった。
  • 食中毒および感染症発生に伴う行政検査等では細菌が26件検出された。
    また、病原体定点等の医療機関からの検査では、細菌が13件、ウイルスが16件検出された。
  • 8月は細菌性の食中毒および感染症発生に伴う行政検査等が前月(5件)に比して、26件と増加した。

<検出状況>

  • 腸管出血性大腸菌感染症の届出は8月は26件あり、関係者調査から腸管出血性大腸菌が6件検出された。大和保健所管内では患者家族から O157:H7(VT1,VT2保有)が2件、別の患者家族からO157:HNM(VT1,VT2保有)が1件検出され、茅ヶ崎及び平塚保健所管内で同一の感染原因と考えられるO157:H7(VT1,VT2保有)が3件検出された。
  • 8月の食中毒等の発生事例のなかで原因菌が検出されたものは5事例であった。平塚保健所管内ではカンピロバクター・ジェジュニ(Penner D)が3件、秦野保健所管内では黄色ブドウ球菌(エンテロトキシンA型、コアグラーゼ型Ⅶ)が2件、藤沢市保健所管内では腸炎ビブリオ(O3:K6、TDH(+),TRH(-))が2件、相模原市保健所管内ではカンピロバクター・ジェジュニが3件、横須賀市保健所管内では黄色ブドウ球菌(エンテロトキシンD型)が1件、原因菌として検出された。なお、藤沢市保健所では腸炎ビブリオ(O3:K6)が他県の関連調査から検出された。
  • 横須賀市保健所管内で海外渡航者(エジプト)より赤痢菌(sonnei)が検出された。



<検出状況>

  • マイコプラズマ・ニューモニエが9件検出された。年齢層は、3歳から17歳であった。
  • エコー18型は、全国的には2006年に入って検出報告数が増加しているウイルスであるが、国の病原微生物検出情報「週別エコーウイルス18分離・検出報告数2005&2006年」によると無菌性髄膜炎からの検出割合の高い状況が見られる。当所で検出されたエコー18型は3件でそのうち1件は無菌性髄膜炎患者(藤沢市)からの検出であったが、2件は手足口病患者から検出された。


<検出状況>

  • 腸管出血性大腸菌は、8月の患者届出数が7月に比べ大幅に増加したが、菌の検出件数も増加した。
  • 毒素原性大腸菌(ETEC)が今年初めて検出されたが、海外渡航者等からの散発事例及び食中毒事例からの菌の検出であった。
  • 8月の腸炎ビブリオの検出件数は前年同月に比べ、大幅に減少した。全国状況でも過去4年間で最少の報告数であった。
  • カンピロバクター・ジェジュニは7月に引き続き8月も検出され、前年同月と同様の検出であった。
  • A群溶血性レンサ球菌は毎月検出されていたが、8月は患者報告数も下降し、菌の検出もなかった。

<検出状況>

  • ヘルパンギーナの患者報告数は25週(6/19~6/25)をピークに下降を続け、それに伴いコクサッキーA4型の検出は1件となった。菌の検出であった。
  • 手足口病の患者報告数は8月初めに小ピークがありその後やや増加傾向にあり、コクサッキーA16型も8件と増加した。
  • コクサッキーB5型が7月に引き続き、無菌性髄膜炎患者から検出された。

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