青白蛍光のあるレジオネラ属菌の検出!
レジオネラ属菌( 50数菌種)はレジオネラ症の原因菌であり肺炎やポンティアック熱を引き起こすことが知られていますが、この中でもレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)の検出例が大部分を占めています。今回、蛍光を発する レジオネラ・アニサ(表中 L.anisa)が冷却塔水から分離されたので、蛍光を発する菌種を含めたレジオネラ属菌の同定の留意点と検査を実施する上での課題について説明します。 |
★レジオネラ・アニサとは
この菌は、冷却塔水から分離される菌種としてはレジオネラ・ニューモフィラに次いで分離例が多い(1~2%)菌種ですが、患者からの分離例もあることから、ヒトの感染症の原因になると考えられています。
レジオネラ・アニサのコロニーは青色蛍光を発しますが、稀に蛍光を発しない菌株があると報告されています。
★レジオネラ・アニサと同定した経緯
- 蛍光が認められ、かつ市販血清でレジオネラ・ミクダディ(L.micdadei)に凝集する、という非定型的性状を示すレジオネラ属菌が地域調査部小田原分室で分離されました。本菌が蛍光を発する報告がないことから当該菌株について精査を行いました。
- 当該菌は PCR法でレジオネラ・ニューモフィラ以外のレジオネラ属菌であることが確認されました。※1
- 市販のレジオネラ免疫血清による凝集反応では、レジオネラ・ミクダディとレジオネラ・ボウズマニイ
(表中 L.bozemanii ) に凝集が認められ、さらに国立感染症研究所から配布されている免疫血清で調べた結果、レジオネラ・ボウズマニイの血清群 2にも凝集が認められ3種の免疫血清に凝集を示しました。
(交差反応 ※2)
- 国立感染症研究所で、この菌株の 16SrRNA 遺伝子塩基配列を解析した結果、レジオネラ・アニサと同定されました。
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★蛍光を発する菌種を含めたレジオネラ属菌の同定の留意点
1)自発蛍光
今回の事例では、コロニーの蛍光観察を検査項目に加えていたため、最終的に正確な同定に繋がりました。レジオネラ属菌( 50数菌種)の中で蛍光を発するのは 13 菌種で、その中でも青白蛍光が観察されるのは 10 菌種です。レジオネラ属菌は菌種同定に有用な生化学的性状が乏しいため、蛍光の有無は菌種の同定に直結はしないまでも、菌種を推定する上では比較的有効な指標になっています。 |
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★今後の課題
今回分離されたレジオネラ・アニサのように、レジオネラ・ミクダディや ボウズマニイ と交差反応がある例は極めて希と考えら れますが, 今後もこのような菌株が分離される可能性はあります。レジオネラ属菌の同定を行う際、少しでも結果に疑問が生じた場合は、免疫血清反応だけではなく、 DAN- DNAハイブリダイゼーション法や 遺伝子塩基配列の解析を行ってみることも必要と考えられます。
※1 当該菌の同定方法
簡易凍結法で保存された菌株を BCYE 培地で 36 ℃、 3 日~ 5 日培養後、発育したコロニーに紫外線( 360nm )を照射したところ、コロニーによって強弱のある青白蛍光が観察された。これらのコロニーを釣菌し、レジオネラ属菌の特徴であるL -システイン要求性を確認した後、 PCR 法により同定を試みた。
※2 交差反応
免疫血清を作製する際に、共通抗原を持つ他の菌種との交差反応が認められる場合、吸収操作を行い、特異性の高い血清にする必要があります。しかし、吸収操作により特異抗体の力価も低下することがあるため、この操作には限界があります。このため、国立感染症研究所から配布されたレジオネラ・ボウズマニイ血清群 2の免疫血清のように、レジオネラ・アニサとの弱い交差反応がある場合があるとわかっていながらも使用することもあります。
(微生物部 呼吸器グループ 渡辺祐子) |