[2013.1.30 掲載]

平成23年度 食品理化学検査

(1) 地域調査部

地域調査部では、主に食品衛生法で規格基準が定められている食品を検査しています。
平成23年度には、検査検体1,164件、10,443項目の検査を実施しました。検査内容は以下の表のとおりです。

*1: 添加物検査については別表1参照
*2: 重金属等検査は、ヒ素、鉛、スズ、カドミウム、シアン、PCB、総水銀について行いました。基準を超えたものはありませんでした。
*3: 動物用医薬品検査については、別表2参照
*4: 器具容器試験は、材質試験で鉛、カドミウム、揮発性物質について、溶出試験で過マンガン酸消費量、蒸発残留物、重金属、防カビ剤について行いました。基準を超えたものはありませんでした。
*5: 残留農薬検査については、別表3参照
*6: 体重、体長、水酸化Na・K、容器被包の試験(漏水、落下、耐酸性またはアルカリ性、圧縮変形)、確認検査を行いました。

(別表1)食品添加物検査

食品添加物には、指定添加物(日本で許可されている添加物)と指定外添加物(日本で許可されていない添加物)があります。
地域調査部では、輸入食品と国産食品の指定添加物について検査しています(着色料については指定外添加物も検査しています)。

添加物検査では、麺類1検体から基準を超える量のプロピレングリコールが検出されました。また、使用してよい添加物の基準値を超えたものはありませんでしたが、佃煮、漬物から着色料が検出され、これらは表示することが義務づけられているにもかかわらず、表示していない事例でした。(表示違反)。

(別表2)動物用医薬品検査

動物用医薬品検査は、豚や牛、鶏などの家畜や養殖の魚類などの畜水産物の疾病予防等のために使用される医薬品(抗生物質、合成抗菌剤、寄生虫用剤、ホルモン剤等)を対象に、ポジティブリスト制度*)に基づき検査を実施しています。

残留基準が定められている輸入の食肉及び魚介類、また、国産の食肉・卵、魚介類、牛乳について検査検体46件、抗生物質、合成抗菌剤、寄生虫用剤、ホルモン剤等の323項目の検査を行いました。基準値を超えるものではありませんでした。

*) ポジティブリスト制度: 農薬・動物用医薬品・飼料添加物(以下農薬等という)を対象に、その成分が一定基準を超えて残留する農作物・食品の製造・輸入・販売を原則禁止する制度。約800の農薬等に基準値が設定され、この基準値を満たす農作物・食品だけが流通できる。基準値がまだ設定されていない農薬等には0.01ppm以下という一律基準が適用される。

○ 動物用医薬品の検査については、地域調査部と理化学部で実施しています。

平成23年度には、地域調査部は46検体、理化学部は87検体、合わせて133検体について、抗生物質、合成抗菌剤、寄生虫用剤、ホルモン剤等合計1098項目の動物用医薬品の検査を実施しました。

(参考)動物用医薬品(理化学部)

○ 衛生研究所では、ポジティブリスト制度導入に伴い、神奈川県が実施する残留農薬及び動物用医薬品の検査に用いる検査実施標準作業書(SOP)の作成を目的に、理化学部において一斉分析法の真度試験及び精度試験を実施し、試験法の検討を行っています。地域調査部には、試験法・SOPを還元し、検査の実施に役立てております。

(別表3)残留農薬検査

残留農薬については、ポジティブリスト制度に基づき検査を実施しています。

輸入及び国産の農産物、輸入の食肉及び魚介類、国産の牛乳について検査検体166件、殺虫剤、殺菌剤、除草剤等7,308項目の検査を行いました。以下の表に示すとおり、農産物から農薬が検出されましたが、基準値を超えるものはありませんでした。

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(2)理化学部

理化学部では、食品衛生法の規格基準に基づく検査、また検査法の整備のための調査や今後に向けて必要性のある調査を実施しています。なお、理化学部では、専門分野で実施することが効率的な検査等(放射能、カビ毒、ふぐ毒、貝毒、遺伝子組換食品、特定原材料等)について実施しております。

平成23年度には、輸入食品及び県内産・県流通食品等について、検査検体547件、2,452項目の検査を実施しました。
検査内容は以下の表のとおりです。

平成23年度 食品理化学検査(理化学部)

*1: 添加物検査については別表1参照
*2: 放射能検査については、別表2参照
*3: カビ毒については、県内で流通している輸入食品のカビ毒汚染を調査した。香辛料、ナッツ類、穀類、乾燥果実、リンゴ果汁についてアフラトキシンB1、B2、G1、G2とパツリンを検査しました。アフラトキシン類、パツリンとも、いずれの検体からも検出されませんでした。
*4: 動物用医薬品については、別表3参照
*5: ふぐ毒については、規制値である10MU/gを超える検体はありませんでした。
*6: 二枚貝について麻痺性貝毒及び下痢性貝毒試験を実施した。その結果、麻痺性貝毒の規制値である4MU/g及び下痢性貝毒の規制値である0.05MU/gを超える検体はありませんでした。
*7: 神奈川県内で市販されている加工食品40検体について、特定原材料(卵・乳)の定量・定性検査を行ったところ、いずれも不検出でした。(アレルギー食品の項、参照)
*8: 平成23年度は、安全性未承認組換え遺伝子の定性試験として、コメ加工品はBtコメ、トウモロコシ穀粒はBt10、トウモロコシ穀粒及びトウモロコシ加工品はCBH351の検査を実施した。その結果、いずれも組換え遺伝子は不検出であった。
また、安全性審査済み遺伝子の定量試験として、トウモロコシ穀粒は35S及びGA21の検査、大豆穀粒12検体及び大豆加工品はRRSの検査を実施した。その結果、いずれも組換え遺伝子は不検出であった。(遺伝子組換え食品の項、参照)

(別表1) 食品添加物検査(理化学部) 輸入食品

理化学部では、輸入食品の指定添加物(日本で許可されている添加物)及び指定外添加物(日本で許可されていない添加物)を実施しています。

(別表2) 放射能検査(理化学部)

平成23年度は、同年3月に発生した福島第一原子力発電所事故後の緊急食品調査として、県内産もしくは県内流通食品の放射能濃度調査を実施しました。

魚介類は淡水魚(鮎、ワカサギ等)について検査を実施し、放射性ヨウ素はすべての検体で不検出、放射性セシウムは<LOD(定量限界未満)~200Bq/kgで、暫定規制値を超えるものはありませんでした。
畜産物では、豚肉は11検体すべて放射性セシウムは不検出でしたが、牛肉は26検体中21検体より放射性セシウムが検出されました。そのうち3検体が暫定規制値を超え、いずれも東北産でした。原乳は67検体中4月の4検体から放射性ヨウ素が1.0~3.4Bq/kg、9月の1検体から放射性セシウムが3.7Bq/kg検出されましたが、いずれも暫定規制値未満でした。
農産物では、小松菜、タケノコ、シイタケ(生、乾)の検査を実施しました。小松菜は3検体すべて放射性ヨウ素、放射性セシウムともに不検出でした。タケノコ4検体は放射性ヨウ素は不検出、放射性セシウムは12~29Bq/kg検出されましたが、すべて暫定規制値未満でした。シイタケは、生シイタケ20検体、乾シイタケ5検体について放射性ヨウ素はすべて不検出でした。放射性セシウムは生シイタケ <LOD~150Bq/kg、乾シイタケ <LOD~730Bq/kgで、乾シイタケ2検体が暫定規制値を超えました。茶葉は生葉、荒茶の検査を実施しました。放射性セシウムが<LOD~1300Bq/kgで22検体のうち9検体が暫定規制値を超えました。
食品関連物質として、牧草や稲わら、トウモロコシ等の飼料、堆肥、きのこの原木やほだ木等の検査を実施しました。放射性セシウムは牧草、稲わら等の飼料で10検体すべて不検出、堆肥、剪定枝チップ等の肥料で340~420Bq/kg、きのこの原木、ほだ木で19~1400Bq/kg検出し、剪定枝チップ1検体、ほだ木2検体が農林水産省の定める暫定許容値、当面の指標値を超えました。
暫定規制値を超えた食品及び食品関連物質は、いずれも出荷自粛が要請されました。

放射性物質検出状況

*1: 食品の暫定規制値(平成23年3月17日付け 厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)
肥料、飼料の暫定許容値(平成23年8月1日付け 農林水産省消費・安全局長、生産局長、林野庁長官、水産庁長官通知)
きのこ原木、ほだ木の当面の指標値(平成23年10月6日付け 農林水産省生産局農産部園芸作物課長、林野庁林政部経営課長、林野庁林政部木材産業課長通知)
*2: LOD:定量限界
*3: 牛乳・乳製品の放射性ヨウ素の暫定規制値は300Bq/kgであるが乳幼児は100Bq/kg

(別表3)動物用医薬品(理化学部)

動物用医薬品検査とは、疾病予防等のために使用される医薬品(抗生物質、合成抗菌剤、寄生虫用剤、ホルモン剤)を対象に、残留検査を実施しています。

動物用医薬品について、輸入及び国産の食肉、魚介類及びその加工品について一斉分析法に加え、告示法による検査を実施しております。平成23年度には、検査検体87件、775項目の検査を行いました。

◆ 動物用医薬品の検査については、地域調査部と理化学部で対応しています。

平成23年度には、地域調査部及び理化学部で合わせて、動物用医薬品の検査検体133件、1098項目の検査を実施しました。