[2012.1.11 掲載]

平成22年度 食品理化学検査

(1) 地域調査部

地域調査部では、食品衛生法で規格基準が定められている食品を基本的には検査しています。
平成22年度には、検査検体1,112件、10,034項目の検査を実施しました。検査内容は以下の表のとおりです。

平成22年度 食品理化学検査(地域調査部)

*1: 添加物検査については別表1参照
*2: 重金属等検査は、ヒ素、鉛、スズ、カドミウム、シアン、PCB、総水銀について行いました。基準を超えたものはありませんでした。
*3: 動物用医薬品については、別表2参照
*4: 器具容器試験は、材質試験で鉛、カドミウム、揮発性物質について、溶出試験で過マンガン酸消費量、蒸発残留物、重金属、防カビ剤について行いました。基準を超えたものはありませんでした。
*5: 残留農薬検査については、別表3参照
*6: 体重、体長、水酸化Na・K、容器被包の試験(漏水、落下、耐酸性またはアルカリ性、圧縮変形)を行いました。

食品添加物には、指定添加物(日本で許可されている添加物)と指定外添加物(日本で許可されていない添加物)があります。地域調査部では、輸入食品と国産食品の指定添加物について検査しています(着色料については指定外添加物も検査しています)。
添加物検査では、使用して良い添加物の基準値を超えたものはありませんでした。しかし、缶詰・ビン詰製品から保存料が検出され、保存料を使用している場合は表示することが義務づけられているにもかかわらず、表示していない事例でした(表示違反)。

○動物用医薬品検査(別表2)

動物用医薬品検査とは、疾病予防等のために使用される医薬品(抗生物質、合成抗菌剤、寄生虫用剤、ホルモン剤等)を対象に、残留検査を実施しています。

残留基準が定められている輸入の食肉及び魚介類、また、国産の食肉・卵、魚介類、牛乳及び加工乳について検査検体66件、抗生物質、合成抗菌剤、寄生虫用剤、ホルモン剤等の407項目の検査を行いました。基準値を超えるものではありませんでした。

○ 動物用医薬品の検査については、地域調査部と理化学部で実施しています。

平成22年度には、地域調査部では66検体、理化学部では68検体、合わせて動物用医薬品の検査検体134件、抗生物質、合成抗菌剤、寄生虫用剤、ホルモン剤等の1055項目の検査を実施しました。

(参考)動物用医薬品(理化学部)

衛生研究所では、ポジティブリスト制度導入に伴い、神奈川県が実施する残留農薬及び動物用医薬品の検査に用いる検査実施標準作業書(SOP)の作成を目的に、理化学部において一斉分析法の真度試験及び精度試験を実施し、試験法の検討を行っています。地域調査部には、試験法・SOPを還元し、検査の実施に役立てております。

○残留農薬検査(別表3)

残留農薬については、ポジティブリスト制度に基づき、別表3に示すとおり、輸入及び国産の農産物、輸入の食肉及び魚介類、国産の牛乳・加工乳について検査検体165件、殺虫剤、殺菌剤、除草剤等7,076項目の検査を行いました。以下の表に示すとおり、農産物から農薬が検出されましたが、基準値を超えるものはありませんでした。

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(2)理化学部

理化学部では、食品衛生法の規格基準に基づく検査、また検査法の整備のための調査や今後に向けて必要性のある調査を実施しています。なお、理化学部では、専門分野で実施することが効率的な検査等(放射能、カビ毒、ふぐ毒、貝毒、遺伝子組換食品、特定原材料等)について実施しております。

平成22年度には、輸入食品及び県内産・県流通食品等について、検査検体343件、1,763項目の検査を実施しました。
検査内容は以下の表のとおりです。

平成22年度 食品理化学検査(理化学部)

*1: 添加物検査については別表1参照
*2: 放射能検査については、別表2参照
*3: カビ毒については、県内で流通している輸入食品のカビ毒汚染を調査した。香辛料、ナッツ類、穀類、乾燥果実、リンゴ果汁についてアフラトキシンB1、B2、G1、G2とパツリンを検査しました。アフラトキシン類、パツリンとも、いずれの検体からも検出されませんでした。
*4: 動物用医薬品については、別表3参照
*5: ふぐ毒については、規制値である10MU/gを超える検体はありませんでした。
*6: 二枚貝について麻痺性貝毒及び下痢性貝毒試験を実施した。その結果、麻痺性貝毒の規制値である4MU/g及び下痢性貝毒の規制値である0.05MU/gを超える検体はありませんでした。
*7: 神奈川県内で市販されている加工食品40検体について、特定原材料(卵・乳)の定量・定性検査を行ったところ、いずれも不検出でした。(アレルギー食品の項、参照)
*8: 平成22年度は、安全性未承認組換え遺伝子の定性試験として、コメ加工品はBtコメ、トウモロコシ穀粒はBt10、トウモロコシ穀粒及びトウモロコシ加工品はCBH351の検査を実施した。その結果、いずれも組換え遺伝子は不検出であった。
また、安全性審査済み遺伝子の定量試験として、トウモロコシ穀粒は35S及びGA21の検査、大豆穀粒12検体及び大豆加工品はRRSの検査を実施した。その結果、いずれも組換え遺伝子は不検出であった。(遺伝子組換え食品の項、参照)

理化学部では、輸入食品の指定添加物(日本で許可されている添加物)及び指定外添加物(日本で許可されていない添加物)を実施しています。

(別表1) 食品添加物検査(理化学部) 輸入食品

(別表2) 放射能検査(理化学部)

○ 平成23年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故以前の検査結果

平成22年度は、輸入食品5試料について調査を行いました。野菜果実類及びその加工品2試料から、137Csが97Bq/kg、および0.64Bq/kg、検出された。しかし輸入食品に対する放射能暫定限度に比較しても低い値でした。他の3試料は、(<LOD)で、全5試料とも暫定限度以下でした。
※ LOD:定量限界(0.1Bq/kg)

1973年度より、県内産もしくは流通食品中の放射能濃度調査を実施しています。平成22年度は3試料について、134Cs、137Csの濃度調査を行いました。134Csは全て不検出でした。137Csは脱脂粉乳から、0.12Bq/kg、シイタケから2.3Bq/kgが検出されました。シイタケは前年度の1/2の濃度でしたが、経年的には変動の範囲内でした。
2008年9月に原子力空母が米軍横須賀港に配備されたため、前年度に引き続き、三浦市、葉山町で生産された野菜類(ダイコン、ホウレンソウ)計4試料の放射能調査を実施しました。野菜類は4試料とも全て(<LOD) であり、原子力艦による放射能の影響は認められませんでした。

1992年度より放射性廃棄物の海洋投棄の影響調査を実施しています。日本海側で水揚げされた魚介類と、原子力艦が入出港する東京湾産について134Cs、137Csおよび核廃棄物の汚染指標(ルテニウム-106、コバルト-60)を調査しました。8試料中の137Cs濃度は<LOD~ 0.21Bq/kg・生であり、濃度レベルは漸減傾向にありました。その他の核種はいずれも(<LOD) であり、海洋投棄の影響はみとめられませんでした。 
※ LOD:定量限界(0.1Bq/kg)

○ 平成23年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故以後の検査結果

平成23年3月11日に起きた東日本大震災に伴い、福島第一原子力発電所の原子炉事故が発生しました。3月15日早朝から、神奈川県においても放射線量が急激に上昇し、人工放射性核種が環境試料から検出されるようになりました。食品の汚染が懸念されたことから、3月21日より、ホウレンソウ2検体、生乳4検体、豚肉1検体の放射能調査を実施しました。ホウレンソウは131Iが670-1700Bq/kg (暫定規制値:2000 Bq/kg)、137Csが83-120 Bq/kg、134Csが69-110 Bq/kg(放射性セシウム暫定規制値:500 Bq/kg)検出されました。生乳は131Iが1.1-11Bq/kg(暫定規制値:300 Bq/kg、乳幼児は100Bq/kg)、137Cs、134Csは不検出(放射性セシウム暫定規制値:200 Bq/kg)でした。豚肉は3核種共不検出であった。いずれの試料も厚生労働省が定めた暫定規制値を下回りました。  
※ LOD:定量限界 

ホウレンソウ-30 Bq/kg(131I)、20 Bq/kg(134Cs、137Cs)
牛乳(生乳)- 1 Bq/kg(134Cs、137Cs、131I)
食肉-20 Bq/kg(134Cs、137Cs)

※ 国産食品に対する暫定規制値(平成23年3月17日食安発0317第3号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)

野菜-放射性ヨウ素(2,000Bq/kg以下)、放射性セシウム(500 Bq/kg以下)
牛乳(生乳)-放射性ヨウ素(300Bq/kg以下)、放射性セシウム(200 Bq/kg以下)
食肉-放射性セシウム(500 Bq/kg以下)

○ 動物用医薬品検査

動物用医薬品検査とは、疾病予防等のために使用される医薬品(抗生物質、合成抗菌剤、寄生虫用剤、ホルモン剤)を対象に、残留検査を実施しています。

動物用医薬品について、輸入及び国産の食肉、魚介類及びその加工品について一斉分析法に加え、告示法による検査を実施しております。検査検体68件、648項目の検査を行いました。

◆ 動物用医薬品の検査については、地域調査部と理化学部で対応しています。

平成22年度には、地域調査部及び理化学部で、動物用医薬品の検査検体134件、1055項目の検査を実施しました。