[2011.2.22掲載]
平成20年度 食品理化学検査
(1) 地域調査部
地域調査部では、食品衛生法で規格基準が定められている食品を基本的には検査しています。
平成20年度には、検査検体1,490件、11,571項目の検査を実施しました。検査内容は以下の表のとおりです。
平成20年度 食品理化学検査(地域調査部)
*1: | 添加物検査については別表1参照 |
*2: | 重金属等検査は、ヒ素、鉛、スズ、カドミウム、シアン、PCB、総水銀について行いました。基準値を超えたものはありませんでした。 |
*3: | 動物用医薬品検査については、別表2参照 |
*4: | 器具容器試験は、材質試験で鉛、カドミウムについて、溶出試験で過マンガン酸消費量、蒸発残留物、重金属について行いました。 基準値を超えたものはありませんでした。 |
*5: | 残留農薬検査については、別表3参照 なお、農産物の冷凍品については、冷凍食品に計上されています。 |
*6: | 体重、体長等を行いました。 |
食品添加物には、指定添加物(日本で許可されている添加物)と指定外添加物(日本で許可されていない添加物)があります。地域調査部では、輸入食品と国産食品の指定添加物について検査しています(着色料については指定外添加物も検査しています)。
添加物検査では、使用して良い添加物の基準値を超えたものはありませんでした。しかし、輸入食品において、穀類加工品(ビーフン)で漂白剤(二酸化硫黄)が検出され、漂白剤を使用しているのにもかかわらず表示していない事例がありました(表示違反)。また、表示はありませんが、菓子(チョコレート等)から安息香酸(保存料)が検出されましたがキャリーオーバー※1と考えられます。
また、国産品において、表示はありませんが、天然由来と考えられる安息香酸が、野菜果物加工品、穀類加工品、魚介類加工品から検出されました。
※1キャリーオーバー; | 原則として、食品の原材料に使用された添加物についても表示する必要があります。 ただし、食品の原材料の製造又は加工の過程で使用され、その食品の製造過程では使用されないもので、最終食品に効果を発揮することができる量より明らかに少ない場合は、表示が免除されます。 |
動物用医薬品検査とは、疾病予防等のために使用される医薬品(抗生物質、合成抗菌剤、寄生虫用剤、ホルモン剤等)を対象に、残留検査を実施しています。
地域調査部では、動物用医薬品について、残留基準が定められている輸入の食肉及び魚介類、また、国産の卵、魚介類、牛乳及び加工乳について検査検体71件、抗生物質、合成抗菌剤、寄生虫用剤、ホルモン剤の423項目の検査を行いました。動物用医薬品が検出された検体はありませんでした。
○ 動物用医薬品の検査については、地域調査部と理化学部で実施しています。
平成20年度には、地域調査部では71検体、理化学部では62検体、合わせて動物用医薬品の検査検体133件、抗生物質、合成抗菌剤、寄生虫用剤、ホルモン剤の1,038項目の検査を実施しました。
(参考)動物用医薬品(理化学部)
衛生研究所では、ポジティブリスト制度導入に伴い、神奈川県が実施する残留農薬及び動物用医薬品の検査に用いる検査実施標準作業書(SOP)の作成を目的に、理化学部において一斉分析法の真度試験及び精度試験を実施し、試験法の検討を行っています。地域調査部には、試験法・SOPを還元し、検査の実施に役立てております。
残留農薬については、ポジティブリスト制度に基づき、別表3に示すとおり輸入及び国産の農産物、輸入の食肉及び魚介類、国産の牛乳・加工乳について、また苦情品も含めて、検査検体165件、殺虫剤、殺菌剤、除草剤等7,134項目の検査を行いました。以下の表に示すとおり、農産物から農薬が検出されましたが、基準値を超えるものはありませんでした。
(2)理化学部
理化学部では、食品衛生法の規格基準に基づく検査、また検査法の整備のための調査や今後に向けて必要性のある調査を実施しています。なお、理化学部では、専門分野で実施することが効率的な検査等(放射能、カビ毒、ふぐ毒、貝毒、遺伝子組換食品、特定原材料等)について実施しております。
平成20年度には、輸入食品及び県内産・県流通食品等について、検査検体400件、1,902項目の検査を実施しました。
検査内容は以下の表のとおりです。
平成20年度 食品理化学検査(理化学部)
※メラミンの検査
中国での乳製品へのメラミン混入事件により、中国産の乳製品を原材料とする加工食品へのメラミン汚染が拡がりました。そこで、県内に流通する中国産の乳製品を原材料とする加工食品について、メラミンの検査を実施しました。
菓子類2検体、惣菜等8検体について実施したところ、メラミンはいずれの検体からも検出されませんでした。
*1: | 添加物検査については別表1参照 |
*2: | 放射能検査については、別表2参照 |
*3: | カビ毒については、県内で流通している輸入食品のカビ毒汚染を調査した。香辛料13検体、ナッツ類15検体、穀類3検体、乾燥果実3検体についてアフラトキシンB1、B2、G1、G2とパツリンを検査しました。 リンゴ果汁6検体については、パツリンの検査を実施しました。 アフラトキシン類、パツリンとも、いずれの検体からも検出されませんでした。 |
*4: | 動物用医薬品については、別表3参照 |
*5: | 県内で市販されているふぐ加工製品6検体についてふぐ毒検査を実施しました。規制10MU/gを超える検体はありませんでした。 |
*6: | 二枚貝15検体について麻痺性貝毒及び下痢性貝毒試験を実施しました。その結果、麻痺性貝毒の規制値である4MU/g及び下痢性貝毒の規制値である0.05MU/gを超える検体はありませんでした。 |
*7: | 神奈川県内で市販されている加工食品40検体について、特定原材料(卵・乳)の定量・定性検査を行ったところ、乳の混入については確認されませんでした。卵の混入が2検体について確認されました。(アレルギー食品の項、参照) |
*8: | 平成20年度は、安全性未承認組換え遺伝子の定性試験として、パパイヤについて55-1、コメ加工品についてBtコメ、トウモロコシ穀粒トウモロコシ青果Bt10,トウモロコシ穀粒,トウモロコシ青果及びトウモロコシ加工品CBH351の検査を実施しました。 その結果、いずれも組換え遺伝子は不検出でした。 また、安全性審査済み遺伝子の定量試験として、トウモロコシ穀粒及びトウモロコシ青果について35S及びGA21の検査、大豆穀粒及び大豆加工品についてRRSの検査を実施しました。その結果、豆乳については、大豆内在性遺伝子Le1のコピー数が、当所で下限の目安としている10000コピーに満たなかったことから検知(定量)不能となりました。その他の検体については、いずれも組換え遺伝子は不検出でした。(遺伝子組換え食品の項、参照) |
*9: | 神奈川県では食品添加物の品質確保を目的に、神奈川県内の食品添加物製造業による製品について、特定業種として監視点検を行っています。平成20年度は13検体132項目について検査を実施しました。添加物13検体はすべて規格基準に適合しました。 |
○ 理化学部では、輸入食品の指定添加物(日本で許可されている添加物)及び指定外添加物(日本で許可されていない添加物)を実施しています。
輸入食品の指定外添加物の検査を60検体、315項目について実施した結果は以下のとおりです。
- 着色料(酸性タール色素5種類):アゾルビン、キノリンイエロー、パテントブルー、オレンジⅡ、グリーンSについて実施した結果、すべて不検出でした。
- 着色料(スーダン等5種類):スーダンⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、パラレッドについて実施した結果、すべて不検出でした。
- 保存料、甘味料、酸化防止剤、乳化剤(ポリソルベート40、85)について実施した結果、すべて不検出でした。
輸入食品の指定添加物の検査を44検体、424項目について実施した結果は以下のとおりです。
- 酸性タール色素12種類、ポリソルベート4種類(20,60,65,80)を検査した結果、菓子等9検体から色素が検出されましたが、表示どおりでした。
- ※ポリソルベートは6種類ありますが、そのうち4種類は指定添加物であり、他2種類は指定外添加物となっています。
平成20年度は、輸入食品5試料について調査を行った。果実加工品1試料から137Csが14Bq/kg検出された。平成19年度検出された3試料の平均値の約36倍であった。前年度の試料と産地が異なる他の4試料は、(<LOD)で、全5試料とも暫定限度以下であった。
※ LOD:定量限界(0.1Bq/kg)
昭和48年度より、県内産もしくは流通食品中の放射能濃度調査を実施している。平成20年度は3試料について、134Cs、137Csの濃度調査を行った。134Csは全て不検出であった。137Csは脱脂粉乳から、0.99 Bq/kg、生シイタケから3.2Bq/kg検出された。粉乳、シイタケとも前年度より高い濃度であったが、変動の範囲内である。
平成20年9月に原子力空母が米軍横須賀港に配備されたため、前年度に引き続き、事後調査として三浦市、葉山町で生産された野菜類(ダイコン、ホウレンソウ)計4試料の放射能調査を実施した。野菜類は4試料とも全て(<LOD) であり、原子力艦による放射能の影響は認められなかった。
平成4年度より放射性廃棄物の海洋投棄の影響調査を実施している。日本海側で水揚げされた魚介類と、原子力艦が入出港する東京湾産について134Cs、137Csおよび核廃棄物の汚染指標(ルテニウム-106、コバルト-60) を調査しました。8試料中の137Cs濃度は<LOD~ 0.48 Bq/kgであり、その他の核種はいずれも(<LOD)であり、海洋投棄の影響は認められなかった。 日本海水揚げの試料には、体長の大きい魚種が含まれていたため、前年度に比べ137Cs濃度が高い傾向にあった。
※ LOD:定量限界(0.1Bq/kg)