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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.232

水道水質基準等の改正について
~2026年4月、PFOS及びPFOAを追加した基準が施行されます~

2026年1月発行

皆様は、PFOSやPFOAという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これらは、2025年6月に改正された水道水質基準(2026年4月施行予定)に追加された物質となります。また、両物質は、ミネラルウォーター類の規格基準にも追加されています。
神奈川県衛生研究所では、県民の皆様に水道水やミネラルウォーターを安全に飲用いただくため、飲料水に関連する調査・研究を行っています。本稿では、PFOS及びPFOAについて、概要から当所の取組まで紹介いたします。

PFAS、PFOS及びPFOAとは

PFOS[正式名称:ペルフルオロ(オクタン―1―スルホン酸)]及びPFOA[正式名称:ペルフルオロオクタン酸]はPFAS[正式名称:ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物]の一種です。PFASとは「少なくとも1つのメチル基又はメチレン基を構成する炭素原子(C)が完全にフッ素(F)化されている有機化合物群」を指します1)。諸説ありますが、1万種類以上の物質があるとされています2)。PFASは熱・化学的安定性及び界面活性作用等を示すことから、1950年代以降、撥水撥油剤、界面活性剤及び消火剤等の幅広い用途で使用されてきました3)
PFOS及びPFOAはPFASの一種であり、化学構造式は図1のとおりです。末端にスルホン基を有するとPFOS、カルボキシ基を有するとPFOAとなります。


図1:PFOS及びPFOAの化学構造式

PFOS及びPFOAは難分解性、高蓄積性及び長距離移動性という特性がある残留性有機汚染物質の一種です。残留性有機汚染物質の取扱いについては、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)で国際的に定められており、PFOS及びPFOAの製造・使用、輸出入は原則禁止となります。また、国内においても「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」に基づき、製造・使用、輸出入が原則禁止されています4)

水道水質基準とは

水道は1957年に制定された水道法により衛生管理されています。水道水は水質基準に適合するものでなければならず、水道法により水道事業者等に水質検査が義務づけられています。水道水質基準の体系には、水質基準の他に、基準を補う項目として水質管理目標設定項目及び要検討項目が付け加えられています(図2)。基準の見直しは最新の知見により常に行われており、項目の追加、削除及び基準等の改正がほぼ毎年行われています5)


図2:水道水質基準及びそれを補う項目(2026年4月施行)

PFOS・PFOAの水質基準化

PFOS及びPFOAは、2020年に水質管理目標設定項目として暫定目標値50 ng/L以下(合計値)が設定されましたが、2025年6月の改正でこの値が基準として設定され、水質基準に引き上げとなりました。2026年4月より本基準が施行されます6)。よって、水道事業者及び水道用水供給事業者にはPFOS及びPFOAの測定が義務付けられ、水質基準を超えた場合は原因究明を行い、基準を満たすため必要な対策を講じることが求められます。
また、2025年6月の改正では要検討PFASとして、これまでのPFHxSに加えて、PFBS、PFBA、PFPeA、PFHxA、PFHpA、PFNA及びHFPO―DA(別名:GenX)の7物質(図3)が要検討項目に追加されました7)


図3:要検討PFASである8物質の化学構造式(正式名称)

ミネラルウォーター類におけるPFAS類の規格について

ミネラルウォーター類は、食品衛生法において安全な品質を確保するため、規格基準が定められています。本規格は水道水質基準と整合性が取れるよう設定されています。水道水質基準改正に併せて、2025年6月にミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行うものについて、成分規格にPFOS及びPFOAの基準が追加されました。規格基準値は水道水質基準と同様に合計値として50ng/L以下と設定されています8)

衛生研究所の取組

当所では2008年頃からPFAS関連の研究を開始し9)、2021年には神奈川県下、多くの地域の主要水源である相模川及びその流域河川について、PFASの汚染実態を調査しました10)。その結果、検出されたPFOS及びPFOAの合計値は最大で11ng/Lであり、暫定目標値(50ng/L)よりも十分に低いことが明らかとなりました。要検討PFASのPFHxSについては、最大で4.1ng/Lであり、米国環境保護庁が示した健康影響がないとされる濃度(9.0ng/L)11)を下回っていました。また、国立医薬品食品衛生研究所主導の全国の水質検査機関16機関によるPFOS及びPFOA検査法のバリデーション試験に参加し、標準検査法の整備に協力しました12)
今後も飲料水に関連する調査・研究を継続して、県民の皆様に水道水やミネラルウォーターを安全に飲用いただく礎となるよう努めて参ります。

参考文献

注:リンクは掲載当時のものです。リンクが切れた場合はリンク名のみ記載しています。

1) Reconciling Terminology of the Universe of Per- and Polyfluoroalkyl Substances: Recommendations and Practical Guidance(OECD)外部サイトのPDFが別ウインドウで開きます
2) PFAS pollution in European waters(European Environment Agency)外部サイトを別ウィンドウで開きます
3) Historical and current usage of per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS): A literature review:Am. J. Ind. Med., 66(5), p. 353–378., 2023.
4) PFASハンドブック(環境省)
5) 水質基準逐次改正検討会(環境省)外部サイトを別ウィンドウで開きます
6) 水質基準に関する省令の一部を改正する省令(環境省)
7) 水質基準に関する省令改正の概要について(環境省)
8) ミネラルウォーター類におけるPFAS(PFOS及びPFOA)の成分規格の設定に関する食品、添加物等の規格基準の一部改正について(消費者庁)
9) 相模川水系河川水中の有機フッ素化合物(PFOS,PFOA)の分析:神奈川県衛生研究所研究報告, No.39, pp. 14-17, 2009.
10) 相模川水系河川における有機フッ素化合物の存在実態調査:神奈川県衛生研究所研究報告, No.53, pp. 29-33, 2023.
11) 米国EPAのニュースリリース(2023年3月14日)について(厚生労働省)
12) Development and Validation of an Analytical Method for Simultaneous Determination of Perfluoroalkyl Acids in Drinking Water by Liquid Chromatography/Tandem Mass Spectrometry:J. Water Environ. Technol., 20(6), pp. 219-237, 2022.

(理化学部・内田悠)

   
衛研ニュース No.232 令和8年1月発行
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