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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.200

遺伝子組換え食品と検査状況

2020年9月発行

2001年に遺伝子組換え食品の表示制度が施行されてから20年近くが経過し、この間に、遺伝子組換え作物(Genetically Modified Organism、以下、GMO)の世界の作付面積は大幅に増加しました。神奈川県では、消費者の食品を選択する権利を守るために、県内で流通している食品について、遺伝子組換え表示が正しく行われているか、安全性が未審査の遺伝子組換え食品が流通していないか、を確認しています。今回は、遺伝子組換え表示制度を説明し、現在、衛生研究所で実施している遺伝子組換え食品検査を紹介します。

GMOの安全性審査と遺伝子組換え表示制度

日本の表示制度では、内閣府による安全性の審査を経て流通が認められた8農産物(大豆、とうもろこし、ばれいしょ、なたね、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ)及び33加工食品群(豆腐・油揚げ類、納豆、豆乳類、みそ、コーンスナック菓子、コーンスターチ、ポップコーン、ポテトスナック菓子、乾燥及び冷凍ばれいしょ等)について、表示義務の対象としています。
大豆及びとうもろこしについては、IPハンドリングをしていても、GMOの一定の「意図せざる混入」は避けられないと考えられることから、混入率の許容範囲が定められています。GMOが5%を超えて食品に混入している場合には、「遺伝子組換え」等と表示しなければなりません。また、IPハンドリングをせず、GMOが5%を超えて混入している可能性がある場合には、「遺伝子組換え不分別」等と表示しなければなりません。IPハンドリングをして、GMOの「意図せざる混入」を5%以下に抑えている場合には、「遺伝子組換えでない」等と表示することができます。

IPハンドリング(分別生産流通管理):GMOと非-GMOを生産、流通、加工の各段階で混入が起こらないよう分別管理し、そのことが書類により証明されていることをいいます。

しかし、この「意図せざる混入」の混入率については、GMOが最大5%混入しているにもかかわらず、「遺伝子組換えでない」と表示できるため、消費者の誤解を招くのではないかとの意見が、消費者庁の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」においてありました。そのため、新たな動きとして、「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件を、現行制度の「5%以下」から引き下げることが適当であると考えられました。そして、2023年4月には、消費者庁から改正された食品表示基準が施行され、GMOの混入が認められない場合に限り、「遺伝子組換えでない」等の表示が認められるようになります。
なお、大豆及びとうもろこし以外の農産物については、「意図せざる混入」の混入率が定められていないため、「遺伝子組換えでない」等と表示する場合には、GMOの混入が認められないことが条件となります。
一方、IPハンドリングの実施の有無に関わらず、安全性の審査が終了していないGMOでは、製造・輸入・販売が禁止されており、食品への混入は認められていません。

現在、当所では、安全性が審査済みである大豆(RRS、LLS、RRS2)の混入について、含有率が5%以下であるかを調べるために定量試験を実施しています。また、安全性が未審査である、とうもろこし(CBH351)、コメ(63Bt、NNBt、CpTI)及びばれいしょ(F10、J3)の混入について、加工食品を対象に、含有の有無を調べるために定性試験を実施しています(表1)。

表1 現在、実施している遺伝子組換え食品検査

神奈川県における検査状況

当所で現在、実施している検査方法には、PCR法・電気泳動法(定性試験)とリアルタイムPCR法(定性及び定量試験)があります(図)。近年、技術の進歩や分析法の改良等により、PCR法・電気泳動法からリアルタイムPCR法への移行が進んでいます。


図 神奈川県衛生研究所での遺伝子組換え食品の検査手順

当所では、表示が義務付けられた2001年から検査を実施しており、現在まで違反事例はありません。過去5年間の検査結果では、大豆加工食品の定性試験において、組換え遺伝子が検出された検体(豆腐、厚揚げ)がありました(表2)。食品衛生監視員が、表示の確認や原材料の大豆に関するIPハンドリング等を調査したところ、表示違反となる検体はありませんでした。しかし、大豆加工食品である豆腐や厚揚げが微量のGMOを含有(意図せざる混入)していることが明らかになりました。

表2 遺伝子組換え食品の検査結果(2015年度~2019年度)

神奈川県衛生研究所での取り組み

当所では、新たな検査にも対応できるように、検査体制の整備を進めています。2019年度からは、2016年に定められた安全性が未審査のばれいしょ加工食品の検査を開始し、また、新たに定められた検査方法(サケ等)についても検討を行っています。今後も、適切な表示の確認と消費者の食品を選択する権利を守るために、引き続き検査を実施していきます。

(理化学部 垣田 雅史)

   
衛研ニュース No.200 令和2年9月発行
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