「抗菌薬」という病気の原因となる細菌に効果のある薬を飲んだことがある人も多いと思います。このような抗菌薬が効かなくなったり効きにくくなったりした細菌のことを「薬剤耐性菌」といいます。薬剤耐性菌に感染すると、治療の際に効果のある抗菌薬を見つけるのに時間が必要となり、さらに治療に使用できる抗菌薬が少ないといった問題があります。薬剤耐性菌は世界的に増加傾向にあり、日本だけでなく世界的に大きな問題となっています。今回は、細菌が薬に耐性を持つようになる仕組みや神奈川県衛生研究所で実施している薬剤耐性菌の検査、国内で行われている対策などについて御紹介します。 |
細菌の薬剤耐性の仕組み細菌が抗菌薬に対して耐性を示すには次のような仕組みがあります。 |
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神奈川県衛生研究所における薬剤耐性菌検査の一例
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写真①では、抗菌薬が浸潤した領域に細菌が増殖できずディスクの周りに発育阻止円が見られるので、抗菌薬に「感性(S)」と判定します。写真②では薬剤含有ディスクの周りも白く細菌が発育しています。そのため、この細菌はディスクに含まれる抗菌薬に「耐性(R)」と判定します。 |
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その結果(写真③)ディスクaの周りには細菌が発育し、ディスクに含まれる薬剤に耐性を示していますが、同じ薬剤を含有するディスクbの周りでは阻害剤(ディスクc)が置かれている側に細菌の発育阻止円が広がっているのが分かります。これは、阻害剤により細菌が産生する薬剤分解酵素の働きが阻害されたことを示します。 |
薬剤耐性(Antimicrobial Resistance :AMR)アクションプラン2015年の世界保健機関(WHO)の総会で、薬剤耐性に対するグローバル行動計画が採択されました。さらに、2016年に開催されたG7伊勢志摩サミットでも薬剤耐性菌への対応が議題に上がりました。 |
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表 薬剤耐性(AMR)アクションプランにおける各分野の目標 |
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薬の適正使用が大切!薬剤耐性菌を増やさないためには、抗菌薬などの薬を正しく使うことが重要です。病院で医師が必要以上に薬を処方しないことも大切ですが、また、薬を使う人が医師の指示通りに適切に薬を服用することも重要となります。「症状が治まったから、残りの薬を飲むのは止めよう」「前に処方された薬が残っているから、それを飲んでみよう」など自分で判断せずに、医師の指示どおり薬を使用するようにしましょう。また、市販薬についても説明書をよく読み、分からないことは医師や薬剤師などの専門家に相談し、薬を正しく使いましょう。適正な薬の使用が薬剤耐性菌の予防や拡大防止の対策に繋がります。 |
<参考リンク> |
(微生物部 政岡 智佳) |
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