自然毒とは、植物や動物がもともと保有している、または食物連鎖により体内に蓄積されるなどした有毒成分のことです。この自然毒を原因とする食中毒は、国内で毎年発生しており、過去10年では25名の方が亡くなっています。これら自然毒による食中毒はなぜ起きるのでしょうか。また、自然毒による食中毒にならないためには、どのようなことに注意すればよいでしょうか。 |
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自然毒を原因とする食中毒は、国内で毎年発生しています。表1に示すように、平成27年には全国で1202件の食中毒が発生しており、そのうちの96件が自然毒を原因とするものです。患者数は247名とさほど多くはありませんが、食中毒により死亡した6名のうち4名の原因が自然毒であり、致命率の高さからも、食品衛生上重要な問題となっています。 |
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食中毒の原因となる自然毒は、植物性自然毒と動物性自然毒に分類されます。平成27年には、植物性自然毒による食中毒は58件、動物性自然毒による食中毒は38件発生しています。 |
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植物性自然毒による食中毒の主な原因食品はきのこや高等植物注)です。表2に示すように、平成27年には、きのこではツキヨタケやクサウラベニタケ、テングタケによる食中毒が多く発生し、県内でも、イボテングタケというきのこによる食中毒が発生しました。高等植物ではスイセンやバイケイソウ類、イヌサフランなどが食中毒の主な原因食品となっています。 |
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表2に示した「原因食品に似ている食品」は、自然毒を含む植物と見た目がとてもよく似た、食べられる植物です。例えば、毒性のあるツキヨタケは食用のヒラタケやシイタケによく似ていますし、スイセンの葉はニラとよく似ています。これらのよく似た食べられる植物と自然毒を含む植物を間違えて採取し、毒のある植物だと気付かずに食べてしまうことが、植物性自然毒による食中毒の主な原因となっています。 |
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動物性自然毒による食中毒の主な原因食品は魚や貝です。表3に示すように、平成27年では、フグやアオブダイ、バラフエダイなどの魚、ホタテガイやエゾボラモドキ、キンシバイなどの貝が主な原因食品となっています。 |
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これらの魚介類には毒性成分が含まれていて、それが原因となり中毒症状を引き起こします。フグやキンシバイに含まれるテトロドトキシンは、筋肉を麻痺させる作用があるため、しびれや呼吸困難といった症状が起こります1)。アオブダイなどに含まれるパリトキシンは、激しい筋肉痛を引き起こし、呼吸困難、歩行困難、痙攣などの症状を呈します1)。平成27年には、フグ及びアオブダイによる食中毒でそれぞれ1名の方が亡くなっています。 |
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自然毒による食中毒の一番の原因は、食べられる植物や魚介類と間違えて、毒のあるものを食べてしまう「誤食」です。この誤食を避けるために、採取した植物や魚介類が食用であると確実に判断できない場合は、絶対に食べないでください。家庭菜園や畑などでは、野菜と観賞植物を一緒に栽培しないように注意しましょう。 |
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当所では、自然毒による食中毒の原因究明や再発防止のために、イボテン酸やムシモール、テトロドトキシンなど、一部の毒性成分について機器分析を実施しています。今後は、さらに多くの自然毒による食中毒に対応できるよう、調査研究を進めてまいります。 |
(理化学部 脇 ますみ) |
注:根・葉・茎に分化している植物。種子植物とシダ植物が含まれる。 |
(参考リンク) |
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