食中毒というと細菌やウイルスによるものが思い浮かびますが、化学物質が原因の食中毒も毎年発生しています。その一つがヒスタミンによる食中毒です。その症状は、顔が赤くなる、じんましんが出るなど、食物アレルギーの症状とよく似ていることから、アレルギー様食中毒とも呼ばれています。当所ではヒスタミンとヒスタミンの作用を増強する不揮発性アミン類の測定を実施し、ヒスタミンが疑われる食中毒等の原因究明にあたっています。
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ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンが多く蓄積した食品を食べた際に起こるアレルギー様の食中毒です。表1に示すように、ヒスタミン食中毒は毎年発生しており、主な原因食品はイワシやマグロなどの魚や、それらを調理加工した食品です。原因施設では飲食店や給食施設等が多く、平成25年には給食施設で患者数が100人以上のヒスタミン食中毒が発生しています。 |
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表1 国内のヒスタミンによる食中毒事例 ヒスタミン食中毒の症状は、顔面の紅潮や頭痛、じんましんや発熱、嘔吐など、食物アレルギーの症状とよく似ています。食物アレルギーは、アレルゲンとなるたんぱく質を摂取した際の免疫反応により起こりますが、ヒスタミン食中毒は、免疫反応とは関係なく、ヒスタミンを直接摂取することで発症します。ですから、体質などに関係なく、誰にでも起こる可能性があります(表2)。 表2 ヒスタミン食中毒と食物アレルギーの比較 また、ヒスタミンは熱によって分解されにくい性質を持っています。食品中に蓄積したヒスタミンは、調理をしても減ることはほとんどありません。そのため、表1に示した原因食品からもわかるように、生鮮品だけでなく、焼き物や煮物などの加熱調理された食品が原因で、多くのヒスタミン食中毒が発生しています。 |
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ヒスタミンは、マグロやイワシなどの赤身魚に多く含まれるアミノ酸であるヒスチジンから、微生物によって作られます。ヒスタミンは、不揮発性アミン類と呼ばれる物質の一種で、食品が腐敗する際に、微生物によるアミノ酸の脱炭酸反応によって生成され、食品中に蓄積されます。表3に示したカダベリン、チラミン、プトレシン、フェネチルアミン、トリプタミンも不揮発性アミン類の一種です。これら不揮発性アミン類のうち、ヒスタミンを多量に摂取した際にはアレルギーによく似た症状が、チラミン、フェネチルアミンでは血圧上昇や頭痛などの症状が起こる場合があります。 表3 不揮発性アミン類とその症状 |
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不揮発性アミン類の測定は、以前は動物組織を用いた生物学的判定法や薄層クロマトグラフ法で実施していましたが、これらの方法によって測定できるのは、不揮発性アミン類の総量でした。当所では、平成13年に、衛生試験法注解に示されている不揮発性腐敗アミンの試験法の改良を行い、プレカラム反応高速液体クロマトグラフ法を開発し、これにより不揮発性アミン類の分別を可能にしました。 表4 ヒスタミンが原因と疑われた事例 |
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ヒスタミンは一度できてしまうと、加熱などの調理によって減ることはありません。ヒスタミン食中毒を予防するためには、ヒスタミンを増やさないようにすることが重要です。そのためには、以下のことに注意しましょう。 また、食品中にヒスタミンが含まれていても、見た目の変化や腐敗臭はありません。鮮度が低下した恐れのある魚は食べないようにし、口に入れたときに唇や舌にピリピリと刺激を感じたら、食べるのをやめましょう。 (理化学部 脇ますみ) |
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