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②国の委託を受け行っている放射能調査
2002年、国の防災基本計画第10編原子力災害対策編に「原子力艦の原子力災害」が新たに追加されたことを踏まえ、文科省は、原子力艦に関わる平常時及び緊急時の放射能調査の考え方を示す目的から「原子力艦放射能調査指針大綱」および「原子力艦放射能調査実施要領」を2005年に改訂しました。これを受け、当所ではそれ以前から国より委託されている環境放射能水準調査に含め、原子力艦に関わる平常時における陸上試料の放射能調査を同年より開始しました。
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試料は、主に横須賀市と当所所在地の茅ヶ崎市にて採取しています。表2に示すように、大気浮遊じん、飲料水、ホウレンソウ、ダイコン、精米からはCs-137をはじめγ線を出す人工放射性核種は検出されていません。一方、土壌、一部の降下物、牛乳からCs-137が極微量検出されていますが、これは大半が1960~1980年代に実施された大気圏内核実験時に放出されたもので、原子力艦に由来する影響は現在まで認められていません。 |
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③神奈川県における空間放射線量の分布に関する研究 |
原子力災害は、その影響が広範囲に及ぶ可能性もあることから、県内全域の平常時の放射線量を予め把握しておく必要性があり、2006年から神奈川県における空間放射線量の分布に関する研究に着手しました。2006~2009年までの空間放射線量率の結果は、12~57nGy/h(宇宙線の寄与を除く)、平均値25±5.7nGy/h、中央値23nGy/hです。神奈川県は全国のレベル(2008年度12~102nGy/h、年間平均値55±20nGy/h、中央値56nGy/h)に比べると空間放射線量率が低い地域です。しかし、図3に示すように、県内でも地域による差は大きく、北東部が高く、西南部は低い傾向がこの調査で分かりました。 |
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県内には、原子力関連施設が川崎市と横須賀市にそれぞれ1つずつ存在しています。また、北朝鮮による地下核実験実施、さらに世界的に高まる電力需要と地球温暖化を背景にアジア周辺国による原子力発電所の建設、計画が進む昨今、環境への放射能汚染を懸念する声も聞かれます。これらの不安に、科学的に応えていけるよう、調査研究を今後も行っていきます。 |
(理化学部 桑原 千雅子) |
参考:文科省のホームページ「日本の環境放射能と放射線」(http://www.kankyo-hoshano.go.jp) |
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発行所
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神奈川県衛生研究所(企画情報部) |
〒253-0087 茅ヶ崎市下町屋1-3-1 |
電話(0467)83-4400 FAX(0467)83-4457 |
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